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第4話 勇者の探索士講座

※2016/9/9 金銭周りの描写を変更しました。1ダイムあたりの価格が10円⇒10~20円? に。

『ううむ、人間も増えたものだな…… こんなに大きな村があろうとは……』


 ラバの牽く馬車に揺られて数時間。


 俺たちは麓の街について、マルクさんと別れた。


 村ではない。街である。

 マルクさんは「ラディオンの街」と言っていたか。

 観光地か何かなのか、ヨーロッパ風の衛兵さんが守る門を通って入った、石壁にぐるりと囲まれた街だ。

 テレビなんかで見るイタリアの観光地のような、中世ヨーロッパ風の石造りの建物が並んでいる。


 随分薄暗くなってきているが、大通りはそれなりに賑わっていた。

 日本の街中に比べれば程よい賑わいなのだが、天龍にとっては驚くような光景のようだ。


 ちなみに、腰に下げた剣については門の衛兵さんも見落としたわけでもないだろうに特に何も言わなかった。


 さて。それにしても困ったな。


「今日はどこで寝泊まりすればいいんだ……?」


 よくよく考えれば、家もない。お金もない。ネカフェやホテルの看板もない。


 あ、いや、お金はあった。腰につけてた小銭入れの袋。

 取り出してみると、中にはチャリチャリと小銭が入っていた。


 500円玉くらいの大きさの白い硬貨が一枚。

 100円玉くらいの白い硬貨が二枚。

 同じくらいの大きさの銅貨が八枚。

 1円玉くらいの銅貨が六枚。


 どうみても馴染みのある日本円ではない。


 天龍眼には、順に「1000ダイム銀貨」「100ダイム銀貨」「10ダイム銅貨」「1ダイム銅貨」と表示されている。

 つまり所持金1286ダイム。

 だが、これが日本円でいくら程度のものなのか、これがわからない。

 流石の天龍眼も、自動的に換金レートを表示するほど便利ではないようだ。


 だが、たとえばダイムがドルと同じく120円くらいのレートだとしても、生活費だと考えるとそう長持ちするものでもない。

 住み込みのバイトとか探さないとダメかなー、でないと今度は野垂れ死にだ。


 生き返ったのはいいけど、自分の身許もわからないので生活基盤が皆無だ。

 よくよく考えると現状はかなりやばいな……


『人間は不便なものだな。そんなことに頭を悩ませねばならんとは』

「天龍眼でなんとかできないのか?」

『できんな。私の眼とはいえ、あくまで眼だ。人間の家や食べ物が出せるようなものではない』


 ですよねー。


 使い方と状況次第でもあるとは思うが、少なくとも今すぐ窮状を打破できるものでもない。


 ああ、それにしても……


「腹、減ってきた……」


 ぐぐぅ、と腹の虫が餌を寄越せと主張する。

 生き返ってからそろそろ半日近く、晩御飯の時間だ。


 むしろ生き返ってから何も食べてないし飲んでない。

 それを思い出すと、急に空腹感が強くなって力が抜けてきた。


 先に宿……拠点を確保すべきだとは思うのだが、とにかく腹が減って仕方がない。

 どこかに飯屋はないのか。ええい俺は腹が減っているんだ。


「こんなときこそ……天龍眼!」


 顔をあげて意識を集中すると、大通りに立ち並ぶ店の名前や種類が一斉にポップアップする。

 ほんと便利だな、天龍眼。


 どこがうまくて安い、とかは流石に店構えだけではわからないようだ。

 どこにするかな……全国チェーンのハンバーガー屋とかあれば迷わなかったんだけど。


「……ん」


 ふと、大通りに明るい光を投げかける、西部劇の酒場みたいなスイングドアのついた店に入る一団が目に留まった。

 服装はばらばらでまとまりがないが、何人かは簡素な鎧のようなものをつけて、腰に剣などの武器をさげている。彼らが本物の探索士だろうか。


 店の名前は…… 『ドラゴンの大牙亭』か。

 全力でファンタジー酒場だと主張しているみたいなネーミングだ。

 探索士行きつけの店だとすると、この探索士なる未知の職業について聞けるかもしれない。

 場合によっては俺も探索士として稼ぐことができるかもだ。


 それに、近寄ると何やらおいしそうな匂いもするし……よし、ともかくご飯食べよう、ご飯!


