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死相
「もう終わりだな……」
ガラッと玄関の戸を閉めて、外から我が家を見つめる。それから町の様子も、夜空でさえも。いやだからこそ。
ーーこれから、どうなるかはわからないのだ。死んでしまうのだから、仕方ない。
せめて今のうちに……。
「城内……」
「どこへ行く?」
「千春のこと、頼むよ」
もうどんな顔をすればいいのかわからないのだ。今、俺にとって一番大事なのは、千春でも、城内でも、鬼木でもないーー。
「名切さんに会いに行くから」
「お前は馬鹿か! ーー今、奴と会うということは死ぬーー」
肩を掴まれ、振り返ってきた俺の顔を見て、何を読み取ったかはわからない。ただ城内は、言葉を呑んだ。
俺を哀れみにも似た表情で、見つめている。そうか、俺は……。
「悲しいのか……」
知らぬ間に伝う頬の涙をサッと拭う。
そして、大嘘で笑ってやる。
「大丈夫だよ。城内……俺が心配なのは、千春だけだ。後は心配いらない。
お前も鬼木も。な?」
「意味が、わからん……! お前はさっきから何を言っているんだ!」
そんな言葉を背にして、俺はゆっくりと歩み出す。
闇に消えるように、かき消すように、
俺は彼女の元へと歩み出した。




