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ソシャゲに転生しても俺はなんとかやっています  作者: 山崎ジャスティス
永劫の鏡奪還編
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第1章10部:決戦――ロジャー戦

「やべえ!あいつらがきちまった!」


 盗賊とは思えない品のある男性の声を聞いてキッドは驚き、ゆーりの後ろに隠れた。


 そこには軽鎧を着て、レイピアを持ち、金髪を真ん中で丁寧に分け、その下に狂気に染まったような金色の瞳を宿す細身の男性――この男こそがロジャーなのだ。


「盗賊みたいに宝物庫に忍び込んだようだが、また鏡のことか? 相変わらず性懲りもないな、兄上は。いや、兄と言うのもおこがましい。あの醜く太った豚が」

「あんたね! どっちが盗賊なのよ! あんたがこんなことするからみんな迷惑してるんでしょ。気づきなさいよ」


 アガタがロジャーに指をさしながら言い放つ。それを聞いてロジャーが笑う。


「迷惑か。考えたこともない。私がこのような身に落ちてしまった以上仕方ないのさ。復讐と復権のためにな!」

「でも、なんであんなことをするんですか」

「父上があの豚を当主に選んだからだ! あの豚は長いものに巻かれるという精神で、人に取れ入れるのがうまいのだ。剣の腕もや統治能力、そして当主としての器はないがな!」


 ロジャーがゆーりの疑問に怒りの形相で答えた。

 そしてその後ゆっくりと自らの計画について語り始める。


「復讐さ! 私を選ばなかった愚か者どもにな。この近辺を統治するためには代々伝わる宝が必要なのだ。永劫の鏡を手に入れるのは容易かったが、あの豚共の飼い犬どもを倒さなければ、私は真に当主の地位には就けない。そのために兵士を集める必要があった。兵士を集めるには私の力を見せつけのが一番手っ取り早いからな。そしてついに準備は整った」


「ですけど村をあんな惨状にする必要はなくて? あなたが昔よく見回っていた村だったはずですわ」

「ああ、確かにそうだな。だが今となっては無用のものだ。感づかれるくらいなら、いっそのこと皆殺しにすべきだったかもしれないな」

「貴様! 何を言う!」

「だがちょうどいい。私もあまり乱暴なことは好きではないのだが。私の邪魔をするのであれば死んでもらうしかあるまい」


 ミネルヴァが感情をあらわにし勢いよく剣を引き抜く。

 俺達も続いて臨戦態勢をとる。ゆーりは最後方で自らの身を守っていた。


「話し合いしても無駄そうだな。あいにく俺達も依頼人に頼まれるんだ。お前が豚と言っているアルベルト氏からな。仕事はきっちりと果たさせてもらうぜ」

「私には計画があるのだ。貴様らごときに邪魔されてなるものか!」


 ロジャーが手を上げて合図すると、後ろに控えていた盗賊達が俺達に襲い掛かる。


(こいつらは全員風属性だ。弱点である炎属性に変えるか)


 盗賊達はまずは前衛の俺とミネルヴァを狙って攻撃を仕掛けてくる。

 俺は千変万化(エレメンタルスイッチ)を発動し、盗賊達の弱点属性である炎属性を剣に付与した。


「くっ……てめえら!」

「どうした? 弱いものをいたぶってきた罪をその身で贖うがいい」


 ミネルヴァが盗賊の斧を受け止めながら、確実にがら空きとなった部位に剣で切り付けていく。

 ミネルヴァが複数係りでまとめて攻撃されることがあったが、すべて防御し、その隙に俺が盗賊を一人ずつ攻撃していった。


 だが盗賊の増援がさっきからひっきりなしに続いているため、数で負けているこっちが不利であった。


「ああ! もう面倒くさいわね! 虫みたいに湧いてきて!」


 アガタが苛立った口調で詠唱を唱え終えると、盗賊をまとめて炎の渦で焼き尽くす。

 対象を絞ったためか、盗賊達を燃やすのみで、周囲の宝には燃え移ってはいなかった。


「あっはっは。どう? あたしの実力は? これに懲りたらしっかり反省して」

「アガタ危ない!」


 物陰から忍び寄りながらアガタを狙う盗賊にミネルヴァが気付く。

 

