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ソシャゲに転生しても俺はなんとかやっています  作者: 山崎ジャスティス
永劫の鏡奪還編
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第1章19部:マサキと白髪の男

 もうクリアーのイベントを残すのみとなったため、道中に魔物が現れることはなかった。


「ところで、あんたあの姿はなんだったのよ」


 屋敷へと向かう歩みの途中で、アガタが質問を投げかけた。皆が聞きたかったが、あえて触れなかったことをアガタが切りこむ。


「ん~~。なんと言えばいいか。俺にもわかるようで、わからないような」


 俺は頭を掻いて、あやふやな回答で切り抜けようとした。

 俺の可能性と言えば疑問ばかり残すし、俺の別の姿と言えばいいのか、説明に困る。


「わからないってあんた。髪の毛が白くなって、口調も変わって、別人だったわよ。はっきり言って異常ね」

「そうですよ。あの時のマサキ、とても怖かったです。マサキじゃないみたいで……」


 ゆーりがその時を思い出したように語り、少し震えていた。


「別人みたいか……」


 確かに意識はあるものの、肉体の自由を奪われ、スクラーヴェリッターを圧倒し、言葉遣いも変わっていれば、誰だって別人だと思う。

 おそらく表情も普段とは違っていたのだろう。


 だがあの時の俺は操られているような感覚のまま、ただスクラーヴェリッターを倒し、仲間を救いたいと強く願っただけなのだ。


「確かにあの力は凄まじいものだった。正直私も身震いした。だがいくら皆が信じられなくても、あの男はマサキだと私は思う」

「どういうことですの? 召使にあんなことができるなんて信じられないわ。でしたらいつでもあのような力を発揮できるのではなくて?」


 メリエルが馬に乗りながら、ミネルヴァへ疑問を投げかける。


「おそらくマサキも、あの鬼神のような力を自由に発揮できないのだろう。なぁ、マサキ?」

「あ、ああ、そうだな。俺もあの力が一体どういうものなのかもわからないんだ。わかるようでってのは、俺のカンだが、死の間際の火事場のバカ力って奴なんかじゃないかと思う。その時に何か切り替わって俺が別人みたいになったとか」

「ふーん。バカ力ね。バカだけにそのまんまね」


 アガタの言葉に少し眉間に皺が寄りけかたが、なんとか俺はそれを押し殺した。


「あの戦いぶりはその力を制御できていないように見える。あまりにも暴力的で、まるで破壊することを楽しんでいるようだった」


 ミネルヴァがその時の様子を淡々と語る。

 確かにあの時の俺は、あの力の為すがままに振り回されていた。


「だが本当に暴れているのであれば、その場にいた者を皆殺しにしていたはずだと思う。だがそうじゃなかった。あの黒い人型の魔物を倒した時に、マサキから発せられた純粋な殺気は消えたんだ」

「ということはあの時の召使は、わたくし達を殺すつもりはなかったということですの?」

「そういうことだ。やろうと思えば、魔物を倒した後、私達を殺せたんじゃないかと思う。なぜなら全員もう戦う力はほとんど残されていなかったからだ」

「わたくし達を守るために、あの魔物を倒したのですから、あの男はマサキであるということですわね」


 ミネルヴァの理屈は筋が通っていた。

 仲間を守りたい一心であの力に身を委ね、振り回されながらも、矛先を仲間に向けるようにだけはしなかった。


「ああ、確かに凄まじい力に俺は蹂躙されていた。だがその力の行き先を、あの魔物にだけを向けたのは違いない」

「だから私は、あの時の男をマサキと同一人物だと考えるんだ」

「確かにその通りですね」


 ゆーりが頷いて、その後俺の顔をじろじろ見た。


「はい。今はいつものマサキですね。あの時の怖い顔は一時的なものなのですか。よかった。ですけどまたあんな顔しないでくださいね」

「まぁ、なんでもいいわよ。バカはバカらしくバカ力で頑張りなさい」

「口調とか見た目とか気になるところはありますが、まぁいいですわ。わたくし達に害がないとなれば問題なしですわ」


 全員がそれぞれ理由をつけて納得してくれた。


 だがこれからもしまた同じ力が目覚めたとき、俺が仲間に刃を向けないという保証はない。

 できるだけあの力を開放しないように自分を抑え込む必要がある。


 こういうのにありがちだが力に飲み込まれ過ぎると、いつか本当に自分を見失う気がするのだ。

 もう一度あの男が姿を現す時、俺はどう向き合っていくべきなのであろうか。

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