次へのステップ
目覚めると、そこに夏秋の姿はなかった。
「ニヒッ。どうなってんだ?」
周囲を見渡せば、ありとあらゆる物・物・物が破壊されていた。
まあ、大よその察しはついている。
あの電撃が原因だろう。
電撃が飛散して、それから……。
「っ痛!」
両手に激痛が奔る。
「そうだ。打ち抜かれたんだ、両手を」
それでハッと思い出す。
俺は両手で済んだが、新一は……!
最後のその瞬間。俺は目にしていた。
電撃が新一の心臓を打ち抜いたところを――。
「新一!」
バッと傍らで倒れている新一に、視線を送る。
すると、返事がした。
「新一さんなら、大丈夫ですよ。円口さん?」
「お前……っく!」
闇より現れたのは、名切美月だった。
そもそもあの時、俺の力では、停止ボタンを押すことは不可能だった。
にも拘らず、停止ボタンが急に破壊された。
それはどう考えても……。
「お前だろう? あの時、電撃を暴走させたのは」
「フフ。そうだとしたら?」
一体、この女が何を考えているかさっぱりわからない。
不気味で恐怖の対象であることは、間違いない。
「あの、そろそろ帰っていただきません? 私、新一さんと二人きりになりたいの」
「ニヒッ? そう簡単に引き下がると――」
「じゃあ、あなたを殺すわ」
一瞬にして、女の瞳が赤く染まる。
「っく!」
思わず目を塞ぐ。
「フフ。ああ。綺麗だわ」
不意に、女は新一の身体から流れていた血を指ですくって、じっと見つめる。
「今、私はとてもご機嫌なの? だから今なら赦してあげる」
「何を?」
「わからない? あなたがこの場から逃げることを」
正直、今すぐにでも飛び出したい。逃げ出したい。
しかし……。
「新一をどうする気だ?」
「そんなことは、どうでもいいでしょう? まあ、大丈夫。殺しはしないわ。まだ。
でも、あなたがここに残ろうとすれば、殺すわ。あなた共々」
その言葉を聞いて、救われた気がした。
俺は急いで、背を向けて駆け出したのだった。
舞台は、私たちだけになった。
だが、彼は未だ夢の中。
心臓に電撃痕があるものの、問題はないようだ。
顔色も悪くない。
そして、何より……。
「綺麗……」
彼の周りに滴る血。
あまりにも美しく、赤いその血を思わず、すくってしまう。
やっぱり綺麗……。
「新一さん、あなたは本当に愛おしい」
そして、彼を抱き上げる。
じっと彼の顔を覗きこ込む。
「夏秋……」
「大丈夫ですよ。新一さん。今日はあなたにプレゼントを頂いたので、生かしておいてあげました」
その瞬間。瞳に激痛が奔る。
「っく。今日は帰りましょう」
髪の毛を一本抜く。
そして、ウェア・ウルフを生成する。
急いで、この薄気味悪いこの研究室を後にした。