 盗賊の凶刃をミネルヴァが身を呈してアガタを守る。

 ミネルヴァは鎧があるとは言え盗賊の斧を直で受ける形となった。


「ぐあぁっ!!」

「いた……ミネルヴァ!? 大丈夫!?」

「ああ心配ないさ。これしきの傷なんてなれているさ」


 俺はすぐに盗賊のもとへ駆け、硬直している盗賊に一撃を加える。


「だが困ったな。このままじゃらちが明かないぞ」

「ええ本当ですわね……このままじゃこっちが消耗する一方ですわ」


 メリエルがミネルヴァを回復しながら呟く。

 俺達は辺りを見渡す。


 盗賊達はまだいるようであり、アガタが狙われたように同じことが起きるとこっちが不利になる一方だ。


「ボスを倒さない限り、どうしようもないな。こうなったら俺がロジャーを倒すしかない」

「でもどうやって、この中からあいつを引きずり出すんだ?」


「そこでアガタ。お前を使うんだ?」

「あたし? 任せなさいよ。なんせあたしに不可能はないのよ」

「その根拠のない自信。今回は頼りになるぜ。俺の合図で魔道を撃ってくれ。造作もないだろ?」

「当り前よ。あたしを誰だと思ってるのよ」


 俺はいってくると仲間たちに頷くと、ロジャーの方に両手を上げながら歩み寄る。


「どうした? 降参する気になったのか? これでは張り合いがないではないか」

「いいや。降参する気なんてサラサラないぜ。ロジャー。お前と一対一でケリをつけようぜ」


 ロジャーはそれを聞いて爆笑した。そして馬鹿にしたような顔を俺に向ける。


「何を言っているのだ? 貴様が私とだと? 身の程を弁えよ。そもそも私の手を下すまでもなく貴様は死ぬのだから。そして私は危険を冒さない。雑魚の始末に私がでるほどでもないのだからな」

