苛立ち
友達?
それを聞いた瞬間。彼らしいとも思ったし、ホッともした。しかしそれ以上に、苛立ちが募った。
何故、そんなことを言うのだろう?
紅葉新一を、じっと見つめる。
彼はいつものように、優しく微笑んで、手を差し出す。
その相手は、城内武。彼を殺そうとする狩人だ。
愚考であり愚行。正気の沙汰とは思えない行動に、狩人ですら混乱しているようだ。私とてそれは同じ。
「何を考えているの?」
しかし、そんなことはお構い無しに、彼は微笑む。あのズルい笑顔。
胸がキュンとなるこの感じ……苦しい。だからかもしれない。私と同じように、隠れて見ているであろう男に殺気を送る。
まあ八つ当たりに違いない。
「ッハ。やっぱりお前か」
「お前と呼ばれるまで親しくはありませんけれど……初めましてだと思いますよ? まあ貴方のことは、知っていますけど色々と」
「俺もお前を殺して『最強』の称号を手に入れようと思っていたんだけどなあ?」
ーー鬼木双士。名付きの狩人。
姿は見えない。草村に隠れたまま。
それでいて、声だけは耳元でする。
しかしわかる。距離は充分ある。
後は、姿を見れば殺せばいいだけ。
だから、悠然と微笑む。
「私だけじゃ足りない?」
「ッハ! 当たり前だろう! あの馬鹿な男も殺す! そして今、あそこで突っ立って迷っている馬鹿も殺す!」
狩人を見る。
「彼は仲間でしょう?」
「知ったことか。俺が気に入らなければ、殺し尽くすまでだ。俺が気に入るまでな」
「そう。でも忘れないで」
瞳に魔力を通す。
「貴方だけじゃないわよ? 殺せるのは」
その瞬間。鳥たちが一斉に、夕空に飛んでいく。
「どうやら消えたみたいね?」
鬼木の気配も消えた。
後は……。
「彼らがどうするかね?」
草村に隠れながら、ことの行く末を見守ることにした。




