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11.モルカ台地――4

 予約ミスすいませんorz

 う……。

 最初に気付いたのはどこか安心する暖かさ。

 この感覚はエルピスの背中か。すぐ分かった。

 少し遅れて俺自身の背中に圧迫感。

 そもそも俺、今までどうしてたんだっけ……。

 とにかく起き上がろうと身動ぎすると、俺の背中に乗っている物もどいて楽になる。


「あ、リュート起きたー?」

「ふん、ようやくか」

「お前ら、二人して人の背中で腹這いとか寝苦しいだろ……」

「貴様という奴は……!」

「リュートが落ちないように身体を張ってたってのに、その言い方はヒドいなー」


 ……だんだん思い出してきた。

 確かハイオークの群れに出くわして、一応最後の一体まで仕留めたはずだが……そこで気絶したのか。

 と、俺が起きたのに気付いてかエルピスの背中の端の方にいたリーネとヘルプ――レムも近づいてきた。


「その……大丈夫、ですか?」

「ああ」

「ああ、じゃないだろう! 謝れ!」

「痛っ゛!?」


 容赦なく振り下ろされる刀。

 刀自体は鞘に納まったままだって?

 れっきとした中身がある分、鉄パイプなんかで殴られるより酷いだろう。それも二回目だ。

 流石に文句を言おうと顔を上げたところで、ユイハとの間にシャロが滑り込む。


「まーまー。リュート、脇腹に怪我してたの覚えてる?」

「お、おう。治ってるな」

「リーネが魔法で治してくれたんだよ。気絶までしたわけだし、僕らの中じゃ最初の重傷だろ? それでリーネ、凄く心配してさ」

「そういう事だったか。その……済まなかったな」

「気を付けてください。本当、怖かったんですから……!」


 珍しく強い口調で小さな拳を握りしめ俯くリーネ。

 ……なるほど、これはユイハに殴られるわけだ。


「それで、もう一つ確認する事があってさ。エルピスとレムの見立てじゃキミが倒れたのは傷の所為じゃないみたいなんだよね」

「そうなのか?」

「スキルを確認してみてください」


 レムの言葉に従いステータスを開く。

 スキルは、と……ん?

 ライドマスターの部分に子項目みたいなのが出来てる。

 追加されてるのは「乗っ取る」「乗り潰す」の二つ。

 ハイオークを操ったのが「乗っ取る」で、その身体が壊れる程の能力を引き出したのが「乗り潰す」か。

 その事を話すと、レムは少し考えるような表情をした。


「……リュートさんが倒れた原因は、スキルの使い過ぎと考えられます」

「だがエルピスにならどれだけ乗ってても限界来る気はしないぞ?」

「では、あのハイオークたちはどうでしたか?」

「あまり良くなかった。出来れば乗りたくないくらいだ」

「そうやって無理を押したのが一番の要因かと」

「そうか……」


 だが単純に考えれば、相手の戦力を奪ったうえで「乗り潰す」ことで効果的に数を減らしていけるわけだ。

 上手く使いこなせたらかなり強力なんじゃないか?


「ところでリーネ。先程の戦いで私の背後を取ったオークが何だか分かるか?」

「あまり多くは視えませんでしたが……種族名はハイドオーク。レベルは38でした」

「ハイオークより、更に上か。道理で手強かったわけだ」

「はい。これは種族の性質だと思いますが……私でも、目視できたのは攻撃の直前でした」


 まったく、厄介な奴がいたもんだな。

 俺たちのレベルが大体40弱。

 ただのオークが20後半でハイオークが30弱ってことで安定した狩りができてたが……高レベル、おまけに隠密性の高い奴が紛れてるとなると話は別だ。

 ビギナーズラックももう無いんだし、少し狩場を下げた方が良いかもしれないな。


 それにしても……乗りたい魔物には出会えないままだな。

 もちろんエルピスに不満なんて微塵もないし、エルピス以上に乗りたい魔物が現れることなんてないかもしれないとさえ思う。

 だが……。


『御主人?』

『っ!? なな、なんだ?』

『……や、ふと謎の不安を感じただけっす』

『そ、そうか』

『…………』

「どうかしたか?」

『なんもないっすよー』


 フレンドコール(念話)だったせいで動揺が思いっきり出てしまった。

 ……たまには、他の乗り心地良い魔物にも乗ってみたいかもしれない。


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