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ソシャゲに転生しても俺はなんとかやっています  作者: 山崎ジャスティス
殷賑の祝祭防衛編
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第2章22部:ベルーコ王国へ

 ゴスアの街の入り口につくと何やら大層な荷物を積んだ馬車が待ち構えていた。

 荷物には布が巻きつけられ、外からは中身が見えないようになっている。


「あ、もしかしてあれが依頼のものですか?」


 ゆーりが馬車の先頭で待機している煙草をくわえている髭面の男性に話しかける。


「ああ、そうだよ。もしかしてこの嬢ちゃんが護衛人ってわけかい」

「は、はい。そうですが」


 髭面の男性がぎょろっとした目でまじまじとゆーりを見る。


「まぁ、人は見かけによらないってことだろう。今まであんたみたいな小さい嬢ちゃんでもしっかりと成し遂げてもらったこともある。今回も大事な仕事だ。任されているからにはしっかり期待には応えてもらうぞ」


 男性が厳しい口調で言い、たばこを吹かす。


「なぁに安心しろ。あんただけじゃなくて後ろにいる連中にも責任はのしかかっているんだ」

「あたしが失敗? まさか、冗談はほどほどにしてよね。天才のあたしがいれば不可能なんてないんだから」

「はぁ……また始まりましたわ。もううんざりですの」


 アガタがいつものように話に突っかかるように入っていく。

 隣のメリエルは頭を抱えていた。


「威勢のいい嬢ちゃんもいるんだな。元気のないよりはある方がいい。護衛人の士気は運び手の希望に代わるもんだ。自信のないやつと一緒にいるほうがこっちとしては不安だからな」

「威勢がいいだけとは思わないでよ。見てなさい今回のエルダーグリフォンをやっつける功績は、あたしが大魔導士になった時に逸話になるのよ。当時弱冠17歳の大魔導士アガタは、その才気の片鱗を見せつけんとばかりに、凶悪な魔物であるエルダーグリフォンを優れた魔導によって退けたという。ってね」

「あなたって17歳でしたのね。わたくしより年上だなんて……頭が痛くなりますわ……」


 アガタの根拠のない自信が珍しく髭面の男性には好印象のようだ。

 男性はベテランと言った感じで今まで様々な物資を運び、今回同様にこれまでも大役も任されてきたのであろう。


「戦闘となれば私達がその大事な物資を守り、行く手を阻む者があればそれを薙ぎ払う。それくらいでいいのならお安い御用だ」


 ミネルヴァがアガタの言葉に付け加える。

 これまでも様々な戦場を渡り歩いてきたミネルヴァが言うのであれば説得力が違う。

 並みの魔物程度であれば顔色一つ変えず進むことができるのは、こちらとしても重々わかっていた。


「頼もしい姉ちゃんだな。あんたも相当な修羅場を潜り抜けてきたんだろう。俺もこれまで様々な依頼をこなしてきたが、今回出くわすかもしれないエルダーグリフォンもかなり危険な魔物だ。万が一戦闘になったときは頼んだぞ」


 そういいながら髭面の男性はコートの裏に仕込んである、多種多様な爆弾を俺達に見せた。


「へぇ~。たくさんあるんですね」

「閃光爆弾や強烈な音が鳴る爆弾、煙玉、救援用の発煙玉もある。あらゆるパターンを想定して準備をしている。一番は遭遇しないことなんだがな」


 男性が豪快に笑い飛ばす。確かに俺としても遭遇せず何事もなく湿地地帯を通過したいのだ。


「まぁいい。さっさと向かおう。あんたらの待機用の馬車は前方にあるものだ。そこでゆっくり休憩でもしておきな。ただ仕事となったらしっかり働いてもらう」


 男性は目の前の少し簡素な馬車を指さしながら言う。


「今回はあまり使わない最短距離の湿地を通るルートだ。幸い道も最近雨も降っていないので、極端に足元が悪いことはない。比較的動きやすい道を通る予定だ」

「やはりその点は熟知しているんですね」

「当然だ。危険な道だから入念な下準備と経験がモノを言う。イレギュラーな事態さえ起きなければな」


 感心するゆーりに髭面の男性は顔色一つ変えず答える。

 まさにベテランという風格が漂っている。


「それでも危険な湿地を渡るのですが、もっと安全なルートを提案しなかったのですか」

 俺が質問すると男性は鋭い目を光らせる。

「もちろん迂回するルートを提案したが、一刻も早くこの荷物を運んでほしいというあの軍人様の依頼人のたっての希望だ。だったら無碍にするわけにはいかないだろう。山道のルートはこの荷物じゃ通れないからハナから除外だ」


 納期関連で急かされたゆえのルート選択ということがわかった。

 ジークによれば半日もすれば到着するとのことだったので、一刻も早くベルーコに届けたいとなると迂回するよりもこちらの方がいいらしい。


 ただ一刻も早くというのが気になる。

 純粋にベルーコへ祝福する誠心誠意の気持ちの表れなのか、それとも昨日見せた一面のように何かあるのかと言う点だ。

 どうしても昨日の残酷な一件が忘れられず、頭から離れない。


 しかしどうあれこれが終わるともうあの男のことなど忘れられると思うと、俺もまた一刻も早くこの依頼を終えたいという気持ちに駆られるのであった。


「さぁ、さっさと乗り込みな。もしこれから雨が降ってこられると迂回することになって時間をとられる。さっさと終わらせようぜ」


 男性が呼びかけるので、俺達は先頭を走る馬車に乗り込んだ。

 何も起きなければベルーコ王国に到着するまで、その中で待つことになる。

 ただ大きな事件と遭遇しないことを祈りながら。

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