表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソシャゲに転生しても俺はなんとかやっています  作者: 山崎ジャスティス
殷賑の祝祭防衛編
66/75

第2章40部:その作戦、即興につき

 ゴブリンのリーダーはトカゲに跨ったままじっと下の街を見降ろしていた。

 特に動くこともなく松明に照らされた醜悪な表情を一切変えず、ただじっと部下の働きぶりを観察している。


 先制攻撃を仕掛けることも出来なくなくはなかったが、周りの者より一回り大きな親衛隊のようなゴブリンがリーダーの警備を怠っていない。


 下手に動くとそのまま親衛隊と戦闘となり、場合によっては援軍が駆けつけてきて不利な状況になるのだろう。

 できるだけ有利な状況で戦闘を開始してスムーズにリーダーの戦意を喪失させるのが狙いなのだが、なかなかその状況を作り出せず俺達はじっと物陰に隠れていた。


「ああ、もう! どうするのよ。このままじゃ夜が明けちゃうわ」

「そうですよわ。このままですと街は混乱するまま、住人は不安を抱えたまま、そして被害はひどくなる一方ですわ」


 長い待機時間に業を煮やしたのかアガタとメリエルが急かしてくる。


「マサキ、私からも頼む。作戦を確実にするためというのは重々承知の上だが、この惨状を黙って見るままにはいけないんだ」


 ミネルヴァの方から俺の方に申し出たが、俺は頑なに横を首に振った。


「もちろん今すぐ挑むことも検討したが、それでは問題が発生する。すぐにリーダーを倒しあの大きなゴブリン達も倒せるなら、ば今すぐ立ち向かうが、おそらく真っ向から挑めば時間がかかってしまう。リーダーを倒してもその間に仲間のゴブリンが俺達を取り囲むような状況になれば絶望的だ。次もうまくいくとは限らないから犠牲は免れない」


 アガタが何か言いたげにこちらを見ているが俺は気にせず話を続ける。


「もちろん犠牲を出すなんてのはこちらとしてもごめんだ。それにこれで終わりじゃない。ジークの計画を止めなくちゃいけないんだろ。だったらなおさらあんな三下ごときに無駄な被害を受けたくない」

「確かにその通りですわ。でもどうするんですの。このままですと何一つ物事が進みませんわ」

「ああ、そうなんだ。あいつらが一瞬でも視線をそらして、防御を解くような出来事が起きればいいんだが」


 メリエルのいうことは尤もで、ここが一番の悩みどころであった。

 リーダーの注意を引いて、親衛隊の防御を解かせるような一挙両得のような事象が起きればと思っていたが、そのような状況は起きない。

 そんな中さっきから黙っていたゆーりが口を開く。


「うーん。きっとこちらから灯りをつけたりしたらこっちを見るとは思いますけど、それですとばったり鉢合わせになりますもんね」

「当り前でしょ。本当あんたってちんちくりんね。いきなり光が動いているってなったら、怪しくて誰でもそっちに行くに決まってるでしょ」


 アガタが小馬鹿にしたような言い方でゆーりに突っ込む。

 だが二人のその言葉に俺ははっとした。


(なんでこんな単純なことに気づかなかったんだ。あるじゃねえか。あいつらの注意を引いて奇襲を仕掛ける作戦が)


 俺は頭を抱えてほくそ笑んだ後、ゆーりの顔を見て耳元で囁きあることを尋ねる。

 ゆーりはその言葉を聞いて目を丸くしてカバンを開いた。




 決行の準備を完了しあとは開始を待つだけであった。


「あんた、あんな作戦でうまくいくの。それにどんだけ借りを作れば気が済むのよ。あたし知らないわよ」


 アガタがため息交じりに言う。


「ですが今はマサキを信じましょう。マサキの提案した方法が今は最良であるのは間違いありません」


 ゆーりは信じ切ったような目で俺を見ているが、そこまで期待を込められるとこっちも困惑してしまう。

 即興の作戦であり、うまくいかない可能性も十分あり得る。

 あくまで理想的に物事が進む子を前提としていたプランであるため、全てが上手くいくとは限らない。


 だが時間の制約や街の惨状や仲間の不満を考えると、今すぐに行動を移す必要があったのだ。

 

