団らん
「ーーあ、れ……?」
目を覚ますと、自分の部屋にいた。
しばし呆然としたまま、ベットから身体を起こすーーいや、突然の激痛に襲われ、起き上がれなかった。
「っ痛! 背中ーー! って、何で裸?」
どうやらまだ頭の回転がよろしくないらしい。今頃になって上半身が裸なのに気がつく。
「あれ……そういえば、俺、昨日……」
不意に記憶の中で、今まで見たことのない女の子の姿が思い浮かぶ。
「フフフ。目が覚めたみたいですね?
新一さん」
突然。声がしたので、驚いて振り向くと、足元で正座していた彼女は、
「君は! 昨日の!」
「ーーはい。名切美月と言います」
そう言って、不敵に微笑んだ。
「フフフ。どうやら、その様子だと元気そうですね?」
飛び上がった俺を見て、彼女は再び微笑んだ。
「あの、えっと……名切さん?」
「はい」
耳に残る凛とした声。それに……。
聞きたいことは山ほどあるのに、彼女の姿に目を奪われて上手く言葉が出て来ない。
「フフ。わかっています、新一さんの聞きたいことは……。今から順を追って説明します。ですから、まずは、その……」
名切さんの頬が赤らむ。そして、視線が逸れる。
ん? どうしたんだ?
「お兄ちゃん、名切さーん! ご飯だよー」
部屋の扉が開き、ヒョッコリ顔を出したのは、妹の千春だった。
「ちょっ、何やってんの! お兄ちゃん! そんな格好で!」
「えっ?」
言われて初めて、自分がパンツ一枚なのに気がついたのだった。
「ったくもう、信じらんない! お兄ちゃんのバカっ」
「あはは……はあー」
服を着た俺は、千春の後に続いて、一階の台所へと場所を移した。もちろん、俺のすぐそばでは、名切さんが「フフ」と俺たち兄妹のやりとりを見て微笑んでいる。
「とりあえず、朝ご飯にしよ」
台所の入り口ののれんを潜ると、目の前には、簡素ながらも美味しそうな朝食が用意されていた。
ご飯に、焼き魚、そしてお味噌汁に漬け物。いつも通りのものなのだが、毎日「美味しい」と思わせるだけの腕がある千春は、中々、いいお嫁さんになると思う。
俺と千春は、お決まりの席。向かい合うように、イスに腰掛ける。
「名切さんもどうぞ」
千春が、俺の隣の席を彼女に手で示す。
「えっ、私は……」
言われてみれば、テーブルの上には、三人分の食事が並んでいる。
さすが千春。俺も薦めようとは、思っていたところだ。
遠慮気味の名切さんに、俺もイスを引いて、再度、促す。
「どうぞ。千春の料理は旨いから」
「ちょっ、お兄ちゃん! もう、恥ずかしいでしょ……」
「ーーさあ」
名切さんは、俺たちに視線を配って、
「では……」
と、軽く頭を下げて腰を落とす。
そして「フフ」と微笑んだ。
「お兄ちゃん?」
どうやら俺は、彼女のこの仕草にどうも弱いらしい。
「あっ、ああ。じゃあーー」
パンと手を合わせて、
「いただきます」
久しぶりの、俺と千春以外の人が加わった食事だった。




