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魔女の狩人  作者: 秋
17/71

デート

「えーっと、すみません。こんな所ですけど……」

「いいえ。近場の方がいいです。まだお互いに本調子ではありませんから」

俺はなんとなく家から、すぐそばにある商店街に来ていた。

隣に並んで歩く名切さんを、チラッと見る。

シャツの上に黄色いブラウスを羽織り、ブラウン系のロングスカートを合わせている。

あんまり女の子の服装とかは、よくわからないが、そんなに背伸びをしたお洒落という訳ではないと思う。

なのに……。

「どうかしましたか? 新一さん」

「え? いや……あまりにも、その」

俺だけではないと思う。

行き交う人。男も女も関係ない。

老若男女関係なく、彼女とすれ違う度に、目を奪われ振り返る。

ジャージ姿で隣を歩く自分が情けない。

「名切さんが、綺麗だから」

「ふぇ?」

名切さんは顔を真っ赤にして、顔を逸らす。

「フフ。行きましょう」

名切さんが、俺の手を取って歩き出す。

そこへ、

「おーい! 新一! って、ええええええええええええええええええええ!?」

賑やかな、やかましい。それでいてよく聞き慣れた声がした。

顔を上げ、前を見ると、手を上げて、口をアングリと開けている円口がいた。

「よお! 円口!」

「お、お前……」

こちらから声を掛けても、アワアワとして言葉が出て来ない。

どうしたんだ?

「ーー初めまして」

円口の前に立って、名切さんが頭を下げる。

名切さんを目にするや否や、バッと俺の両肩を掴んで、

「この裏切り者おおおおおおおお!」

と叫んだ。鼓膜が破けるんじゃないかと思うくらいの大声で、耳がジンジンする。

「なんだよ、大声でーー」

「お前という奴は!」

拳で俺の胸を叩いて、突然、演説でも始めるかのような口振りで語り始めた。

「お前と出会ったのは、二年前の秋。最初は、ちょっと顔がいい奴だったから、疎ましくも思っていたさ。だけどよ!」

何故だろう。自然と道行く人の足が止まり、皆、円口の話に耳を傾き始める。

「だけどよ! お前の気さくさ優しさ。そして何より! お前のモテなささ! それが何より俺のハートに響いたんだよ! なのに、なのに! ……いや、いいんだ。俺はさあ、恋に憧れてた。そしてそれは、この世界の誰もが密かに秘めているもんよ! だけど、よお。望んで叶うもんでも実る訳でもない。選ばれし者がそれを叶えられるんだ。そして俺と同じ叶えられない者だと思っていた新一が……そっち側だったなんて!」

円口が指を差した先は、俺と名切さんが手を繋いでいた。

「あ、いや……」

離そうとしたのを、円口が俺たちの手掴んで止めた。

「いいんだよ愛を育めよ。愛し合えよ。俺のことは気にするなって……」

円口が涙ぐむにつれて、周りの人たちも瞳をウルウルさせている。

「円口、あのー……」

「いいんだよ! 何も言うな。俺たちは友達だろう!」

円口がこう締めくくった瞬間。拍手喝采が起こった。

どうも! どうも! と手を挙げて、拍手に応える円口を無理矢理連れ出して、商店街から一本外れた道にあるベンチに座らせた。

「あのなー、円口!」

「何だよ、改まって?」

足を組んで、ふんずら返る円口。

弱冠の苛立ちを込めつつ、

「何か勘違いしているぞ!」

「ニヒッ。勘違いって、お前、彼女とは付き合ってないって言うのか?」

振り返って、名切さんを見る。

「いや、その……」

付き合うとかそれ以前に。

俺たちはもう……。

重なり合った日のことを思い出して、赤面してしまう。

「ニヒッ? だろう? 俺はそういう空気が読めるんだ」

「そうなら、もっと大人しく見守っててくれよ」

「ニヒッ、ニヒッ、ニヒッ」

悪戯な笑みを浮かべた表情が、本当に円口に似合っている。

なんか憎めないんだよなあー。

名切さんもそんな彼の空気に当てられたのか。

フフ。と微笑んでいる。

「ニヒッ。ーーまあまあお二人さん。俺はそろそろドロンするんで、ごゆっくり」

サッと立ち上がって、円口は俺たちの名切さんの隣を歩いていく。

そのまま通り過ぎるものだと思っていたが、急に足を止め、

「え?」

と呟いて、呆然と立ち尽くす。

「円口?」

声を掛けようとしたものの、

「ーー行きましょう」

名切さんに手を引かれ、この場を後にした。




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