驚愕
「ちは、る……?」
驚きを隠せない様子なのは、紅葉新一だけではなかった。
俺自身も驚いている。
何故、ここに……。
しかし考えてみれば、おかしなことではない。寧ろ、俺が今ここでこうしていること自体がおかしいのだ。
そっと、千春と繋いでいた手を離す。
千春がこちらを見たが、目の前の女から視線を外す訳にはいかなかった。
「あら? 遠慮しなくてもいいのに」
名切美月は「フフフ」と笑う。
「私たちも同じですから」
名切が視線を落とす。同じように、手を繋いでいた。
「お、お兄ちゃんも、名切さんも何やってるの! ね、寝てないとダメじゃない!」
「フフフ。すみません。千春さん。私も新一さんも、もうすっかり大丈夫だったので……。千春さんは、彼とデートですか?」
「いや、その、この人は……」
しどろもどろになる千春と、その様子に微笑んでいる名切。
言葉遣いは丁寧であれど、この二人の会話は仲の良い姉妹のようだ。
だが、このメンバーが集まった中で、この状況は異常だ。
殺し殺され殺そうとしている者たちが集う中。この日常の光景は異常である。
ーーわかっている。
ここに今いるのは、城内武としてではない。
異端者狩りとして。
そして目の前にいるのは、今回のターゲット。「災厄の魔女」そして「生命の根源に至る鮮血」そしてその妹。
殺気を放つ。
それに応えるかのように、名切美月から微笑が消える。
「……」
千春も何かを感じ取ったかのように、押し黙る。
一触即発。そんな言葉が似合う状況だった。
「ーー俺は」
今まで口を開かなかった新一が、ようやく口を開いた。
全員の視線が、彼へと向く。
「俺は、紅葉新一」
微笑んだ彼の視線の先は、俺へと向いた。
「千春の兄なんだ。ーー千春のこと、よろしくな?」
手を差し出す彼を、誰もが驚愕の表情で見つめていた。




