2.廃墟
新シリーズ3話投稿の二話目です。
『――と、今確認することと言ったらこれくらいですかね』
「そうか」
これからどうするにせよ、一人じゃ心細いしな。誰か道連れが欲しいところだ。
そう思って辺りを見回すと、どうも出遅れたらしい。
無難そうな奴らはもうある程度まとまった後で交ざり辛い。
この状況で女子に話しかける度胸も無いが、そうすると残ってるのは……サングラス装備のドレッドヘアとか革ジャン鶏冠頭みたいな方々だし。
ならば……適当なパーティと一定の距離を保ってついて行くとか……。
ストーカー道に堕ちかけていた俺は、後ろから服の裾を引っ張られているのに気付いた。
「あ、あの……」
「ん?」
振り向くと、そこに居たのは地味な黒金のローブに身を包んだ蒼髪の少女。
当然ながら見覚えのある顔じゃない。
「私と、PTを組んで頂けませんか!」
「怪しい」
ガーン! と衝撃を受ける少女だったが、怪しいものは怪しい。
こんな訳の分からない状況で見ず知らずの男をいきなり頼る理由がない。
罠を警戒するのも当然だろう。
「候補なら他にもいるだろうに、何故俺を選んだ?」
「え?」
……聞いてなかったのかよ。
気を取り直してテイクツー。
「だから、なんで俺なんだ?」
「私のスキルに『看破』というのがありまして、人の情報を色々と見ることが出来るんです」
「へえ。まあ、お前が本当のことを言ってるって保証も無いがな」
「あうう……」
少し涙目になる少女。
確かにこれを見ると悪い事してるような罪悪感はあるけど、最初こそ慎重にいかないと。
……いや、普通に良い奴かもしれない少女を苛めるくらいなら、騙されるリスクくらい受け入れるべきなのか?
俺が迷っていると、いつしか少女は静かになっていた。顔にフードの影が落ちていて、角度の関係で表情は窺えない。
怒らせたか? 案じる俺を余所に、少女はツカツカとある二人組に近づいていった。
「【義賊見習い】シャロ・ミュートさん。あなたの『暴露』の力を借りたいのです」
「えっ? キミ、なんでボクのことを――?」
眺めていると、少女は少女はシャロと言うらしい金髪の少女を強引に引っ張って戻ってきた。
「私のステータスを暴いてほしいのです」
「べ、別に良いけど……じゃあ、ていっ!」
掛け声と共にシャロは両手を振り上げる。
スキル名唱えたりはしないのな。
……おっ?
名前:リーネ・コピノ
クラス:魔眼聖女
Lv.17
脳内にステータスが浮かび上がった。
「……【魔眼聖女】?」
「ええそうですよこの魔なのか聖なのかよく分からない謎クラスのリーネですよ信じてくれましたか!?」
「お、おう」
あー……固有仲間か。
シャロは【義賊見習い】だっけ。
今集まっている連中の中でもそんなクラスが一般的なんだろう。
……くじ運悪いことって、あるよな。
「元気出せ」
「が、頑張って」
「やかましいのです!」
とりあえずキレてしまったリーネを宥めながら、シャロと共に壁際の人が少ないところに移動する。
「……で、お前はなんなんだ?」
「ついて来ちゃ悪いか?」
しれっとついて来たのは、最初シャロと一緒にいた黒髪の着物少女だった。
まあ、折角できそうになってた仲間候補を持ってかれたら困るだろうしな。
「おい魔が――リーネ」
「……なんです?」
クラス名で呼びそうになって自重。
二文字しか発音してないにも関わらずバレたらしく、魔眼聖女は不機嫌そうに振り返る。
「コイツは何だ?」
「自分で名乗るっ!」
……俺的にはこっちの方が確実なのだが、少し露骨に失礼すぎたかもしれない。
だが、続く言葉に俺の反省は吹き飛ぶことになる。
「【剣士見習い】ユイハ・シャウス! レベルは6だ!」
6!? いや、ちょっと低過ぎないか?
これが基準ならまだ良い。
問題はリーネや、最悪俺のレベルが基準値だった場合だ。
元日本人として見捨てるなんて選択肢は無いが、だいぶ行動が厳しくなる。
「さあ名乗ったぞ! お前は何なんだ!」
「そうカリカリするなって、カルシウム足りてないぞ。牛乳飲め牛乳」
「んなっ……!」
「俺はレベル31の【ライドマスター】、リュート・ディズラスだ」
「さんじゅういち!? おいリーネ、コイツ本当に信用できるのか!?」
「は、はい~~~っ」
揺さぶられて目を回すリーネをユイハから引き離す。
……レベル差25って言うほどの感覚は無かったな。
「ちなみにボクのレベルも6だよ」
「はいはい、そうなのか。でも確かになんで俺が信用できるのかは気になるな」
「え、えっと……」
何故そこで目が泳ぐ。
……いやちょっと待て、なんか言えないような要素が俺にあるのか!?
「せせせ折角ですし、この四人で外を探索に行きませんか!? い、いつまでもこうしている訳にもいかないですし!」
「そうだな。奴についてはまた後で聞こう」
露骨に話題を逸らすな! と言いたいところだが、ユイハが乗った所為で過半数。
ぽけーっとしているシャロはカウントしないとして、この場は……引き下がるしかない、か……。