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ソシャゲに転生しても俺はなんとかやっています  作者: 山崎ジャスティス
殷賑の祝祭防衛編
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第2章9部:ゴスア帝国の中へ

 ゴスア帝国の首都に入り、俺達は依頼人の待つ場所へ向かう。

 城下町の人々は皆慌ただしかった。

 のんびり買い物している人や広場で遊ぶ子供の姿はあまり見受けられない。

 それどころかゆーりより小さい子供が、店番をしていたり、裏方で鍛冶をしている親方らしき人に怒鳴られている姿や、剣の素振りをしている姿が多く見受けられた。


 首都に入る前に厳重に警備をしている強面の門番から問い合わせがあったが、御者が事情を話すとスムーズに入ることができた。


「なんかここの人は皆さん、ピリピリしてますね」

「少しくらいはゆっくりすればよろしいのに。もう少し休暇を与えた方がよくなくて?」


 ゆーりとメリエルが街の様子を見ながら口々にその感想を話す。


「これがゴスア帝国のやり方であり、それでこの国は発展したんだ。力のあるものが上へ行きその力を存分に振るい、ないものは淘汰されるか、守られるだけなんだ」


 ミネルヴァが少し不満げなメリエルをなだめるように言った。


「なんかミネルヴァはゴスア帝国について詳しいな。なんか知っているのか」

「あ、ああ、それがだな……」


 キッドが少し突っ込んだ質問をし、ミネルヴァはしまったというように少し困惑した顔をしている。

 俺もミネルヴァがやけに詳しいことについては気になっていた。

 しかしミネルヴァがそのことについて話したくなさそうな様子である。


「あ、あそこの先です!」


 ゆーりが話を遮るように地図を見ながら指を指した。


 その方角を見ると大きな城門が構えており、その両脇に長槍を持った鎧の騎士が脇で三人待機していた。

 その周辺は他よりも一層緊張感が高まっており、虫一匹通さないという意志を感じる。


「とりあえず行ってみましょう。厳重そうですがなんとかなりますよね」


 ゆーりが城門へ向かって駆けていく。

 思い立ったらすぐ行動するというわかりやすかったが、おそらく何も考えていないのは間違いないので、俺は肩をすくめてついていった。

 外で会ったさっきの男のことはもう忘れていたのかもしれない。


 城門へ近づいて入ろうとすると、門番の騎士が互いに槍を交差させて、行く手を遮った。


「なんだ貴様」

「ここは帝国の関係者のみが入れる場所だ。許可無き者の入場は認めない」

「ましてや貴様らのような子供達が無断に立ち入る場所ではない。帝国のために訓練に戻るか仕事を覚えろ」


 騎士達が厳しい口調で追い出さそうとした。兜の下に姿は見えないが、おそらく厳つい表情なのが想像つく。


「あの、えーとですね。依頼を頼まれてまして……」


 ゆーりがフードを外しぺこりと挨拶をすると、懐から英雄の証を見せた。


「なんだこれは」

「ふむ。貴族からの推薦状か。今回の依頼はどんな内容だ」


 騎士が姿勢を変えず、こちらに顔を向けながら言った。


「積荷の輸送を頼まれています」

「積荷の輸送? そんな話聞いたか?」

「いいや、何も聞かされていない」

「だがそんなもの業者に任せればよいだろう。そんな話で通すわけにはいかない。お前のような子供が場所じゃない」


 依然として騎士達はそこを通してもらえる雰囲気じゃない。

 ゆーりが困った顔でこちらを見た。こうなる展開を予想できたが、俺は頭を抱える。


「ねぇ、でもどうすんのよ。何を言ってもこいつら、通してくれる感じじゃないけど」


 アガタが俺の方を見て呟いた。


「こいつら魔導でぶっ飛ばしてやろうかしら? あたしまでちんちくりんみたいな子ども扱いされて癪だし」

「おいおい。それだけはやめてくれ」


 俺が魔導書を取り出すアガタを制止する。


「まぁ尻拭いする位置も板がついてきた。まぁ俺がなんとかしてやる」


 俺が城門を通ろうとすると、騎士がさらに警戒したように俺に詰め寄る。


「貴様もあいつらの仲間か」

「お前があの子供の保護者か? あの女騎士の方も言ってやってくれ。ここはお前達のような怪しい者がくる場所ではない」

「まぁまぁ、そういうこと言わないでさ」


 俺が笑顔で追い返そうとする騎士達をなだめるように言った。


「まぁさっきの依頼の件なんだが、あいつの言う通り依頼を頼まれていてな。ジークって人を呼んでくれないかな?」

「ジーク様だと?」

「お前、ジーク様を知っているんだな」

「ま、まぁな」


 とりあえず知ったかぶっている風で俺は切り抜けようと考えた。

 連絡がすでに通っているのなら、話を通してくれるはずだ。


「おい、ジーク様にこのことを話せ」

「わざわざ、すまないな」


 騎士の一人が奥へと入っていった。

 しばらくその場で待っているとその騎士が戻ってきた。


「依頼の件だがジーク様は承知とのことだ。この先の西棟にある会議室でお待ちとのことだ」

「くれぐれも無礼のないようにな。無礼を働くと何をされるからわからないぞ」

「一見穏やかで元ベルーコ人だが、軍人としては一流で剣の実力で一本でのし上がった方だ。その戦いぶりから人呼んで孤高の修羅と呼ばれている」


 騎士達が槍をどけて通れるようになると、俺達は城門をくぐり入っていく。


 くぐるその刹那、俺は外で会ったゴスア人とゴスアの騎士達との間に違和感を覚えた。

 騎士達が今回の積荷の目的をまるで知らされていない、あるいは国同士の歴史的な和解を信じていないような。


 遠くから稽古の掛け声や、鉄を叩く音が響いている。

 中は殺風景であり人通りがない。

 訓練中のケガや騎士との間でのいざこざが多いのか、血痕が床にこびりついている。

 人の姿は窓越しに鎧を着た騎士や、軍服を着た男が遠くの建物に見えるのみであった。

 確かに俺達が来る場所にしては幾分か浮いていると、ひしひしと感じた。

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