表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

第18話 魔化人と街を救え!

 「しまった……逃げられたか」


赤いドラゴンファイターが黒い煙を振り払ったとき、そこに違法闘技場に参加していた貴族たちの姿と、彼らが雇った傭兵たちの姿はなかった。まんまと逃げられたらしい。

まあ、そこは大丈夫だろう。街を警備する兵士たちに目立つように花火を打ち上げていたから、すぐに追いつくはずだ。そこで一網打尽にしてもらおう。

 

 それよりも、問題はこの場にいる大量の魔化人たちだ。

 

 「みんな、この違法闘技場の犠牲者というわけか……!」


 赤いドラゴンファイターは周囲を見回す。魔物薬を過剰摂取させられ、凶暴化したかつて人だった化け物――魔化人。そんな哀れな魔化人たちは爪を立て、牙をむき、人としての理性を失った真っ赤な目で赤いドラゴンファイターに襲い掛かろうとしている。


赤いドラゴンファイターは、右腕に出現させたドラゴンカッターを引っ込めた。


 赤いドラゴンファイターの目的は、彼ら魔化人を全員元の姿に戻すことだった。たとえ甘いと言われてもかまわない。誘拐され、魔化人にさせられた人々を、1人でも多く家族の元へ帰さなければならない。

 元に戻す方法はただ一つ。1人1人、ドラゴンファイターの特殊能力で魔化人たちの体を侵している魔物薬の毒素を吸い取ることだけ。今は広範囲に渡って能力の行使ができない。途方もない作業になることは容易に想像できた。

 だがそれでも、やらねばならない。


 「いくぞ……ドラゴンファイト!」


 赤いドラゴンファイターは襲い掛かってくる魔化人たちに挑む。攻撃を受け止め、魔化人の体に手を当てて、毒素を抜き取っていく。


 「グアアアアア……あ、あ、ああ……私は……」


 魔物薬の毒素を抜かれた魔化人たちは、徐々に理性を取り戻し、人の姿に戻っていく。


 「グアアアアア!」

 「しまった……!」


 その間にも、別の魔化人が赤いドラゴンファイターに襲い掛かる。赤いドラゴンファイターは鎧を切り裂かれ、血まみれになりながらも懸命に魔化人たちを次々と人間の姿に戻していく。


 「はあ、はあ……これが、最後の一人!」

 

最後の一人を人間に戻した時、何かが揺れるような、崩れるような音が響いた。

 地下闘技場は崩れようとしている。

 このままでは地下の魔化人にされた人たちだけでなく、地上の街も地盤沈下で大きな被害を被ってしまう。


 「まずい……チャージアンドブレイク!」


 最後の魔化人を人の姿に戻した赤いドラゴンファイターは、ドラゴンバックルの左レバーを引っ張る。そして天井に向かって両手を高く掲げた。


 「ドラゴンバリアー!」


 赤いドラゴンファイターの両手から発せられた巨大防御結界が、今まさに崩れ落ちようとしている地下闘技場全体の構造を支える。

 赤いドラゴンファイターはさらに力をこめる。ドラゴンバリアーは地下闘技場の構造の中に溶け込み、これを半永久的に支える魔法として固定された。


 「ふう……これで一件落着」

 

 赤い煙に包まれて変身を解き、赤いドラゴンファイターだった仮面をかぶった、ローブの謎の男は、地面に座り込んだ。


 「こっちだ! 地下闘技場を押さえろ! 生存者を救助するんだ!」


 謎の男が放った花火によって集まってきた兵士たちの声がする。もうすぐここにたどり着くだろう。


 「よし、こっちも撤退――」

 「ま、待ってください!」


 兵士たちが来る前に撤退しようとした謎の男だったが、その時魔化人だった男に引き留められた。


 「はい、どうかされましたか?」

 「助けてくださって、ありがとうございました! よろしければ名前をお聞かせくださいませんか?」

 「名前……ねえ……」


 謎の男はいたずらっぽく笑うと、こう名乗った。


 「ゴンベエ……ナナシノ・ゴンベエという者です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