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MAKE A FRIEND  作者:  
友人
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家族っていいよな

さきほど思っていたことを母親に伝えた。

母親から返ってきた返答は母親らしい返答だった。

世間一般での母親らしい、ではなく俺の母親らしい、ということだ。

「いいじゃないの、それがあの子の選んだ道なんでしょ?」

「そう言うことじゃなくてな。理由が理由なんだよ。」

「理由なんて人それぞれさ。愛してる兄がいるから行きたい。素晴らしいじゃないの。いまのご時世ね、そんな妹なんて存在しないわよ。」

「それがダメだって言うんだろ?」

「なにがダメなのさ。一線を越えない限り妹が兄を愛したっていいじゃないの。」

俺の言葉を遮るかのように続ける。

「理由を理由に人の選択を否定するなんて酷な話よ。

それは結局、その子の未来を奪っていると同じことなのよ。優くんの言いたいことも理解できる。

だからこそ、あの子の気持ちを理解してあげて。」

一瞬だが、別人のように感じた。

俺の母親がこんなまともなことを口走るなんて。俺は驚きだよ。今日一番の驚きだよ。

俺は納得させられた。俺は俺の考えを押し付けているだけだった。

部屋へ戻ろうとする俺にこう言う。

「前の優くんに戻ったね。人に関心を抱き、人のことをよく考える。何が原因で変わってしまったのかは、どうでもいい。

でも、今の優くんに変わった原因だけは大切にしなさい。きっと、その子は優くんにとって、かけがえのない存在になり得るんだから。」

母親って凄いなと改めて実感した瞬間だった。何も隠し事できないや。

だって、全てお見通しなんだもん。

「なんでも知っているんだな。」

「なんでもは知らないわ。知っていることだけ。」

妙に聞いたことのある台詞だな、それ。

「ここだけの話。携帯、気を付けた方がいいわよ。内容、見えてるときあるからね~」

「俺の感動を返せやああああああ!!」

振り返って勢いよく叫んでやった。

その日の夜のこと。

部屋の扉をノックする音が聞こえた。

母親か?俺はとりあえず、はいよ、と答えた。

扉が開けられ入ってきたのは母...ではなく妹だった。

お風呂上りだろうか、髪が濡れ、首にはタオルがかかっていた。

そして仄かに顔があかくほてって赤く火照っていた。

「お前、ノックと言う文化を知っていたんだな。」

「当り前じゃん。」

「なら、いつもしろよ。」

「今は真面目な話だからしたの。それじゃないと示しがつかないでしょ?」

どうやら妹の文化では、真面目な話がない限りノックせずに他人の部屋に入るそうだ。

非常識だろ。

「それで何の用?」

なにかもじもじしている。

「あ、あの人って、そ、その、お、お兄ちゃんのか、かのじょなんの...?」

やめてくれ。その歯切れの悪い言い方。妙に色っぽいじゃないか。

しかも途中に、はぁって声が漏れるし。そんなのお前のキャラじゃねえだろ!

風呂上がりの姿という相乗効果が上乗せされて...その、無駄に意識しちまうだろ??

「ち、ちげえよ。」

声が高くなった。

「動揺しているってことは...」

「違います。」

動揺しているのは間違いない。だが、山吹は俺の彼女なんかではない。

「ふーん、じゃ、好きな人とか?」

「な、何言ってんだよ。」

こいつ勘が鋭くないか。

というか俺は今まで恋愛話と言うものに縁がなかったため馴れていない。

だから動揺してしまうのは仕方ない。

「はいはい、好きなのね。別に隠す必要ないじゃん。私、妹だよ?」

「言える訳ないだろ。」

妹が、少し考えたあと何かに気が付いたように言う。

「...もしかして、お兄ちゃん。私のこと...」

「なわけ、あるかああああ!」

こいつの言いたいことは察しが付く。

どうせ、「私のことが好きだから言いたくても言えないんでしょ?」とか言い出すに決まっている。

「んで、用はそれだけか?」

「うん。」

本当にそれだけかよ!そんなの明日の朝とかでもいいじゃないか。

なんでこんな夜遅くに聞く必要あるんだよ。

ってか、それもそれで少し淋しいわ。もう少し大きなイベントを期待しちゃうじゃんか。

その例えば...「お兄ちゃん、怖いから一緒に寝て。」とかさ。

すると、妹が部屋の隅に置いてある鞄を指さして聞いてくる。

「お兄ちゃん、あれなに?...エロ本とか?」

「エロ本は普段ベットの...じゃなくて、ちょっと週末に用があってな。」

口を押さえて信じられないと言った顔をする。

「お兄ちゃん、もしかして、お泊り会!?」

ま、間違ってはいないけどな。言い方が悪い。

「合宿だよ。」

「合宿??部活の??どこで??」

怒涛の質問攻めだな。

「そう。そう。友達の家で。」

また先ほどと同じ反応をする。

「やっぱり、お泊り会じゃん。お兄ちゃんなんて信用できない。これから出入りするのやめるね。」

人をケダモノみたいに言うな。

それにそれは願ったり叶ったりだ。むしろ、俺からお願いしたいくらいだ。

「その合宿、私も行く。」

なんてふざけたことを言い出した。

「聞いていたのか?あくまでも部活だ。部活動なんだ。

そもそもお前は部外者だろうが。」

「部活だけに?上手いね、お兄ちゃん。でも、私は未来の部員だよ??」

「寝言は寝てから言え。」

「とりあえず話を通しておいてね。」

「はいはい、眠いから出ていけ。」

これ以上、会話を続けると収集付かなくなると感じたので部屋から追い出す。

素直に妹が部屋から出ていこうとする。珍しいな。

何事もなかったかのように出ていった。

すると扉越しで妹が俺に向かってこう言った。

「お兄ちゃん、これだけは知っておいて。

お兄ちゃんが誰かのことを好きになったり、誰かに嫌われたとしても...

私は、ずっとお兄ちゃんの味方だから。

...私はお兄ちゃんが大好き。」

あいつはどんな表情で言っていたのかは分からない。

でも、一つだけ分かったことがあった。

「俺の妹は最高かよ。恐らく世界一の妹だ。」

そう俺の妹は最高で世界一の存在。

普段はふざけていても、いざという時に頼りになる母親。

普段から鬱陶しくても、最高で世界一可愛くて兄想いの妹。

やっぱり家族っていう存在は大きくて心強い味方なんだな。

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