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追跡
「フフフ……本当に逃げ足だけは……速い」
心臓破壊の魔眼は、使用する度に、寿命が縮む。その反動は、身体にも大きな負担を与えている。
「でも、どんなに速く逃げても無駄ですよ。もう魔力の痕跡は付けておきましたから……」
先ほど、円口さんの右腕を破壊したその瞬間。魔力の痕がびっしり付いている。後はこの魔眼を持ってすれば……。
「はあはあ……時間はかけられないわね?」
胸を押さえながら、歩んでいく。
「おお、お姉ちゃん? どうしたの?」
「苦しそうじゃん! 介抱してあげようか? 俺たちが」
そうだから。
「邪魔しないでくださる?」
ただ目の前の邪魔者は、排除するのみ。
瞳に魔力を注ぎ込む。
「なんだ? ーー目が赤く。ぐわあああああああ!」
「ひい! うわああああ!」
「はあはあ。はやく……」
髪の毛を抜いて、ウェア・ウルフを呼び出す。
「急げ!」
「WOOOOOOOOO!」
一吠えして、駆け出した下僕。
その背中に倒れ込むように、しがみついて目を閉じる。
秋の風を全身に感じながら、彼のことを思い出す。
もしも……間に合わなかったら。
全てを知ってしまった彼は……身震いしたのは、寒さのせいだろうか。
ーー一刻も速く、彼の元へ行くことだけを願った。