 そしてしばらくするとゴブリンのいる方向から声がした。

 リーダーが護衛している大きなゴブリンに指示をして、俺達とは反対方向に槍を指して移動させる。


「よし。今だ!」


 親衛隊がリーダーの元を離れた瞬間を狙い、俺達は一斉に物陰よりリーダーに攻撃を仕掛けた。

 リーダーはこちらに気づいて大きな声を上げるが、思いのほか乗っているトカゲの動きがすばしっこくミネルヴァの攻撃を交わす。


「くっ! 浅かったか!」

「いいえ、ミネルヴァ。こちらで援護いたしますわ」


 メリエルがすぐさまエーデルハルモニーを振りかざし、杖の先から光の輪をリーダーに向かって放つ。

 トカゲの方も大きく飛びのいていたためすぐに回避に移せず、光の輪によって拘束された。


「マサキ、今です!」

「少しだけ寝ていてもらう! 無限乃無型!(ファンタズマゴリア)」


 俺は動けなくなったリーダーに対して無数の剣撃と打撃を加える。

 思いのほかリーダーの体は頑丈であり血が噴き出るようなことはなく、無数の切り傷とともにリーダーはか細い声を上げた後気絶した。


 こちらとしても命を取るまでのことをするつもりはなかったので、かえって好都合である。

 しかし親衛隊がリーダーの安否を確かめるべく駆け寄ってくる。


「こっちは取り込み中なの。さっさと出ていって。マインファイア!」


 親衛隊がアガタに地面に設置された火炎の罠を踏み小さな爆発が起きるが、それに耐えてこちらに向かってくる。


「そんな! こいつらどんだけタフなのよ」

「何でもかんでもうまくいくとは思っていなかった。だが目的を果たすことできたんだ。あとこいつらを迎え撃つぞ!」


 驚いているアガタをしり目に、俺とミネルヴァが前線に立ち突進してくる親衛隊を食い止めようとする。


「アガタとメリエルは後方で援護。ゆーりは最後方で待機。キッドは……」

「今から戻るっつーの。俺様がすやすや二度寝したところを不快な頭痛で叩き起こしやがって……しかも囮作戦だって? こいつはあとでサービス料をたんまり請求させてもらうぜ」


 少し不機嫌そうにしながらキッドが親衛隊のいた方向から急いでこちらに飛んでくる。

 キッドには俺達と反対方向で行ってもらい、手に持っている銃を光らせてリーダーの注意を引いて、あとは逃げ帰るという任務を与えていたのだ。


「キッド、無事だったんですね。よかったです」

「本当ご主人様共は人使いが荒い。だがさすが俺様だぜ。このダークネスケルベロスの発光がこんな形にいきるとはな! 少しばかり危険だったが余裕だぜ」


 銃をさすりながらキッドが自画自賛している。

 危険な任務であったがすぐに趣旨を理解して難なくこなしてくれる辺り、なんだかんだ言って信頼できるのは間違いない。


 巨体のゴブリンが大きなこん棒を俺めがけて振り下ろすが、俺は難なく回避する。

 叩きつけられた跡は少し凹んでおりもし直撃することがあるならばただでは済まなかった。


「正面は危険だな。だが側面ががら空きだ」


 回避した先でゴブリンの脇腹を切り裂く、その痛みで怯んだ隙に勢いよく蹴り飛ばして倒す。


 他の仲間が俺に向かって同様にこん棒を振りかぶってきたが、ミネルヴァが盾を構えたまま突進して吹き飛ばした。


「邪魔だ! どいてもらうぞ」

「すまない。ミネルヴァ。恩に着る」


 さらにその拍子でもう一体のゴブリンも巻き込まれてうめき声を上げて下敷きにされる。


「みなさん大丈夫ですか!?」


 ゆーりが駆け寄ってきたその刹那、闇に乗じて足元より暗い影が飛び上がりゆーりを襲う。


「えっ……」

「くっ! 間に合わない!」


 俺が気付いて影の正体であるリーダーの乗っていたトカゲを払い落とそうとするが、それよりも先にトカゲがゆーりを噛みつかれてしまう。

 ゆーりの顔が恐怖に強張り叫び声を上げそうになったその時に、火球がぶつかって大きな爆発とともにトカゲが壁に叩きつけられた。


「安全確認してから飛び出しなさいよ。こんな暗がりだと何が潜んでいるかわかったものじゃないわ」

「ありがとう、アガタ。気を付けます」

「まぁ言っても聞かないと思ってるけどね」


 アガタが肩をすくめて何事もなかったように本を広げて構えていた。


「指揮官を倒したことでひとまずは平和になりましたわね」


 メリエルがほっと胸をなでおろして言うが、下から甲高い声と無数の足音が聞こえてくる。

 瞬く間に再び多数の下級のゴブリンに取り囲まれてしまう。

 おそらくリーダーの様子を見に来たのであろうが、俺達が無勢とわかると各々が武器を構えて威嚇してくる。


「時間をかけすぎたか……こいつはまずいな……」

「うーん。この数ならヒートストームで一掃できそうだけど、その時間を稼げる保証がないわね」


 アガタの言う通り、何か下手な動きをすればその瞬間に袋叩きにされそうであった。


「突っ込むにしても背後ががら空きになってしまうな。くっ、強引に切り抜けることもできないということか」


 ミネルヴァが辺りを見渡して悔しそうに呟く。


「マサキ、どうしますか……閃光玉のストックもありません。切り抜ける作戦は……」


 ゆーりがフードを被り不安そうに俺の顔を見るが、俺は微笑みを返す。


「大丈夫だ。こんな状況でも切り抜けることはできる」


 ゆーりを安心させようとして言ったものの、具体的にどうすればいいかは思いついていなかった。

 あいつらにリーダーの倒れた姿を見せると戦意を失うどころか、逆に激昂してしまう恐れがある。


 今はただあいつらが俺達に注目して均衡を保ってくれればいいのだが、不運なことにゴブリンの一体がリーダーが倒れている場所に近づいていった。


「ま、まずい!」


 ゴブリンが倒れた自分の指揮官の姿を見るや否や、悲しいとも怒りとも思える叫び声をあげ、他のゴブリンもそれに呼応するように甲高い声を上げた。

 深夜のベルーコの月に群雲がかかり松明の灯りのみが俺立ちとゴブリンを照らす。

 今まさに無数のゴブリン達が俺達に襲い掛かる瞬間であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