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魔女の狩人  作者: 秋
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魔女とのデート

「ニヒッ。まさかこんなことになるなんてなあ」

驚いたのは確かだ。だが、意外にも恐怖に感じなかったのは、あの誕生日会の彼女の笑顔があったからだろう。

とにかくーー。

「新一はいねえよな?」

街中をキョロキョロ見回す。カップルや家族連れなどの中で、自分は一人。もちろん。新一の姿もない。

ならいい。もうじき約束の時間だ……。

「フフ。お待たせしました。円口さん?」

「ニヒッ。全然」

目の前に現れたのは、名切美月だった。

パッと見、どこからどうみてもお洒落しているのがすぐにわかった。

ニヒッ。こう見えても、女の子の変化には敏感なんだぜ?

「どうして、そんなにおめかししてきたんだあ? 相手は俺だぞ」

嫌味を込めて言ったつもりだったが、

名切は透かして、

「いえ。デートですから」

と微笑む。

大人っぽい雰囲気は、同学年の女子にはなく。一瞬。ドキッとさせられる。

だが、俺は忘れちゃいねえ!

「何を企んでいるかは知らねえが、俺は、お前がマリーを殺したことを忘れねえぜ!」

「それは……そうでしょうね?」

「ああ?」

「殺したことも、してしまったことも一度たりとも忘れたことはありません。絶対に!」

彼女の瞳に憎しみが宿る。

もちろん。俺も異端者だから知っている。異端者にはそれぞれ心の傷がある。

皆、悲しみを背負っている。

この女もきっと……。

「お前は、一体何があったんだ?

ゴクリと息を呑む。

魔女の瞳が赤く染まっていた。


「ーーフフ。知りたいですか?」

そんな問いかけに何も答えられずにいた。

「私は知りたいです。あなたの悲しみを」

「俺の?」

「はい。ダメですか?」

そんなのは決まっているはずだった。

もちろん。答はNOだ。

だが……本当にそれでいいのだろうか?

この女の問いに答えることで、もしかしたら、何かが変わったりはしないのだろうか?

「ーーとにかく……場所を移すか」

今日は、秋風が強い。

じっと立ち尽くして、話すのには、ちと寒い。

「ーーいえ。お気になさらずに。誰かに聞かせられる話では、ありませんから」

「ニヒッ。それもそうだな」

自然と俺は語り出していた。

自分のことを。過去のことを。

「元々、俺は異端者だったんだ。きっと。自分が気が付くよりもずっと前から。ーー俺が赤ん坊だった頃。両親は俺を教会へ捨てた。マリーのおかげで、寂しい思いは……あんまりしなかった。でも間違いなく心に傷は付いていたと思う」

「ええ」

「そして自分が人とは完全に違うと感じたのが高校一年の時だ。あの時の俺は調子に乗ってた。地元からも『青のチーター』とか呼ばれてて、足には自信があったんだ。だからバレないと思ってたんだ」

「何がですか?」

「ーー万引きさ」

そう。あの頃の俺が信じられるのは、自分だけだった。

異端者「超人種」としての力。

それだけを信じ、他の人間のことなど何とも思っていなかった。

万引きだって、バレなきゃ犯罪だとも思わなかった。盗られる奴が悪い。

そう思っていた。

そんな時だった。

「俺は新一に出会ったのさ」

初めて奴を見た時は、驚きを隠せなかった。

万引きの現行を取り押さえられたこともある。だけど、それよりも驚いたのは……。

「あんなに悲しそうな瞳をした奴を初めて見たんだ……」

新一は、俺としばらく話して、万引きしていたことを、物を返すことで見逃してくれた。

だから俺は、今まで盗った店から、全ての商品をバレないように戻していった。そんなところを、クラスメートに見られた。

それが学校で広まって、生徒が先生俺を疑った。いや、事実なのだから仕方のないことなんだけどな。ニヒッ。

だけど、そんな時、新一が、

「ーー円口は絶対に万引きなんかしていない!」

って否定した。

ああ。大嘘さ、そんなこと。やった俺が一番わかってる。だから新一に訊いたのさ。どうしてあんなこと? って。そしたらアイツーー。

「友達だからな。俺たち。ーー円口を救うためなら、大嘘ぐらいついてやる。殴んなきゃ分かんないなら、思いっきりぶん殴ってやるよ」

って。

「そう言ってくれたんだ。ニヒッ」

「新一さん、らしいですね……?」

そうだ。新一は、大切だと思った奴を見捨てるはずがねえ!

ましてや、愛しているのなら、尚更だ。

「ーーだから、俺はお前を新一から引き離さないといけねえ!」

「新一さんの方から、くっ付いて来たらどうするんですか?」

「同じさ。ーー新一を救うためなら、大嘘だって、ぶん殴ったって構やしないさ! ニヒッ」

「フフフ。そう? ーーじゃあ、やりましょうか? 幸い、ここには人が居ませんから」

やっぱりな。最初からその気だったか。

わかってはいたさ。

だから……スッと、ポケットに手を突っ込む。

「用意してきたさ! ニヒッ」

「魔具の手袋」

これは、ありとあらゆる魔から防いでくれる異端具。

これで!

「お前の視線を防ぐ!」

赤い瞳が見つめる先は、心臓。そこを守るように手を置く。

「ーーフフ。それで防いだつもりですか!」

視線を上下左右に散らす名切。

レーザーポインターの如く、的確に急所急所を突いてくる。それをほぼ運動神経だけで防いでいく。

だがーー。

「終わりですね?」

視線がない……いや、どこか別の。

ハッとした時には、すでに遅かった。

ミラーで反射した視線が、俺の右腕を内側から潰した。

「ぐわあああああああ!」

のた打ち回りながらも、撤退するんだ! という意識があったのが幸いだった。

バッと身体を起こして、駆け出した。

新一……。

友の元へと。




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