10.モルカ台地――3
「はい」
「ナイス!」
「「ギ――ガギャ!?」」
「カオスランスっ」
ハイオークの一体の背後へ回り込んだレムが、その背中を軽く押す。
丁度俺たちの進路にいた他のハイオークにぶつかって動きを阻害したそいつを、まとめて馬上剣で斬り伏せる。
ステータス上は低レベルながらも、レムのアシストは確実にオークたちを仕留めている。
リーネの魔法が炸裂し、更に群れが混乱している隙に方向転換。
再びの突撃をかけていると――背後のリーネ、そして乱戦の只中にいるレム。二人が同時に息を呑んだ。
「ユイハさん、後ろっ!」
「いけない伏せて!」
「なっ……!」
放たれた警告には一秒にも満たない時間差があり――そのごく僅かな時間に、事態は取り返しがつかない段階へ移行する。
ユイハの背後に前触れなく現れたのはどこか暗い体色のオーク。
リーネの声を受けたユイハは素早く振り向き、新手の一撃を受け止めた。
レムの警告はその直後。
ユイハの背後には武器を振り被るハイオーク。
乱戦の中、離れて戦うシャロもレムも介入できない……!
「させるかぁああッ!」
考えるより早く身体が動いた。
エルピスの背を蹴って宙に飛び出す。
騎乗時の効果が切れたか、途端に重くなった馬上剣を振るい――外した。
「な!?」
「ゴッ!?」
勢いのままに着地したのはハイオークの真上。
な、なんて乗り心地だ……不快一歩手前の微妙な感覚が俺を襲う中、両脚を首に絡ませ左手で頭を抑える。
微弱な反発を感じるが力尽くで捻じ伏せた。
そうか、これは――!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ギャァアアア!!」
俺の乗るハイオークが剣を一閃すると、別のハイオークは防御した得物ごと叩き斬られて絶叫を上げた。
同時に響いた鈍い音。
腕の骨が折れてなお、俺の乗るハイオークは息を荒げるだけ。
二体目の敵を斬った時――腕がおかしな方向に曲がった。
……コレはもう駄目だな。
意識を周囲の戦いに向けると、目に留まったのは槍を持ったハイオーク。
自分の乗るハイオークを駆り次の標的に接近、先ほどと同じ要領で飛び移る。
「ガブァ!」
「ぐッ……!」
効果が解けたか、背後から乗り捨てたハイオークの悲鳴。
次に狙うハイオークも決して侮れる相手じゃない。
いや、騎乗していない俺と比べれば格上でさえある。飛びかかる俺に反応して槍を突き出してきた。
必死で逸らした脇腹に衝撃が走り、焼けるような熱が生まれ、激痛に取って代わる。
だが――乗った。
さっきと同じ要領で操り、他のハイオークの頭を、首を、心臓を貫いていく。
脚の筋肉の限界を超えた速度で動く俺のハイオークを捉えるのは不可能。
同士討ちにだけ気を付けつつ敵の数を減らしていき……遂に最後の一体を撃破。
思わず一息ついたところで、不意に視界が傾く。
何が起きたか疑問に思うより早く、ふつりと意識が途切れた。




