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魔女の狩人  作者: 秋
30/71

魔女との約束……

「円口さんは、何になさいます?」

「ニヒッ。俺は……って、何やってんだ!?」

俺こと円口は先ほど「災厄の魔女」に出会ってしまった。いや、待ち伏せされたと言ってもいい。

この女は、先日新一から紹介された恋人とのことだったが、そうではない。

本当の正体は魔女。それも人間も異端者も、そして狩人ですら殺しちまうようなイカれた魔女。

そんな魔女と出会った俺は、警戒を強めているはずだった。それが今は……。

目の前に巨大なパフェが運ばれる。

これは、俺なりの作戦だ。

この巨大なパフェが運び込まれた瞬間。

喫茶店にいた客たちの視線が、一気にこちらに集まった。

これでこの女の行動はある程度、制限されるはず。

「フフ。円口さんって、甘党なんですね?」

「ニヒッ。ま、まあな」

本当は、辛党なんだけどな……。

とりあえず、味わいもせずに、クリームだらけのパフェを口に押し込んでいく。

そんな光景をニコニコしながら、魔女はホットコーヒーを口に運ぶ。

「私からのお願いなんですが……」

唐突に、魔女が話題を斬り込んできた。

思わず、スプーンの手を止める。

「何だ?」

「私が魔女だということは、新一さんには黙っていてもらえませんか?」

「何で?」

「……恋人としていられなくなるからです」

思わず目を見開いた。

コイツ、何言ってやがる?

「お前が新一に近づいたのは、新一の命なんじゃないのか?」

「もしかして、円口さん。新一さんの異端者としての能力をご存じで?」

「もう昨日の内には調べたよ」

まあ。と驚いて、口に手を当てる魔女こと名切美月に嘘はないのか。

自然な反応に思えた。それとも嘘だらけで、何が本当かわからなくなっているのだろうか。

とりあえず。

「お前は、新一のこと――」

俺が聞くよりも早く。

「愛しています。だからお願いです」

沈黙。この女を信用するには、まだ早過ぎる気がする。

「私のことは、どうか秘密にしておいてください」

頭を下げ、じっとこちらを見つめる彼女の赤い瞳。

それを目にした瞬間。口から零れた言葉は、自然と。

「――ニヒッ。わかったよ」

俺は、知らず知らずの内に、彼女の願いを聞き届けていた。


「じゃあ、ここで」

「ゲプ。あー、じゃあ」

彼女――名切美月とは、喫茶店で一時間ほど話をしてからこうして別れた。

その話の内容とは、ほとんどがどこにでもあるような雑談。

異端者だとか、狩人だとか。

そんな難しい話はしなかった。

ほんとうに16歳同士の年相応の話をしただけだった。

「なーんだ、俺の心配し過ぎだったのかな?」

別に。異端者同士が付き合っちゃいけないとか、結婚してはいけないとか。

そんな決まりは誰も決めていない。

「俺が勝手に思い込んでいただけか……」

何でだろう? じゃあ、新一には本当に恋人が出来たのだ。

アイツに幸せが訪れるそう思うと、嬉しくて仕方ない。

だからだろうか。

「約束してほしい!」

俺は振り返って、大声で叫んでいた。彼女に向かって。

「新一のこと、大事にしてやってくれよ!」

だが、彼女は振り返ることなく……。

いや、一度だけ振り返った。

赤い瞳で、フフと冷笑して。

そんな彼女の笑顔を見て、冷や汗が流れた。

「ニヒッ、ヒッ……」

なんとなく早足になる。気が付くと駆け出していた。

そして、あまりの恐怖の余り、自宅である教会の扉を乱暴に開けて急いで中へ入った。

「はあ、はあ、はあ……えっ?」

教会の中に入れば、いつもの見慣れた光景が合って、安心できるはずだと思っていた。

何なんだよ……? これはああああああああ!

「うわあああああああああああああああああああ!」

教会の中では、俺の育ての親のマリーが血を吐いて死んでいた、

教会の中も、荒れ果てた状態だ。

その時、俺は思い出す。

「魔女……ぐわあああああああああああああああああ!」

俺の絶叫は、教会の中、響き渡っていた。

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