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ソシャゲに転生しても俺はなんとかやっています  作者: 山崎ジャスティス
殷賑の祝祭防衛編
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第2章24部:強襲ーーエルダーグリフォン戦

 俺達がその場所で待ち構えていると怪鳥のいななきが聞こえてくる。


「やれやれ。悪いことにやってくるとは。これはやるしかないって感じだな」


 湿地の脇にある山の方から赤い影が飛び出してきた。

 燃えるような赤い影がこちらに向かって近づき、次第にその大きさが明らかになる。

 そして俺達に向かって猛烈な速度を伴い鉤爪を光らせて襲撃してきた。


「危ない! 伏せろ!」


 俺が呼びかけるとメリエルとアガタとゆーりはとっさにしゃがみ、巨体を生かした滑空をしながらの突進と強烈な突風から身を守った。


 エルダーグリフォンは突進を交わされてもすぐさま方向を向きなおし、もう一度猛烈な突進を繰り出す。

 その方向から察するにターゲットは俺に移っているようだ。

 真正面に捉えられているので、空凪の腕輪の回避性能を駆使して左右に交わしてもダメージは避けられない。

 しゃがんでもその鉤爪に捕まれ切り裂かれてしまうだろう。


 俺は剣を構えて受け流す準備をする。

 無理と分かっていても最小限に抑えるためにはやるしかないのだ。

 交わしてもダメージを受けるのは必至で、それが致命傷になる可能性もあり得る。


「ちょっとあんた何してんのよ!」

「この状況になると一か八かに賭けるしかないようなんだ。お前はそこで成功するよう祈ってくれ」


 アガタが伏せながら叫ぶ。


「これではまるであなたの方こそ命を投げ捨ててるみたいじゃないか。大丈夫だ。その祈りは届くさ。私が叶えてみせよう」


 ミネルヴァが俺の前に割り込み、ゴスアンシールドを構えて迎撃しようとする。


「ミネルヴァ! いくらお前でもあの突進を受けて無傷ではいられないはずだ」

「ふふっ。これでも今まで様々な攻撃を受けては防いできた経験がある。マサキよりは確率が高いはずさ。安心してくれ。あの程度なら私は死にはしないさ」


 ミネルヴァがエルダーグリフォンの突進を大きな盾で受け止める。

 後ずさりしながらも懸命に持ちこたえていた。

 エルダーグリフォンが勢いが弱まり再び上空に飛び立とうとする隙をミネルヴァは見逃さない。

 すぐさまその腹に剣を一刺しする。


 エルダーグリフォンは唸り声を上げ上空へは飛び去らずに、俺達と距離を取り耳をつんざくような大きな声を上げて威嚇した。

 腹からは傷口は浅いものの血が滴っている、口からは稲光のようなものが漏れている。


「こいつはまずい! エルダーグリフォンが怒っちまってる。こうなったら止まらねえ」


 御者が積荷を積んだ馬車から離れ、発煙玉に火をつけるともくもくと赤色の煙が立ち上り始める。

 するとエルダーグリフォンが人間以上のサイズのある翼を広げて、その煙に向かって大きく羽ばたかせた。

 俺達は身を屈め砂や小石を受けながら、猛烈な風に飛ばされないように必死で防いだ。


「くっ! なんて風なんだ」

「うわあああああああ!! 吹き飛ばされるぜ!」

「キッド、どこかにしがみついてでも持ちこたえてください!」


 その風は発煙玉の煙を吹き飛ばし、その火すらもかき消した。


「……迂闊だった。こいつは自分の不利になることを打ち消す方法を知っている。今まで見た個体より頭が切れるらしいな。発煙玉が使えないとなると救助は絶望的だ」


 ベテランの御者が悔しそうに言った。

 エルダーグリフォンは再び大きく高い音を上げ、こちらを威嚇ししてくる。

 まるでお前らの考えなどお見通しだ言わんばかりに。


「あんた達にしか頼めないが、頼む何とかこの状況を切り抜けてくれ」

「その言葉待っていたわ。絶望的な大ピンチほど燃えるわね。こういう時だからこそあたしの魔力もたぎってきているわ。あたしって今最高に目立っているでしょ!」

「やれやれ。お前の前向き思考には恐れ入る。まぁ、こんなことが起きるだろうってのは内心思っていたがな」

「こんな時にも楽しめるなんて呆れを通り越してしまいますわ。あなたの撒いた種ですけど、その面倒を見ることも貴族の務めですわ。庶民の責任をとれぬ貴族など、貴族の誇りに反していますわ」

