助け!
目を覚ますと、そこは真っ白な部屋だった。壁に限らず、床。扉。そして自分の衣服までもが白に染まっている。
十字架の梁に張り付けにされていて、身体は動かせない。
「実験室……」
「目を覚ました? 明? 最後のお目覚めよ」
白衣の女が、目の前に立って、歪んだ笑顔を見せた。
「ママ……」
母の瞳の下には、相変わらず、大きなクマがあり、肌もパサパサ。髪などに至っては、白髪交じりの緑のショートヘア。いつからこんな風になってしまったのだろう?
少なくとも僕が生まれてからは、ずっとこのままだ。
「明、あなたは今日、生まれ変わるのよ」
本当に嬉しそうに、狂おしいほどに笑みを絶やすことなく、母はそう言った。
自分の中に、もう一人。別の人格があることに気が付いたのは、6歳の時だっただろうか。
幼少期から幾度となく、実験を繰り返し、そして生まれた人格。
見たことは無いけれど、感じてはいる。
彼の名前は「鬼木双士」
最近ニュースで取り上げられている殺人鬼は彼だった。
知っていたし止めたいとも思ったが、僕にそんな力はない。寧ろ、自分の夏秋明という存在がヒシヒシと消えかかっている。
そう。ママの言う通り、後少しで僕は……。
「ママ、僕のこと好き……?」
「ええ! 大好きよ! 貴方のことを愛しているわ。明」
だったら……。
そう言い掛けてやめた。
パパの時も、ママはそうだった。
「貴方のパパのことも愛していたわ。だって、私の実験の為に死んでくれたんだもの! そして貴方も! 愛していない? そんな訳がないじゃない!」
「ママ……僕にも大好きな人、友達がいるんだ。僕が消えたら、彼が僕の友達を襲ったりしないよね?」
「さあ? 私が興味があるのは、実験とその為の費用となるお金だけ。他ことは知らないわ。ーーもしこの実験が成功すれば、異端者狩り教会から多額の実験費用が貰えるわ! アハハハハハ!」
「ママ……」
僕は最後の祈りを込めて、こう言った。
「死にたくないよ……」
しかし、ママは、
「残念だわ。その答えは」
そう言って、実験開始のボタンを押しかけた。
その時だった。
「夏秋ー!」
聞き慣れた声と、
「ニヒッ?」
笑い声。
見ると、
「新一……円口君!」
友達の、二人の姿があった。




