繋がり
突然だがこんな事を経験したことはないだろうか?
いつも仲良くしている四人組がいた。
ある日突然一人の友達が抜けた。
すると残された三人は昨日までのことが嘘のように話さなってしまった。それどころか関わることすら無くなってしまった。
彼女たちを繋いでいたのは友情などといった大そうなものではなく、たった一人の人物だった。
-放課後の教室にて...
有栖に呼び出された俺はあることを聞かされた。それは金崎たちのグループについてのことだった。
現在、橋本と須藤は共に行動し金崎はぼっちになっている。
この原因が...いや、きっかけが山吹なんだそうだ。
その理由について話す前に、金崎たちの過去について少し話そうと思う。
金崎は地方出身の子である。どうやら地元では成績優秀で、人望もあり友達もたくさんいたそうだ。
そして彼女はたった一人で知らない地にやってきた。もちろん周りは彼女のことなんて知らない。
そんな時に出逢ったのが橋本と須藤の二人組だった。
橋本と須藤は同じ中学で幼稚園の頃からの幼馴染だそうだ。いつも二人で行動をしていたらしい。
彼女たちはお互いのこと以外はどうでもいいと思っているらしい。そんな性格に金崎は救われたのだろう。
金崎は須藤の席の隣だった。そのこともあって須藤と話す機会が自然と増え、仲を徐々に深めていく。
しかし、いくら仲が深まったとしても須藤の一番は橋本だ。何かする時いつも橋本と一緒だったらしい。仲は深まったものの、結果的には独りになってしまっていたらしい。
地元では常に慕われ、友達に恵まれ、独りではなかった金崎が初めて孤独を感じた瞬間だった。
そんな状況に危機感を感じた彼女は取り敢えず独りで行動しているクラスメイトに目を付けた。
それが有栖と山吹だった。
彼女は橋本、須藤に加え、有栖と山吹を自分の周りに置くことにした。
それでもやはり、金崎は独りだった。
橋本と須藤。有栖と山吹。
ある日、過去の話をする機会があったそうだ。その時に山吹の過去を知った金崎は弱みを握ったと確信した。
そして、彼女はこう考えた。
-山吹を利用すればいいと
それから彼女は山吹に対しての態度が急変した。最初、橋本と須藤は山吹を庇っていたが、だんだんとそれはなくなっていった。馴れてしまったのだろう。
ただ、一度も金崎と一緒に何かすることはなかったという。
金崎は私に従ってくれていると勘違いをしていた。
そして、例の騒動が起こった。
山吹と有栖が離れていき、自然と橋本と須藤との関わりは消えていった。その結果、金崎はまた独りとなってしまった。いや、既に初めから独りだったのだが...
以上のことが有栖から聞いた内容である。少し、俺の解釈も混ざっているが...
この話を言い終わると同時に有栖は何も言わずに帰ってしまった。結局、俺に何を伝えたくて、何をしてほしいのか分からなかった。
俺は謎のモヤモヤした気持ちを抱えたまま家に帰ることにした。四人には用事が出来たと伝えた。
家に帰ると珍しく妹がリビングで昼寝をしていた。起こさないように物音を立てず、忍び足で自室へ向かおうとしたとき、後ろから声を掛けられた。
「お兄ちゃん、帰っていたなら挨拶くらいしなよ。」
普段は色々とガサツなくせに、こいつはこういう所はうるさい。兄としては少し喜ばしいことなんだが。
「起こしたら悪いと思ってな。」
「別にいいよ。むしろ起こしてほしかった。取り敢えず、おかえり。」
「た、ただいま。」
何か今日のこいつ、様子がおかしいぞ。
「んでさ、お兄ちゃんに聞きたいことがあるんだけどさ。」
凄く嫌な予感しかしない。
「なんだ。」
取り敢えず聞いてみることにした。
「お兄ちゃんの学校で私と同じ予備校に通っている人いない?」
「...は?」
「だから、いないか、どうか聞いてるの。」
そんなこと聞くまででもないだろう。
最寄りの予備校。さらには有名大学などに多数の進学者出している所だぞ。いないどころか、いすぎるくらいだ。
「そりゃ、いるに決まっているだろ。」
「ふーん、そっか。」
ひーん、そっか、で久しぶりに交わされた兄妹の会話は終わりを告げた。
それにしても何だか様子がおかしかったな。俺、何かしただろうか。
さらに謎のモヤモヤが増した気がした瞬間だった。
自室に戻りベッドの上で先ほどの有栖の話を思い返していた。聞いたとき、そんなことだろうと納得することができた。別に驚くようなことではない金崎たちを見れば一目瞭然だった。
話の内容より気になったのは、何故、身内の話を俺にしたかということだった。
それについて考えてもこれといった納得できるような答えには至らなかった。暫く悩んでいると眠気に襲われた。よくよく考えたら、今日は昼寝をしていなかった。時計を見ると五時を少し過ぎた辺りだった。俺は少しの時間、昼寝をすることにした。
頭が小刻みに揺れる。
地震か何か?
俺はゆっくりと目を開ける。
すると、部屋は真っ暗だった。時計を見ると七時を過ぎていた。
「二時間か...」
携帯を見ると緑の光が点滅していた。何だろうと思い、携帯を開くと一件の不在着信があった。
先ほど頭が小刻みに揺れていたのはこれが原因だったようだ。
誰からか確認すると山吹からだった。
咳払いをして喉の調子を整えてから電話を掛けた。ワンコール目ですぐに出た。
「はい、もしもし?」
「もしもし、俺だ。」
「優斗くん。どうしたの?」
俺だ、ってまるで詐欺者みたいだなと我ながら思う。
それに優斗くんって答えてしまう山吹も危ない。
「電話くれてただろう?寝ていて気が付かなかった、悪い。」
「んーん、大丈夫だよ。それより今から会える?」
少し間があいて...
「...会って、話したいことがあるんだ。」
一瞬で重たい空気になったような気がした。
会って話さなければいけないこと...俺は覚悟することが出来ず、答えるのに時間がかかってしまった。
「ゆ、優斗くん?」
心配するように名前を呼んでくれる。
「わ、わかった。」
と苦し紛れに答えた。
寒くない格好に着替え、重い足取りで近くの公園に向かった。