 少し緊張しながら、俺はスイングドアを押し開けて店に入った。




「いらっしゃいませー! お好きなところにどうぞー!」


 からんからん、とドアベルが鳴った。

 忙しなく料理を運ぶウェイトレスさんがその音に振り向いて、俺に向かって声をあげる。


 店の中は賑わっていて、テーブル席はほとんどが何らかの武装をした探索士らしき人達で埋まっていた。


 店内の壁に2メートルはありそうな大きな牙が飾ってあって、これがおそらく店名の由来だろう。

 いや、まあ、作り物だろうけどね。


 テーブル席とは逆にカウンターの方はほとんど空いていたので、カウンターの空いている席に適当に腰を下ろす。


「いらっしゃい。……何にする?」

「あー……っと、とりあえずウーロン茶で」


 メニューを見る前に声をかけてきたカウンター内の無愛想そうな髭面の店員……というか店長か。

 どこの店でも標準的に置いてある無難な注文をする。


「ウーロン……? あいにくそういう名前の茶はねぇな。普通の茶でいいか」


 俺の返事も待たずに、マグカップにボットからお茶を注いで出す店長。

 まあ別にいいけど……この無愛想でよくこれだけ繁盛してるもんだ、と思いつつ一口お茶を飲む。

 紅茶のような色合いだが味は緑茶みたいな、不思議なお茶だった。


 メニューを手にとって開いてみるが、日本語でも英語でもない、直線を組み合わせたような見たことのない文字で手書きのメニューが書いてある。

 だが天龍眼にかかれば自動的に日本語に翻訳してくれるのであった。

 国外旅行のお供に天龍眼! マジ便利。


 メニューの内容と価格を見たところ、1ダイムはせいぜい10~20円くらいの価値だろうか? いかん、思ったよりも手持ちが心許ないぞ。

 だが、少なくともお茶は無料だ。節約したい現状には非常に嬉しい。


「すいませーん!」

「はぁーい!」


 鶏のからあげにポテトとソーセージの炒め物、エッグサラダの組み合わせでパンとスープのセットつき。これで行こう、と心に決めて手をあげてウェイトレスさんを呼ぶと、すぐさま明るい声で返事が帰ってきた。

 無愛想な店長さんと違ってものすごく好感が持てる。


 するりとテーブルの間を通り抜けて、明るい茶色の髪を簡素に後ろでまとめたウェイトレスさんがやってきた。


「お待たせ。ご注文は決まった?」


 フランクな口調は日本なら失格ものの接客態度かもしれないが、屈託のない明るい笑顔がかえってほっとする気安さを感じさせてくれる。


 看板娘というやつだろうか、目鼻立ちが整っていて、凛とした涼やかな美貌の持ち主だ。

 ウェイトレスの衣装がそういうふうに強調したデザインなのもあるけど、腰は細くて胸も大きい。つい目がいって、ちょっとどきどきする。


 大人っぽい印象があるが、天龍眼によると年はまだ17才。

 名前はミーシャ・レイン。レベルは6で、天属性、クラスは勇者Lv1――


 ――――勇者ぁ!?


