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迷走
「馬鹿げている……」
住宅の屋根の上。誰にも気付かれないのはわかっている。
だからこそ、強めに一人ごとを口にした。
そのまま寝そべって、夜空を見上げる。今宵は満月。
先ほど、目にした時と同じだ。
「一体、何を考えている!」
何度目かになる台詞を吐き捨てる。
奴のーー紅葉新一の言い分は、こうだった。
お前は千春と仲が良い。だから喧嘩はしたくないし、殺し合いなんてまっぴら御免だ。だから一つ提案がある。
俺と友達になろう。そうすれば殺し合いをしなくていい。異端者、狩人なんて呼び合わなくていい。
友達って呼べばいい。
友達ってことは、信じ合える、信頼し合ってるってことだろう。
これで全て丸く納まると思う。
「ふざけているのか! アイツは……」
しかし出来なかったのだ。
「じゃあ、なんでお前は俺を斬らないんだ?」
「それは、今はまだ夜ではないからーー」
「ほら? もう出てるだろう?」
奴が指を指したのは、月だった。
カタカタカタ。刀を握る手が震える。
迷っているのか……。
「ッハ! 殺すに決まってるだろうが」
振り返ると、鬼木双士が立っていた。
「フン。丁度、むしゃくしゃしていた所だ」
「ッハ。奇遇じゃねえか。俺もどこぞの女のせいでイライラしてんだよ!」
互いに仲間だということを忘れ、鬼木と刀を交えたのだった。




