第11話 決闘の行方
「決闘だ、勇者! 王子、アンタが立会人をしてくれ」
獣戦士のカマスの言葉に、嫌々馬車から降りた聖騎士のレオナルド王子は再び大きなため息をつく。
「正気か、カマス? アリスとお前とではレベルが10以上違うんだぞ?」
「知ったことか! 俺は今まで、この獣戦士の高等職位で何人ものザコを蹴落としてきたんだ! 小娘の勇者ぐらいなんでもねえんだよ!」
レオナルド王子の言葉も、興奮状態のカマスには届かない。剣を抜き、アリスに向ける。
「しょうがないですね……怪我しても知りませんよ、カマスさん?」
一方の決闘を申し込まれたアリスは、カマスに冷たい視線を向けながら勇者の剣を抜き、勇者の盾を構える。
双方、決闘の準備が整う。レオナルド王子は立会人として、二人の間に立つ。
「アリス、手加減してやってくれ……では、はじめ!」
アリスとカマスの決闘の火ぶたが切って落とされた。
まず真っ先に、カマスが動く。
「おりゃあああああああ!」
耳をつんざくような大声を上げてカマスが突撃する。獣戦士の名にふさわしく、荒々しく、それでいて全く隙のない動き。
対するアリスは冷静に、勇者の盾を構えたまま防御の姿勢を保っている。
荒々しいカマスの剣がアリスに斬りかかる……と思った瞬間、アリスは勇者の盾でカマスを殴り飛ばした。アリスの小さな体からは考えられない、強力なパワーだ。
「うおおおおおっ!」
盾で殴られ、カマスは大きく後ろに吹き飛ばされる。
「てやあああああ!」
アリスの反撃。剣を構えてカマスに向かって突撃する。
「このっ!」
吹き飛ばされたカマスが再び立ち上がり、再びアリスに斬りかかる。
アリスはカマスに剣を振り下ろす……と見せかけて、カマスの背後に回り込んだ。
「えいっ!」
そしてカマスの後頭部に、すばやく、盾の縁を思い切り叩きつける。硬い勇者の盾で叩かれたら、いくらカマスでも無事では済まない。
「がっ……!」
カマスは気絶させられた。意識を失ってその場に崩れ落ちた。
「カマスさん……これはあなたが蹴落とした、ハヤトの、ドラゴンファイターの技です。といっても、もう聞こえていないでしょうけど」
アリスは一人、呟く。気絶したカマスにその言葉は届かない。自分を気絶させた技が、自分が死に追いやった者の技だということもわからない。
「勝負あったな……この決闘、アリスの勝利だ」
レオナルド王子が勝利宣言をして、ここに決闘は幕を閉じた。
――獣戦士のカマスには実力がなかった。獣戦士という高等職位を持ちながら、訓練を極端に嫌がった。
だから、競争相手を蹴落とした。不意打ち、密告、コネ……
獣戦士の高等職位を使って。
そして獣戦士の上にあぐらをかき続け、実力があると勘違いした。
結果として、短期間で実力をつけ続けてきたアリスに敗れてしまった。