「……えっと、ご注文は?」


 思わず呆気にとられた俺に、ウェイトレス兼勇者のミーシャが不思議そうに小首をかしげる。


「あ、えっと、鶏のからあげに、ポテトとソーセージの炒め物、エッグサラダ、パンとスープのセットで」

「はーい、マスターお願いします!」

「……ん」


 手元の伝票に鉛筆で書き込んだものを店長に差し出すと、髭面の店長は無愛想にうなづいてそれを受け取り、調理に取りかかった。


「ごめんね、無愛想なマスターで。でも料理は美味しいから期待してね!」

「ああ、うん、期待してます」


 にこにこと満面の笑みを浮かべるミーシャに、俺はなんだか緊張してしまって、妙な受け答えをしてしまった。


「ところであなた、このあたりじゃ見ない顔だけど……その格好、探索士?」

「あー…… 探索士になろうと思って田舎から出てきたんだけど、実は探索士ってどういうものか詳しくは知らないんだ。教えてもらえたら、助かるんだけど」

「あはは、知らないのになろうと思ったの?」


 朗らかに笑い飛ばされてしまったけれど、やっぱりちょっと無理がある設定だったかな……

 だが、マルクさんにもミーシャにも探索士かと聞かれるくらいだ、実際に探索士をやるかどうかはともかくとして、どういうものなのかは早めに確認しておきたかった。


「うーん、一言で言うと、探索士は主に迷宮を探索する人たちのことね。

 迷宮から、魔力や魔物の素材を持ち帰って生計を立てている人のことよ」


 ………………


 ……は?


 え、いや、魔力とか魔物とか当たり前のようにさらっと言われたけど、からかわれ……た、という様子は、ない。


「私も詳しくは知らないんだけど、魔力が一ヶ所に溜まりすぎちゃうと迷宮ができちゃうのね。

 放っておくと魔物があふれてきちゃうし、迷宮自体もどんどん大きくなっちゃうってわけ。

 そこで、探索士が魔物を倒したり、魔石を使って魔力を抜かないといけないの。

 持ち帰った素材は色んなことに使われるし、魔力は今や私たちの生活の色んなところで必要なの。

 この店の照明とかキッチンなんかにも、魔力を使ってるのよ。

 田舎の方だと、魔力が溜まるような場所が近くになくて迷宮や探索士を見たことないって人や、魔法道具が普及してないところもあるっていうけれど……あなたも、そういう感じかしら?」

「え、あ、うん、まあ、そんな……感じ?」


 魔力とか魔石とか魔法道具とか、頭に魔がつく新しい単語が色々出てきたが……

 そんなことはいいんだ。重要じゃない。


 これはちょっと、流石に。外国だから日本と違う、というレベルではない内容だ。

 まるでゲームの世界にでも迷い込んだかのよう。


 だが、紛れもなく現実だし、つねれば頬は痛いし料理の匂いはおいしそうだし、何より目の前には勇者がいる。


 はっ、と思い立って天龍眼で店内を見回して他の客の情報を……正確に言うと、クラスを調べてみた。


 戦士Lv5、戦士Lv16、斥候Lv8、学士Lv19、戦士Lv21……


 ……いた。魔法使いLv15。


 ほとんどが戦士、たまに斥候、学士が一人だけ、という客層の中で、数人だけだが魔法使いがいる。いてしまった。

 まさかなあ、そんなメルヒェンやファンタジーじゃあるまいし……と思っていた可能性を、どうやら認めねばならないようだ。




 ……ここ地球じゃないよ! ファンタジー世界だよ!




 道理で剣とか持ってるし、化学繊維の服とかないし、馬車も実用品だし、ウーロン茶もないし、ネカフェもなければカプセルホテルもない筈だよ!!


 しかも、迷宮を探索して魔物と戦うゲームみたいな世界だよ!!!



 いや実を言うと自分の姿格好を改めたときからうっすら気付いてたし、マルクさんの馬車あたりから必死で眼をそらしてた状態なんだけど、事ここに至ってはもう認めるしかないだろう。


 下手すると、壁を飾る巨大な牙ももしかしたら本物のドラゴンの……いやいや流石にそれは。

 と思って天龍眼で見たら、本当に「グランドドラゴンの牙(ランクS)」って表示されてた。マジかよ。


「……大丈夫? なんだか元気ないわよ?」

「あ、いや、大丈夫……

 あー、あんなに牙が大きなドラゴンって、どのくらい大きかったのかなーって想像して」

「あっははは! そんなドラゴンいるわけないじゃない! 作り物よ、作り物!」


 とミーシャは笑い飛ばしたが、俺は半分ひきつった笑みしか出ない。

 ちなみに店長さんは、こちらも見ずに料理に集中してた。


「ところで、今日の宿はもう決まってるかしら?