「あなた達といるといつもこういうことになるな。だがこうやって苦楽を共にするということは楽しい。守り甲斐があるというものさ。このミネルヴァ、皆の道を拓き続ける盾となろう」


 エルダーグリフォンの先制攻撃を何とか凌ぎ、ここからが本格的な戦闘開始と言ったところだ。

 仲間の士気が直に感じられる。

 陣形を組み直しエルダーグリフォンに対峙する。


「またああやって突っ込まれると大変ですわ。動きを止めますわ」


 まずはメリエルが光の輪を生成しエルダーグリフォンを拘束しようとするが、上空に大きく飛び上がり難なく回避される。


「巨体に似合わずすばしっこいですわね」

「飛ぶことくらいわかっていたわ。いい的になってくれて助かるわ。食らいなさい!」


 アガタが空中に火球を放つ。エルダーグリフォンに直撃するかと思ったが、その大きな翼を広げ再び羽ばたかせた。

 火球は小さな爆発とともに消滅し、エルダーグリフォンは無傷のまま地上へと降り立った。


「そんな! あたしの魔導があんなあっさり」


 アガタの魔導が交わされるとなると厄介だ。

 近接である俺かミネルヴァのどちらかで動きを止めないと決定打を決めることができない。


 エルダーグリフォンがまたもや翼を羽ばたき俺達の動きを止める。


「畜生! 荷物が!!」


 後ろで御者の叫びがした。

 振り返ると突風に飛ばされないよう荷物を縛っていたようだが、強すぎる風に荷物である一つの木箱が遠くに吹き飛ばされたようだ。


「こっちは残りの荷物を括りつけて飛ばせないようにする。あとは少し離れたところへ移動させてもらう。あんた達の健闘を祈る。嬢ちゃん。この爆弾を渡す。何とかあんたのお仲間をサポートしてやってくれ」

