今から追い付く! 忙しい人のための「天龍眼の探索学士」第61話~第79話
第61~63話
三日月党との戦いに備え、左目の天龍眼で三日月党の面々のステータスを確認するため、宿の前の喫茶店でクロードと共に張り込みをするユート。
だが、三日月党の斥候、ザイードに見つかってしまう。
しかし、ザイードはコーヒーを飲んでいたユートを故郷の南洋国家を知っている人間なのではと思い、話しかけてきただけだった。
意外にも話ははずみ、事なきを得てザイードと別れる二人であった。
そのあと、ティエナの工房においてきたユズを迎えに行くユートたちであったが、三日月党への対策として能力強化の霊薬について聞くものの、ティエナの答えは芳しくない。
試しにティエナの霊薬を口にしてみるものの、これだけでは切り札にはならない、との結論に達するのであった。
第64話
宿に戻ったユートは暇を持て余していた。
暇にしている余裕はないのだが、現状で打てる手がないのも事実。
そこで、三日月党をも大きく上回る最強の戦士であるグランノート店長に剣の稽古をお願いする。
しかし、モップの柄と鍋のふたを手にした店長に、刀を手にしたユートはまるで手も足も出ず、ついには天龍眼を開放して挑みかかる。
それすらも店長には通用しなかったが、妙に長く続いた天龍眼の効果に、ユートは何かをつかむのであった。
第65~66話
ユートが目を覚ますと、そこにはルティアがいた。
彼女に三日月党のことを話し、三日月党を倒すための協力を取り付ける。
のみならず、ルティアは「勇儀王を使って三日月党を弱体化させる」とまで言い放つのであった。
数日後、ルティアは多数の商人を集めて丁々発止の駆け引きを行う。
その目的は、勇儀王を売り込むことによって一儲けすること――と見せかけた、勇儀王ブームによる木材枯渇、ひいては木材を使ったカードを用いて魔法を使う三日月党の魔法使いを弱体化させる策だった。
第67話
三日月党との戦いに備え、様々な手札を整えるユート。
そのひとつを試しに画廊の迷宮へと向かったユートだが、ふと気づくと帰りの馬車の中であった。
迷宮に向かった記憶がすっぽりと抜け落ちて混乱するユートだったが、天龍と仲間の話から、『鳳翼一閃』と名付けられたその切り札が有効であることを確信する。
第68~70話
三日月党との決戦が近づく中、ユートはミーシャの買い出しに付き合うことになった。
その買い物の途中、真っ白な毛並みを持つ不思議な獣人の少女に出会う。
だが、その少女は天龍眼に「魔物」と映し出されたのであった。
天龍眼でステータスを読み取る前に、扇子を投げつけられたユートであったが、その一撃によって天龍眼を、そして天龍とのつながりを封じられてしまうユート。
一触即発の空気が流れるが、ココノと名乗った少女がただの獣人の子供にしか見えていないミーシャによって矛先をそらされてしまう。
封印も一時的なものであり、少女と別れた後にすぐに回復する。
そしてユートは、少女の予言に導かれた先でついに出会ったのである。
今まで探し求めてきた米に……!!
上機嫌で米を炊き、野菜炒めをおかずにそれを食べる。うまい!