 うちは宿もやってるんだけど、探索士になりに来たならうちがオススメよ!

 なんたって、すぐ向かいが探索士協会だからね。協会は日が沈むまでしかやってないし、今夜はゆっくり寝て、明日の朝に行くといいわ」

「宿は決まってないけど、手持ちがそんなに……」

「大丈夫! うちは1泊400ダイムのお手頃価格だから! あ、料理は別料金ね?」


 お手頃価格で一泊400ダイム……!? こりゃ一月どころか三日もたないぞ!

 だが、手持ちのお金でも食費などを考えても二日くらいは宿泊できそうだ。

 今からあちこち探し回るのも大変だし、オススメ通りここに決めてしまおう。


「ミーシャ、おしゃべりはそのくらいにしておけ」

「おしゃべりじゃないわマスター、営業よ!」


 店長さんが注文した料理を俺の前に置きながら釘を差す。

 胸を張って言うミーシャだったが、別のテーブルから「ミーシャちゃーん!」と呼ばれてそちらに向かった。


「それじゃ、また後で。ごゆっくりどうぞ!」


 ひらひらと手を振りながら、鮮やかな身のこなしでテーブルの合間を縫っていくミーシャ。


 さて、探索士について聞くことはできたが──出てきた料理はなかなかのボリュームだった。

 ついでにここが地球ではなさそうだ、なんてことも判明したわけだが──鶏のからあげはひとつひとつが手のひらくらいの大きさで、骨付きのやつが5つも皿に乗っている。


 差し当たっての問題は衣食住の確保だろう──ポテトとソーセージも、スライスして炒めたポテトが山盛り、皮がパリパリに焼けたソーセージが6本もついている。

 手持ちもほんのわずかしかない以上、とにかく収入を得なければ、街中で野宿をしなければならず──味付けはシンプルに塩と胡椒だがそれがまた食欲をそそる。


 しかし安易に探索士という職に飛び付くのも──エッグサラダも大皿に大盛りで半分に割ったゆで卵が六つ、卵三個ぶんが花びらのように配置されていて、サラダと侮れないボリュームだ。


 それに、パンが二個と刻み野菜がたっぷり入ったスープ──剣なんて修学旅行のお土産の木刀くらいしか手にしたことのない俺では魔物との戦いは不安だ。


『……考え事は食べてからにした方がいいのではないか?』

「いっただきまーす!」


 何故か呆れたような声の天龍に言われたから、という訳ではないが、俺はフォークをからあげに突き刺して大口開けてかぶりついた。


 ごろっと大きいからあげの、外はカリッと、中はしっかり火が通っていてジューシーだ。

 唇をやけどしてしまいそうなのを、はふはふ言いながら食べる。断面からふわっと立ち上る湯気が嬉しい。

 骨がついて少し食べにくいが、不思議と食べにくい方が食べるのに夢中になってしまう。まるで茹でた蟹のごとし。歯で骨をこそいで、肉を食べきってしまう。


 ぺろっと三つ平らげたところで、そろそろ次だ。

 冷めないうちに、ポテトを二、三枚まとめてフォークで突き刺してぱくり。ほっくほくの芋の旨味。

 そこでパリッとソーセージをかじれば、熟成された熱々の美味い脂がじゅわっと溢れ出す。

 口の中に広がるのは芋の風味とソーセージの脂、パーフェクトなコンビネーション。


 肉と脂の連戦でさっぱりしたい、と思った頃にサラダの登場だ。

 シャキシャキのレタスに水に晒した玉葱の辛みが爽やかな刺激。

 淡白なその味わいに華を添えるのは、濃厚な味のゆで玉子だ。


 そしてスープ。

 野菜がメインのあっさりかと思いきや、野菜がとろとろになるまで煮込まれたその味は驚くほどにしっかりとしている。

 それでいて繊細。お腹の中にじんわりと染み入る暖かさ。


 はっと気がつきからあげを一かじり。

 美味い。

 美味いが、その旨味を先程よりも遥かに深く感じることができる。

 俺の身体が、胃が、スープで目覚めたのだ。

 なんということだ、コース料理で最初にスープが出てくることには意味があったのだ!