「わかりました。何とかやってみます」


 御者が走り寄って最後方で待機しているゆーりに煙玉や閃光玉や音の出る爆弾を渡すと、すぐに馬車の方に戻りさらに遠くへ移動した。


 後方の馬車がなくなることは守ったり気遣う必要がなくなるため好条件だが、相手にとっても有利に働く。

 障害物がなくなるためさっきの突進にさらに勢いが増す可能性あるのだ。

 馬車ごと突進で破壊することも可能であるといえば可能なのだが、その衝撃で動きを止めた時に隙が生まれるとなるとできないのだ。


 エルダーグリフォンも同じことを思ったのか、すぐさま飛び上がり滑空して突撃する態勢をとる。

 俺達はミネルヴァの後方に動き狙いを絞らせて被害を最小限に抑えることを考えた。


 さっきと同じように勢いよく突進を仕掛けてきたので、ミネルヴァが盾を構えて受け止めようとする。

 カウンター越しに攻撃を加える算段だ。


「さぁ、何度でも来い。彼らには指一本触れさせないぞ」


 しかしエルダーグリフォンはミネルヴァのすぐ近くまで迫るとすぐに後方上空へ飛び上がり、勢いよく鉤爪を光らせて急降下してきた。

 俺としてもまさか同じ攻撃が通用しないほど学習能力が高いとは想定もしていない。


「まずい! ミネルヴァ!」

「くっ! 上か!! うわああああああ!!」


 ミネルヴァは何とか盾で防御したが、鉤爪がミネルヴァの盾を掴み体重を乗せたまま引き摺って行く。


「ちょっとあんた! ミネルヴァを離しなさいよ!」


 アガタが火球をエルダーグリフォンにぶつけ何とか攻撃を中断させる。

 しかし地面を擦られ続けたミネルヴァの大ダメージを受けてしまう。


「くっ! なかなかやる……だが次はこうはいかない」

「安静にしてくださいまし。すぐ回復させますわ」


 メリエルが足が遅いながらも駆け寄り、何とか立ち上がりボロボロのミネルヴァを癒そうとする。


「マサキ、ボケっとしてないであんたも戦いなさい! あんたしかあいつを止められるのはいないのよ!」

「ああ、そうだが、今俺が切りかかってもあいつに攻撃が届かないどころか返り討ちにあってしまう」

「だからってもう一度あの攻撃を受けろっていうの!? 今度こそ誰か死んじゃうわ!」


 アガタの言うことは確かにその通りだ。

 守勢になったら誰かが犠牲になってしまう。

 しかしこちらから攻撃を与えるとなるとアガタの範囲魔導だが、詠唱準備中に狙われると間違いなくアガタが戦闘不能になる。


「マサキ、ここは私に考えがあります」


 ゆーりが何かを思いついたように閃光玉を見せる。


「そうか! それであいつの目を眩ますということか」

「はい。起爆はキッドお願いします」

「ああ、任せてくれよ。この改造銃――ダークネスケルベロスの力を試す時だな。百発百中は伊達じゃねえ。緊急事態特別サポートサービスだ。報酬は弾んでくれよ」

「何でもいいわよ! あいつに魔導をぶちかませれば!」

「へっへっへ。その言葉忘れるなよ」


 計画を聞いた後俺は落ちた荷物の方を見た。

 確かあれは花火だ。

 目が眩んで動けないときに起動すればさらに驚くに違いない。

 その時に更なる攻撃のチャンスが生まれるというものだ。

 木箱を使用したことについては、戦闘中に落下したものが爆発したと言えば仕方ないと思うだろう。


「俺は目が眩んでいる間にあの花火を使う。あいつが突進してくるタイミングで閃光玉を破裂させてくれ!」

「任せてください。私だって少しくらいは皆さんのお役に立ちたいです!」


 俺は走り出し木箱の元まで急いだ。エルダーグリフォンが威嚇して再び飛び上がる。

 ミネルヴァがいなくなると心配することはないのだろう。

 しっかり上空に飛び上がった後、勢いをつけて滑空突進をしてきた。


「ゆーり! 今だ! あいつの狙いはメリエルだ」


 メリエルはミネルバを癒しているためその場を離れることができない。

 このままだと直撃だ。


「行きます! キッド! お願いします!!」

「この俺様に任せろ! 唸れ! 俺のダークネスケルベロス!」


 ゆーりがメリエルの後方に閃光玉を投げ、キッドが銃弾を詰め込んだ改造銃を構えた。

 そして閃光玉に銃弾を放ち命中する。


 すると猛烈な閃光が広がった。

 キッドのおもちゃの銃の光とは比べものにならない、直視するとしばらく目が見えなくなりそうな明るさである。


 閃光をもろに受けたエルダーグリフォンはメリエルの手前で落ち、苦しそうに呻きながらじたばたしている。 


「やりました! 大成功です」

「ま、俺様にかかればざっとこんなもんだな」


 飛び上がり喜ぶゆーりの脇でキッドが余裕と言った感じに鼻で笑う。


「さぁ今こそ攻撃を加えるチャンスってところだな」


 俺はそう言って運んできた木箱を動けなくなっているエルダーグリフォンの近くへ設置した。


「キッドもう一仕事頼む。あの木箱に銃弾を打ち込んでくれ。でっかい花火を上げてやろう」

「ああ、真昼間だがこの大地に宝石のような輝きを見せてやるぜ」


 木箱の中の花火を破裂させることでエルダーグリフォンはさらに驚き攻撃のチャンスが生まれるだろう。

 導火線に火をつけることはなく打ち上がることはないので、遠くから見えることもない。依頼主のジークやベルーコの国民からも見えることはない。

 俺達は耳を塞いでその木箱が爆発するのを待った。

 だがその木箱が破裂した時、爆炎が巻き起こり凄まじい衝撃が発生する。


 それは爆薬であり、決して花火などではなかった。


(どういうことだ。あれは花火だとジークは言っていたのに。こんな恐ろしいものを祭りに使うなんてありえない……)


