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魔女の狩人  作者: 秋
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名切の過去

私がまだ6歳の頃だった。

私が人間「名切美月」として生活をしていた頃。

私の家は裕福ではなかった。むしろ、貧困であり、その日1日を生活していくのがやっとだった。

ーーその原因は、全て父親にあった。

なんの職にも就かず、酒を呑んでは、母に暴力を振るうような最低な男だった。しかしそれ以上に最低なことは、借金を残したまま事故死という、その男の人生の結果だった。罪を何一つ償うことなく、ただ死んでいく有り様に幼いながら絶望と怒りを味わったことを覚えている。いや、もしかしたらこれらの感情は後付けかもしれない。全て父親に「悪」を押し付けるための布石だったのまもしれない。

なにせ、一番の悪行を行ったのは、私なのだから。

お母さんは、父親が死んでからというもの、働き口を増やした。元々、2つ3つ抱えていたお手伝いとしての仕事を4つ、5つにまで増やし働き詰めの毎日を送った。その理由は私だということは、幼いながらにもわかっていた。お母さんは、私に常に愛情を注ぎ、いつだって私の為に行動を起こしてくれていた。そんなお母さんを、私も同じように愛していた。

そんなある日。

借金取りが住んでいたアパートに押しかけてきた。

お母さんが「お金がない」というと、そのまま母を連れて行こうとした。

お母さんは、綺麗な人だった。

今、思えば、ヤクザたちの目的はそういうことだったのだろう。

初めて見る泣きじゃくる母の姿と、奪われたくないという感情が……あの時、私から人間味を奪い去ったのだ。

瞳が焼けるように熱くなった。

気がつけば、ヤクザの男二人を見つめただけで殺していた。しかし、この時の私は殺したという感覚はなく、ただヤクザからお母さんが解放されたとばかり思っていた。

だから、嬉しくなって母に抱きつき、じっと彼女の瞳を見つめてしまっていた。数秒と保たず、母は死んだ。

一番奪われたくない、奪いたくなかった母の命は、私が見つめただけで奪い去ってしまったのだ。

それでも、残された母の死体からわかったことがあった。

最後まで母は私を抱きしめていた。

最後まで母は私を見つめていた。

最後まで母は私に微笑んでいた。

そして、最後まで母は私を愛していた。

だからこそ、私は「心臓破壊の魔眼」などという忌まわしい能力を手にして尚、今も生きている。人間としてではなく、異端者として生きている。

その目的はただ一つ。

たった一人、私を愛してくれた「母親を生き返らせる」ためだけ。

その為には……。

「そうなんですか……。名切さんのご両親も事故で」

「はい。そうなんです」

新一さんは、どこか寂しそうな瞳で俯いている。

それは私のことを想っているのと同時に、事故で亡くなった自分の両親のことを思い出しているのだろう。

もちろん。彼に本当のことを話す気など毛頭ない。

「はい。その時に思ったんです。『時間が停まってくれれば』と。そうすれば両親が助かるのではないか、と。そして私が得た能力が『静止の魔眼』でした」

最期の最期まで彼を騙し抜いて、彼を利用するまでだ。

「心臓破壊の魔眼」のことも「災厄の魔女」と呼ばれていることも。そして彼の命。つまりは「生命の根源に至る鮮血」を狙っていることも秘密。

全ては、死んだ母を生き返らせる……。

「……ために」

「え?」

何でもない、と首を横に振りながら、

気付かれないよう、指をパチンと鳴らして合図した。

『ウェア・ウルフ』

私の声に答えるように、

「WOOOOOO!」

遠くから狼の遠吠えがしたのだった。


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