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言えない
「おい、新一。ちょっと話があるんだが……」
もう誕生日会終わりに差し掛かったところだった。意外にも雑談が広がっていた。
そんな中、一瞬の隙を狙うように、円口が耳打ちした。
見れば、名切さんが千春と愉しげに話している。
「ーーわかった」
俺は、サッと席を立って、円口と共に外へ向かった。
「どうした? 円口」
家の前。秋の夜風が身体に染みる。そんな中、俺と違って円口は背筋を伸ばして、月を見上げていた。もちろん。いつものように、ニヒッ。と笑みを浮かべてはいるが……。
まるで別人のようだった。
「新一。お前、どこまで知っているんだ?」
やはりな。
いつになく真剣な円口の瞳。
嘘は付けない。
「全部。全部だよ」
そう。全部だ。多分、円口が思っている以上に、俺は全てのことを知っているんだ。
「全部って……じゃあ、何で!」
「うん?」
「何でこんなことしてるんだよ!」
「ーー最後だから」
「え?」
これ以上は、言いたくなかった。
「とりあえず戻るぜ。もう誕生日会はお開きだ」
「新一!」
俺は、心配してくれているであろう円口の肩を軽く叩いた。
「ありがとう」
今は、それだけしか言えなかった。