「なんですの……この爆発は……」

「おいおいおいおいおい。なんだよこの爆発は! 聞いてねえぞ!」


 俺以外の仲間も呆気にとられた表情をしていた。

 だが原因は何なのかと今は悠長なことを考えている場合ではない。

 目の前の敵に集中することが先決だ。


「行くぞ! 俺とアガタで攻撃を仕掛ける! だが油断をするなよ」

「え、ええ! わかってるわ! しっかりあたしの魔導を味わわせてあげるわ」

「メリエルはミネルヴァの回復を引き続き頼む!」

「承知しましたわ。あいつに一泡吹かせてやるといいですわ」


 俺は煙の中に飛び込みエルダーグリフォンに攻撃を仕掛ける。

 エルダーグリフォンは自分の身に何が起こったのかわからないという風に無抵抗に縮こまっていた。

 翼で頭などを防御しているが、翼だけでも攻撃を行えれば十分だ。


 翼を的確に切り刻むと赤い羽根が舞い上がる。

 ある程度攻撃を加えるとエルダーグリフォンが、さっきの怯んだ様子から一転して立ち上がり怒り狂ったように叫んだ。

 耳を塞ぎたくなるような高音が湿地にこだまする。

 口からは稲光がさっきより漏れており、怒りに満ちて充血した目でこちらを睨んでいた。


「おいおいおい。大層お怒りだぜ。あいつ」

「だったら何かをされる前にやっつけないといけないですね。アガタ! 今こそとどめを!」

「当然よ! こいつにぶつけたくて仕方なかったのよ。疼いていたのよね。あたしの荒れ狂う魔力が!」


 アガタが風を纏い傷ついて動かず、ただ威嚇だけしているエルダーグリフォンに突っ込んでいく。

 そして両手を突き出し巨大な文様を浮かび上がらせた。

 しかしエルダーグリフォンの無防備な動きに俺は思い当たる節があった。


「待て! アガタ! そいつから離れろ!」

「あんた何言ってんのよ! 手柄を横取りしようなんてそうはいかないんだから」


 火炎がエルダーグリフォンを包み込んでいく。

 アガタから強烈なオーラが迸っていた。


「これで終わりにしてあげる。あたしの伝説となるがいいわ。真紅の火影姿を目に焼き付けなさい! 


