確認
「あー、もう。どうしてこんなことに……」
隣を歩く千春は、苛立ちを隠せないのか頭をグシャグシャと掻いている。
「ーーフフ。それは、運命かもしれませんよ」
頭を撫でて宥める。
「もう、名切さん。からかわないでよおー」
上目遣いでこちらを見上げる彼女は、同性から見ても愛らしい。
「フフ。すみません」
「あー、心配だなあ。お兄ちゃん、変なこと言わなければいいけど」
「新一さんなら、大丈夫だと思いますけど……」
「そうでもないんですよ、それが」
ため息混じりに、千春は過去のことを振り返った。
小学生の頃。千春に告白してきた男の子と喧嘩したこと。
中学生の頃。少しでも帰りが遅くなると、ランニングと称して彼女を捜しに来たこと。
「もう、ホント。私のことになると、見境なくなってーーあ……」
「本当に、新一さんは、千春さんのことが大事なんですね?」
顔を紅らめる千春だが、プイッとそっぽを向いて、
「で、でも、今お兄ちゃんが一番大事なのは名切さんのことだと思いますよ!」
「え?」
不意を突かれ返す言葉がなかった。
「私、お兄ちゃんの妹を14年間やってるんだからわかります。それくらい。だからーー」
彼女が私の手を力強く握る。
「お兄ちゃんのこと、お願いします」
真っ直ぐに向けられる瞳。
十秒も耐えられなかったと思う。
彼女の瞳があまりにも、真っ直ぐで、純粋で、清らかで……私はただ。
「わかりました」と微笑んだだけだった。
そして逃げるように、彼女の手を離し、
「私が見てきます。あの二人のことを」
「え? だったら私もーー」
その言葉を遮るように、
「大丈夫です。ーー私一人で」
真っ直ぐに彼女の瞳を見つめ返した。




