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23.タジ洞穴――5

 そもそも今、俺達はどれくらいの深度にいるのか……今の世界には時計もないから、時間もよく分からない。


『今の時間とか分かるか? 特にシャロ、レムあたり』

「うーん……どうだろ、分かんない。なんとなく、そのうち分かるようになりそうな気もするけど」

「時計の概念を引き継がなかったのは失敗でしたね……あ、私は普通に無理です」

『おい』


 あまりにあっさり首を横に振ったレムには一言突っ込んでおくとして。

 スキル的な体内時計か……まだ時計のないこの世界じゃ地味に重宝しそうだな。

 特に今みたいな、太陽から時間を判断できない時なんかに。


 ただスキルの修得って言っても、単純にレベルに対応してるわけじゃないからな。

 いつの間にか使えるようになってて気づいた時からステータスにも反映された俺みたいなケースもあるし。

 シャロの言うそのうちってのが何時になるかははっきりしないな。

 今回稼げた経験値がかなりの糧になるのは確かだろうが。


「――じゃあ話を戻すけど。このボス部屋っぽい扉と脇道、どっちに行く? ボクは先に脇道を見たいかな」

『まあ普通に考えれば脇道に行く方が堅実だよな』

『ボス戦後の強制移動とか再侵入不可とか、困りますもんね』

『……リーネって意外にゲーム脳なんだな』

「特に扉を先にと推す理由も無いな」

「ユイハさんに同じく、ですね」

『我も同意見だ』

「じゃあ決まりだね――お、中は割と広いね。今まで通りの並びで進めそう」

『了解』


 少し進んだシャロが振り返る。

 後を追うと確かに言う通り、これまでと同じくらいの幅の道が続いていた。

 ちなみに、少なくとも今いるところは舗装されているタイプの通路だ。


 進んでいく間、これまでのように魔物と遭遇することはほとんどなかった。

 精々後ろの方から迷い込んできたらしい牛の髑髏(スカルホーン)をユイハが一閃で葬ったくらいだ。

 数分も歩くと、さっき後回しにしたもの程ではないが装飾の施された扉が見えてきた。


『この感じなら裏ボスの心配は無さそうですね』

『……突っ込むべきなのか?』

『はっ! もしかして鍵を探すとか、面倒なギミックがある感じでしょうか!』

『…………ユイハ何とかしろ、こういう時こそお前の出番だろ』

「お前こそ私を何だと思っているんだ」


 リーネ、お前はシャロと並んで常識人だと思ってたんだが……。

 大人しい普段の印象を覆すように活き活きした様子を遠目に見ながらユイハと視線の応酬を交わす。

 シャロが扉の周りを調べていると、ふと体重を掛けた拍子にあっさりと開いた。

 特にロックなんかは無かったようだ。


 扉の向こうは少し大きめの部屋になっていた。

 まあ、戦うような広さじゃないな。

 その中央には台座があって……不思議な色合いの宝玉が安置されている。

 サイズは人の頭の大きさ程。

 他に何も無いところを見ると、この宝玉を保管しておくだけの部屋のようだが……。


『レム、これが何か分かるか?』

「いえ全く。ただ(製造者)が言うのもなんですが……特に害のあるものではないかと」

『王道的に考えるならレアアイテムか何かでしょうか』

「レムの言う事も間違いでは無いだろうし、何にせよ一度地上に持って帰るぞ――うわっ!?」


 しまおうとしたユイハが宝玉に触れると、不意に眩い光が放たれた。

 輝きの中、色を深紅に染めた宝玉は形を変えていき……炎のような色合いの刀となった。


「手に馴染む……良い刀だ」

『確かにユイハは剣士より侍って感じがするし、似合ってるんじゃないか?』

「な……!?」

『だが、随分と派手だな。人前で使うのは抵抗あるだろ』

『切り札っぽくて良いじゃないですか!』

「『お、おう』」


 何処がどう良いのか深く考えると疑問は残るが、リーネの勢いに呑まれてつい頷く。

 この部屋のイベントはこれで終わりってか?

 一応何か変化がないか調べた後、特に何も見つからなかったので引き返す。

 分かれ道のもう一方にあった大扉はシャロの見立てによれば普通に開くらしい。

 特に何も無い可能性だってあるわけだが……戦闘準備を整えると、俺達は大扉の中へ踏み込んだ。

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