 『クリムゾンバーニング』!」


 アガタが両手をかざし爆炎がエルダーグリフォンを焼き尽くそうとした瞬間、エルダーグリフォンが大きく口を開け大声をあげるとその体が急激に発光した。


「え? なんなのよこいつ」

「危ない! さっさと避けろ!」


 俺が慌てて駆け寄り呆然と立ちすくむアガタを付きとばした。


「ぐっ!」

「あ、あんた……」


 アガタは吹っ飛び、渾身の魔導は不発へと終わってしまう。

 エルダーグリフォンは体力が減るとカウンターの態勢をとるのだ。


 エルダーグリフォンの雷光が俺の背中を掠り、俺の体に痺れと焼けるような痛みを感じる。

 もし直撃すればまるこげになるのは避けられなかった。


「あんた何やってんのよ……また大けがするところだったじゃない!」

「だがお前がいなくなりよりましだ。それよりお前の手の方は大丈夫か」


 俺はアガタの手を見た。

 痺れで震えておりアガタはその手を見せないように急いで隠す。


「だ、大丈夫に決まっているわよ。でもあ、あんたは早くメリエルに手当てしてもらいなさい」

「ああ、終わったらゆっくりさせてもらう。だが俺はまだ戦える。さっさとあいつを倒そう。どうやらもうあと一歩ってところだしな」


 エルダーグリフォンの電気で逆立った体毛はひどく痛んでいた。

 その様子を見るに弱っているようだ。

 俺達はもう一度エルダーグリフォンの反撃を警戒し距離を取る。


「すまない。マサキ。あなたに時間を稼いでもらったようだな。私もまだまだだ」

「じゃじゃ馬の面倒ってのは大変だ。だけどお前がいれば一安心ってところだが」


 完全とは言えないが傷が癒えたミネルヴァが申し訳なさそうに謝った。

 俺は作り笑いであるが余裕であるかのように装い、剣を握りエルダーグリフォンに対峙する。


「ですがあの魔物を倒せる作戦がありまして? こっちも戦力は消耗していますわ」

「それもすべて織り込み済みだ。一撃で仕留めてやる。メリエルがあいつの動きを一瞬でも止めることができればな」

「え、ええ。家名にかえてやってみせますわ」


 メリエルは一瞬困惑したが、すぐに意を決したのか余裕のある表情に変わった。


「アガタは魔導を放てるか?」

「あたしを誰だと思ってるのよ。もう一度ぶっ放すことくらいできるわ」

「だがまだ手が震えているぞ。怖いんだったら正直に言った方がいい」


 アガタの焦りを含んだ強気な発言とは裏腹に、手はまだ麻痺して力がでていないようだ。


「……話を続けるぞ。ぶっ放す必要はない。また同じことをしても返り討ちに会うだけだ。いいか。タイミングに合わせて俺の体にしがみついて風の魔導を放ってくれ。それだけでいい」

「……まだあたしはやれるわ……」

「お前のその言葉信じるぞ」


 アガタは悔しそうに唇を震わせて呟いた。


「ミネルヴァはあいつの攻撃を一度だけ防ぐことに注力してくれ。命を張る必要はない」

「ああ、やり遂げて見せよう。一度だけでなく何度でも」

「いや、一回だけでいいんだ。そう無茶をする必要もない。病み上がりということもある。最小限に被害を抑えよう」


 俺は意気込むミネルヴァを気遣って無理のない指示をした。

 エルダーグリフォンが口の雷光を迸らせながらこちらに向かって吐き出す準備をしている。


「さぁ、とどめといこう」


 エルダーグリフォンの口から勢いよく電気を纏った弾が放たれた。

 一つは俺達の横を通り抜け木にぶつかり半分に割れ燃え始める。

 おそらく試し打ちなのだろう。


 続けて二つ目が放たれた。

 今度はこちらを狙っており、その対象はヒーラーのメリエルだ。


「ミネルヴァ! 頼むぞ」

「任せてくれ」


 ミネルヴァが盾で電撃の弾を大盾で防ぐ。

 攻撃をしのいだもののミネルヴァにも電撃の衝撃が走ったのか、動きが非常に鈍くなる。

 次の攻撃を受けると直撃はまぬがれない。


「くっ! まだだ!」


 そして三発目が打ち出されそうになる。

 どうやら狙いはもとからミネルヴァのようで、交わされてはいけないのでかばわせる形で攻撃したのだろう。


「ミ、ミネルヴァ……」

「狙いは絞れた。動揺している時間はない。メリエル! あいつの口を封じろ!」

「わ、わかりましたわ」


 メリエルは焦っていたが俺の一喝で魔法に集中し始める。

 ターゲットを絞らせた方が命中確率は上がるのだ。


 そしてステッキの軌跡が輝きがエルダーグリフォンに放たれた。

 間一髪三発目が吐き出されることはなく不発となった。


「行くぞ。アガタ。あいつに突撃する。しっかりやってくれよ」

「……わかったわ。あんたの言う通りにするわ」


 アガタは俺の背中から腕を伸ばししっかり俺の体を掴んだ。

 そして詠唱を完了し、ブースターの要領ですさまじい速度でエルダーグリフォンに突っ込んでいく。


「うおおおおおおおおおおおっ! これで終わりだ!」


 エルダーグリフォンの口が開きもう一度、体を稲妻を纏おうとして口を開ける。


「アガタもっと速度を! もう少しで届くんだ!」

「これが全力よ!」


 俺達は加速していきカウンターが発動するまでに、なんとか剣先が相手の体を捉えた。

 そして高速を維持したままエルダーグリフォンの巨体を切り裂いていく。

 鮮血が背後に勢いのある噴水のように吹き上がる音がする。


「ちょっと違うが、『光輝玉砕』ってな。ってうおおおおお! あぶねえ。アガタ! ストップ!」

「そんな急に言われても……きゃあああああ」


 俺とアガタは勢い余ってそのまま転がり、湿地に突っ込んでいった。


 泥をかぶったが振り返るとエルダーグリフォンは断末魔の叫びをあげ、体中に稲光を発しながら倒れていく。そして完全に倒れるとピクリとも動かなくなった。


「皆さん! 大丈夫ですかー!?」

「ああ、おかげさまで泥だらけだ。さっさと風呂に入りたところだな」


 ゆーりが心配そうな顔で駆け寄ってきたが、俺は口の中の泥を吐き出してにやりと笑った。

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