涙さえ流しながらご飯を食べるユートに、ルティアのパーティの仲間、ガイウスから伝言が伝えられる。
ついに勇儀王の発売が決まり、策が効果を発揮しはじめたことを知り、ユートは三日月党との戦いを決心するのであった。
第71~73話
ユートの予想を超えた勢いで勇儀王は広まり、巨大なブームを巻き起こす。
そしてついに、三日月党との戦いの日がやってきた。
出発の直前、ティエナに引き留められるが、ユートはそれを振り切って出発する。
ついに三日月の迷宮へと足を踏み入れるユート達。
ソナーの反応を頼りに、魔物との戦闘を最低限に抑えながら深層へと踏み込んでいく。
三日月党の元へと向かう途中、単独で斥候に出たザイードと遭遇する。
各個撃破、とばかりにザイードに襲い掛かるユート達だったが、ザイードは応戦せず、三日月党を裏切ってユート達に味方する、というのであった。
第74~76話
ザイードの裏切りをいち早く見抜いたガルシアだが、ザイードを斬るべく突出したレリックに閃光弾の不意打ちをくらわせ、分断させることに成功する。
身を潜めていたルティア達のパーティも飛び出して、ついに三日月党との戦闘が始まった。
魔法使いの片方が機能不全に陥り、ザイードが裏切り、レリックが引き離された三日月党だが、それでもルティア達のパーティとクロードが全力を出して互いに拮抗するのが精いっぱいだった。
さらに押し切るべく、最後の魔法カードを使おうとする三日月党であったが、ユズとザイードの奇襲により魔法使い達を無力化することに成功する。
それでも強固な守りを発揮するガルシアを崩せずにいたが、そこへクレセントベアが乱入。三つ巴の戦いの結果、三日月党のマリアベルがクレセントベアの一撃により沈むのであった。
一方、ユートはレリック相手に防戦一方だった。
予想以上のレリックの強さに、鳳翼一閃を放つ隙を見いだせず追い詰められていたが、天龍の(無責任な)助言により活路を見出す。
それはすなわち、高速移動魔法による真上への移動――空を飛ぶこと、であった。
上空からの鳳翼一閃を放ち、ユートはレリックを一刀両断する。
さらにクレセントベアとの戦いに駆けつけようとするユートだったが、そこへ現れたのはシャリア先生と探索士協会の特殊部隊であった。
第77~79話
戦いは終わった。
三日月党の凶行は白日にさらされ、生き残った面々はそれぞれに処分を受けることとなる。
だがザイードだけは、あらかじめ協会と繋がっていたのだった。
事態は司法と教会にゆだねられ、ユート達の手の届くものではなくなった。
戦いは終わったのだ。――ユート達にとっては。
それから数日経過しても、ユズは自室にこもったまま姿を見せなかった。
命をかけての復讐が終わってしまい生きる目的を失ったユズは、生きていく気力さえ失い、虚無感にとらわれていた。
しかし、ミーシャの励ましとユートの料理に、今の仲間たちが自分にあたたかな心を向けてくれていることに気づいたユズは、過去のしがらみから一歩を踏み出すことを決意する。
こうしてようやく、ユズの中で復讐は終わりを告げたのであった。
以下、第79.5話に続く……
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☆ここまでで押さえたい人物・出来事
・鳳翼一閃
いわゆる必殺技。魔法の余波で炎が翼のように広がるさまから天龍が命名した。
あらかじめ感覚を鋭敏にする霊薬を飲んだ上で天龍眼を開放することにより、興奮状態の神経に過剰な負荷がかかり、体感神経を数倍に引き延ばすことができる。
あまりの高速のため制御が不可能なほど困難な魔法・ロケットスタートを、この状態になることで強引に制御し、そのままの勢いで抜刀術により強引にぶった斬る技。
必殺技とは名ばかりの超強引な力業のため、魔力消費、脳への負担、武器への衝撃など、様々な無理を生じてしまう。
そのかわり、その威力は驚異的。ジャベリンウルフやクレセントベアをも一刀両断する。
・勇儀王 -製品版-
三日月党の弱体化のため――という名目で、ルティアがコネを全力で使って商会に売り込み、大々的に広めたもの。ユートの予想をはるかに超える勢いでブームを引き起こしている。
ユートの作ったパイロット版とは若干の差異があるものの、ほぼそのままのルールで流通している。
・ココノ・ヴェルツカヤ
真っ白な毛並みを持つ獣人の少女――に見えるが、その正体はLv81を誇る正体不明の魔物。
天龍眼を一時的に封印する、予言じみた占術を用いるなど、現段階ではおそるべき力の片鱗をのぞかせつつもその正体は全くの謎。
・米
この世界では家畜(主に鳥類)の餌だが、ユートの飯テロにより若干だが米食が広まりを見せている。
・三日月党のその後
リーダーのガルシアは主犯として拘留中。捜査には協力的。
マリアベルはクレセントベアに受けた重傷がもとで長期入院中。
ヴォルフガング(本名ジョン)はガルシアと同じく拘留中。捜査には協力的。
ザイードは協会との取引で罪を逃れ、ラディオンを後にした。南洋国家に戻ると言っていた。
レリック、リアナは死亡。
レリックの持っていたミスリルソードは今はユズが持っている。