「そうかい。交渉決裂だな。後悔して命乞いしても泣くなよ。アガタ、天井に向かって風を放て!」

「わかったわ! 任せない!」


 アガタが瞬間に魔道を詠唱をし終わると、ロジャー氏の背後の天井の岩肌に向かって風を放つ。


 岩肌は強い風の衝撃で崩れ、ロジャーの後ろに退路がなくなる形になった。

 俺はそれを見て不敵な笑みを浮かべる。


「これでどうだ? もうあんたの仲間は来れない形だぜ。諦めて俺と戦ってくれるか?」

「貴様。舐めたことを。いいだろう貴様の相手を私直々にしてやろうではないか。光栄に思うがいい」


 ロジャーはそういってレイピアを構えた。


「お前たちはあの魔道を使う小娘を狙え。私がこの小僧を殺す」


 盗賊達はロジャーの言葉にうなずくと、アガタを狙うように走っていった。


「ミネルヴァ! 頼むぞ! お前がこのパーティの盾だ。後衛をしっかり守り切ってくれ」

「ああ! 私がいる限り仲間には指一本手出しさせないさ」


 俺がミネルヴァに叫ぶと、ミネルヴァはずっしりと盾を構えて防御の耐性を取る。

 アガタに向かう盗賊を、盾で未然に防ぎ、盗賊の狙いをミネルヴァに絞らざるを得ないようにした。


「あたしがあの雑魚どもを蹴散らすわ。あたしの実力はこんなもんじゃないってことを証明してあげるわ」


 余裕たっぷりに笑うアガタに盗賊が背後から迫りより、ナイフで切りかかろうとする。しかしその盗賊が光の輪で縛られ、一時的に動けなくなった。


「まぁ! 危ないですわよ。わたくしがいなければどうなっていたか」


 アガタは縛られて倒れたままの盗賊を踏みつけ、不遜な笑みを浮かべ、メリエルを見る。


「それくらい計算のうちよ。見てなさい。全員懲らしめてやるわ」


 アガタが火球を盗賊に命中させると、俺に指をさしながら言い放つ。


「バカキ! そんな偉そうなおっさんに負けたら承知しないわよ。なんならあたしが代わってあげてもいいのよ」

「言ってろ。こんなおっさんに負けるわけねえだろ。すぐに片づけてやるよ」


 俺は意気揚々に剣を突き出し、ロジャーに向かって突進した。

 しかしロジャーはひらりといなすように交わす。


「貴様。その程度で私と戦うといったのか? 大した愚か者だな」


 ロジャーのレイピアが硬直に刺されそうになったが、俺は間一髪で回避し、体制を立て直した。


「逃げ足だけは早いようだな。それではこちらからいくぞ!」


 ロジャーはそう言うと、腰を低くして剣先をこちらに向けた後、鋭い突進突きを繰り出した。

 突進の軌道をなんとか読み切り、回避に成功する。

 しかしロジャーは間を置かず俺の方向に振り向き連続突きを放つ。

 俺は受けきるのが精一杯で、何発か脇や腕に掠ってしまう。


「最初の威勢はどうした?」

「くっ……!」


 ロジャーがもう一度腰を低くして構えるのを見て、俺は突進突きをされる前に突っ込んだ。


「血迷った愚か者め。なんだそれは!」

「しまった! カウンターか!」


 俺の斬撃をレイピアで弾き返し、無防備になったところを鋭利な突きで俺を吹き飛ばした。


「うわあああっ!」


 吹っ飛ばされたがなんとか受け身を取って立ち上がり、もう一度剣を構え直した。

 しかしさきほど吹き飛んだ際に受け身を取ったとは言え体を打ったため、どうしても剣を持つ右手の肩に痛みが残る。


(そうだった。あいつにはカウンター攻撃があるんだった。本当なら攻撃魔法で無傷で切り抜けられるんだが。タイマンだとどうもきついな)


 だが何とかして、ロジャーの攻撃を見切らないと攻撃すら通らない、そのためにどうすればいいかを必死で考える。


(どうする。考えろ。あいつの攻撃を的確に読み取らないと。あいつが剣を構えてから対応してでは攻撃できない。かといってアガタ達が戦闘に参加する待つ時間もない)


 ロジャーを凝視しながら打開策を考えていると、ふとミネルヴァの言葉が思い浮かんだ。



『逆境の時ほど、目の前ではなく全体を見るんだ。そして相手の仕草や動きの意味を考える。それに回答を見つけ出したら、もう勝ったも同然だな。幸い君は堂々とイカサマをしたり、それをものにする強さがある』



(そうか全体を見るんだ。相手の動きや仕草を見て……)


「貴様。何を悠長に考えている。遺言でも考えているのか? 聞いてやるつもりはないがな!」


 ロジャーが腰を低くして剣を構える。俺はロジャーの全体を見た。深く腰を落とし、剣先をこちらに向け、今にも蹴りだして突進する様子だった。


 そしてロジャーの顔を見た。目線は俺の剣先ではなく、俺の心臓の部分だ。

 つまりあいつは俺の心臓を狙って攻撃している。

 俺の剣先を見ないということはフェイントなどをしていない。

 これで決着をつけるという殺意がこもっている。


  ロジャーが地面を強く蹴り、剣先をこちらに向けながら突進突きを繰り出す。


(交わしたらまた同じように体力を消耗するだけだ。ここは……!)


 俺はロジャーの突進突きが来る前に剣を振り下ろした。

 だが突進するロジャーが到達する前に振り下ろしたため、剣は虚空を切ることになる。


「空振りか! 間抜けめ! 死ねがいい!!」


 ロジャーの突きが鋭さを増す。


 俺は剣をすぐさま振り上げ、相手のレイピアの先端を剣の柄の部分で受け止めた。

レイピアは俺の心臓には届かず、柄に弾き返された。

 そこでロジャーが動揺し少しよろめく。


 ロジャーに一瞬の隙が生まれたのだ。


「なにぃ!? ちょこざいな真似を! 貴様ぁ!!」

「そこだぁ!!」

「ぐぉぉおおおっ!」


 無防備な体制を晒したロジャーに斬り下ろす。

 攻撃を受けた衝撃でロジャーは切れられた部位を手で抑えながら大きくよろめいた。


「マサキ! 今がチャンスです! とどめを!」


 ゆーりが後ろから声を上げた。

 俺はそれを聞いて余裕の笑みを浮かべる。


「ああ。もちろんそのつもりだ。俺と戦ったことを後悔するんだな」


 俺は剣を水平に持ち、手の甲を相手に見せた。すると体の奥底から凄まじい力が沸き上がるのを感じる。


 必殺の一撃クライマックスアーツの発動の瞬間だ。


「そろそろ決めるぜ!」


 俺は剣を両手で持ち直し、ロジャーに対して怒涛の連続攻撃を繰り出す。

 斬り下ろし、斬り返し、一文字斬り、突きだけでなく、肘打ち、膝蹴り、柄殴り、回し蹴りを行い、相手を滅多打ちにする。

 そして大きく水平に斬った後、最後に渾身の力を込めて上昇しながら斬り上げた。


「俺の剣には流派とかはない。いわば俺の体が求めるまま姿を変える連撃。


 無限乃無型ファンタズマゴリアだ」


 俺は着地と同時にそう呟き、剣を鞘に納めた後、吹っ飛び倒れたロジャーに向けて顎を上げて余裕の笑みを浮かべながら見下した。


 俺が簡単に負けるはずがない。

 誰が強いかを証明したのだ。

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