 俺は涙した。先にスープを飲まずに半分も平らげてしまった自分に。

 そして残る半分をさらに味わうことのできる幸運に。


 スープ。サラダ。ポテトとソーセージ。そしてスープ。からあげ。


 おお、いざやパンも忘れてはならない。

 ふっくら柔らかコッペパン、二個。

 バターはないが、問題ない。ポテトとソーセージの旨味に、パンがまたよく合う。

 皿に残った脂まで、パンにかかれば残らない。


 そして俺は完食した。

 美味かった。

 しかし予想以上に量は多かった。二~三人前はあっただろうか。


 腹をかかえて一息つく俺の視界の端に、大皿をみんなでつつく探索士パーティの姿が映った。

 なるほど、複数人パーティを組む探索士がメインの客層なので、その量が基準になっているのか……次からは気を付けておこう。


 それにしても美味い。

 料理人の腕がいいことは疑いようもなく、言葉もでない。

 いや、言うべきことはひとつだけ。




「ごちそうさまでした……!」




『……落ち着いたか?』


 落ち着いた。

 すごく落ち着いた。


『うむ。では、これからのことだが』


 これからか……

 ひとまず、何かしらの仕事と住む場所が必要だ。ファンタジー世界なら身許が不確かでもなんとかなる、か? 住み込みならばなおよし。


 探索士になる、というのは考えさせてほしいところだ。

 なんせ、剣を持っていても俺にはこれを使う技術がない。

 魔物と戦うなんてゲームみたいだが、やられたら失うのはリアルな俺の命だ。復活とかはない。


 ……いや、天龍の力ならまた生き返ったり……


『無理だな。私でも、死の運命を覆すのは容易ではない。二度めはないと思っておけ』


 ですよねー。


『だが、探索士にはなるべきだ』


 ……ん、天龍さんまさかの進路指導。何故だ?


『魔力の溜まるところに迷宮が出来る、とあの娘が言っていただろう。

 私が封印された場所など、魔力が溜まっていない筈がない。

 つまり、私の封印はどこかの迷宮の奥にある可能性が高い。しかも、大規模なやつだ。

 お前には実力をつけてそれを踏破してもらう必要がある。

 結果として私のもとまでたどり着けないのは仕方ないが、そもそも辿り着く気がない、というのでは困るな』


 なるほど。確かに、いざ天龍を見つけても、そこまで辿り着けないなら意味がない。

 探索士を護衛に雇うにしてもおそらくかなりのお金が必要になるし、自分の身は自分で守れた方がいい。


 それに、最初はインターネットや図書館を利用して天龍の居場所を調べようと思っていたのだ。

 龍の言い伝えなどを辿ればある程度絞り込めるだろうと思っていたが、まさかの異世界ではどちらもない。


 その点、探索士なら迷宮の情報も入りやすいかもしれない。


 ただ、天龍が本当にこっちの世界にいるなら、だ。

 実は地球の方に封じられてるとかだと詰む。


『それはないな。お前とは魂で繋がっているのだ、異世界にいるならわかる。

 むしろ、お前が異世界から来たと聞いて納得した。私の封印をどう潜り抜けて自我を保ったままの魂が流れ着いたのかと思っていたが……

 異世界から次元を超えて、というなら裏口を通ってきたようなものだな』


 ああうん、つまり俺が天龍に会ったあの場所は既にこの異世界だったということか。

 ……いや、あれが本当に「場所」と表現していいところなのかどうかはともかく。


 ともあれ、そういうことなら探索士になるのが良さそうだ。

 俺が本当に魔物なんかと戦えるのかどうかはともかく、明日はまず探索士協会とやらに行ってみることにしよう。

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