・14・いざ行かん!妖精界へ
魔界の”摂理”を抜け、小休止を挟んでロベリアは妖精界へと向かった。
妖精界は精霊界より先にあり、その領域境界は黄色い壁である。
精霊界へが最低二刻、妖精界へは三刻ほどかかる。
彼女が黄色みを帯びた”摂理”に穴を開けて中に進入した時、すでに太陽は真上まで少しの陽空になっていた。
ロベリアが妖精界へ来たのには、大きくは儀式に必要なある道具を借りるためである。
それはいわゆる魔力計測器であり、閃光蛍の魔族から魔族を搾り取った後、男が持っていた魔力量を計るためだった。
一般的な魔力計測器なら、妖精族なら一家に一つあるくらいポピュラーで、その形も手のひらに収まるほどの小箱なのだが、その計測器では魔力量を数値にして100までしか計る事ができない。
普通の妖精族は魔力量がだいたい50くらいのため、その計測器で十分である。
しかし、魔王の復活に必要な魔力は魔族数人分、おおよその数値では1000ほども必要で、そんな膨大な魔力量を計る事ができる魔力計測器は、ある場所にたった一つしかなかった。
その場所とは、妖精族の祖と王族が住まう所――宮殿。
妖精族は四つの種族の中で唯一しっかりした身分制度が敷かれた世界である。
全ての妖精族の祖・妖精王があり、その子孫たちは王族となった。
好奇心と興味から「格」を堕とす事も厭わなかった妖精族では、何かのしくみや原理、新たな道具の発見や研究が大きな価値を持つ。
その性質ゆえに、必然的にそのような功績を作った者は賞賛され、高い地位を得て、いつしか貴族と呼ばれるようになっていった。
そしてそれ以外の妖精族も皆なにかしら探求することを好み、何か発見などすれば身分を得る可能性があることから、常にそのような行為に勤しんでいた。
その影響でか妖精界はロベリアが知る町や国、都会という雰囲気を唯一もつ世界であり、いわゆる科学力、ここでは魔術理論・魔術機関が発達している世界でもあった。
宮殿にある魔力計測器は5000まで計測する事ができる。
なぜそんなものがあるのかという理由は、ロベリアが初めて妖精界を訪れてこの装置の存在を知り、「来たこれ、異世界テンプレ!」と喜んで計測したところ、こちらもお約束のように計測不能で破壊したからである。
魔族としてもかなりの猛者に入るロベリアの魔力はかなり多量で、ロベリアは魔族だとばれ、宮殿に連行されてしまったのだ。
そして妖精王の御前に引き出され、なんやかんやあって宮殿研究所の研究員らに特別製の計測器を作ってもらったのであった。
以前計測した時、ロベリアの魔力は4800ほどであったが、現在は果たしてどれほどだろうか。
さて、今回それが必要なのはあの閃光蛍の魔族の魔力量を計測するためであり、おそらく1500は超えるだろうとロベリアは推測している。
目的地は宮殿であるが、その前にせっかく妖精界に来たからと、ロベリアは所用を先にこなすことにした。
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