#2-1
☆☆☆☆☆
僕と工美は保健室を後にして、僕たちの教室がある北舎に向かった
保健室は南舎の1階にあるので、僕たちの所属してる1Cがある北舎3階まで少し距離がある。
このまま二人とも黙ったままの道のりには辛いものがあるので、僕は勇気をだして話題を振ってみた。
「ねぇ吉野さ・・・工美、なんで今日あんなことになったの?」
勇気を出して聞いた質問に、工美は俯いてしまった。
しまった・・・傷口に塩ぬったか!?
でも再び顔を上げた工美の表情は暗くなってはいなかった。
「それは・・・朝登校してて喉渇いたから、ジュース買おうと思ってコンビニに寄ったらあの馬面にナンパされて、何か口論になっちゃったんだよね」
あー、なるほどこの子自分の口悪いこと自覚してないな。
まあ、狼に育てられた子供は自分のことを人間だと思わない説もあるし、多分工美もそんな感じだろう。
「・・・・・・・」
またしても沈黙が訪れる
(やばいよこの沈黙の道のり・・・歩くだけでLP削られる毒沼だよ・・・,
僕のライフもう0だよ・・・)
「えと・・・っ・・・くる・・・」
しかし僕が瀕死状態になる前に、となりの工美からぼそぼそっとギリギリ聞こえる音量の声が聞こえた。
工美の顔を見ると羞恥なのからなのか、顔を真っ赤に染めて涙目で僕を見上げるというポジションだった。
(やばい、こらはやばいっ・・・)
身体中が熱くなるのがわかる、心臓が大きく波うち、顔が火照る。
赤くなった顔を見られないよう、顔を背けてしまう、でもそうしないといろいろ理性を忘れてしまいそうだった。
「そうだよな・・・お前をあんな目に合わせたやつと話したくないよな・・・そうだよな・・・」
僕が顔を背けたことを、工美は半端なくマイナス解釈してしまった
こういうときイケメンなら、さらっと慰められるのだろうが生憎イケメンでも無ければ、そんなスキルも持ち合わせていない。
しかしこのままだと工美に誤解を与えたままになってしまう。
「あっ・・・いやその、そんなこと無いよ!!工美って可愛いし、話したくないとかそんな、全然ないから!むしろご褒美だよ!!」
(なに言っちゃってんの僕ーーー!?)
空回りに空回りが重なって、とんでもないことを言ってしまった。
ご褒美って・・・、これじゃあ僕ただの変態じゃん・・・
終わった・・・僕の高校生活は初日に変態の名言を残し砕け散った。
恐る恐る工美の方を見ると、肩をプルプル震わせて、拳を握っていた。
顔は下を向き、耳は怒りで真っ赤に染まっていた。
「・・・・・」
「えっと・・・工美?さっきはごめ・・・」
謝ろうとして名前を呼ぶと、工美は右足を後ろに引き、腰を捻り、さっきまで握っていた小さな拳で、渾身の右ストレートをを僕の顔面に放ってきた。
「可愛いとかゆーーーなあぁぁぁ!!!」
「んでぃふぉ!?」
運動が得意じゃない僕が工美の右ストレートを避けれるはずもなく、まともに顔面にヒットした。
そのまま吹っ飛ばされたのはもう最悪としか言い様が無い、僕たちが所属している1Cだった。
教室の扉を吹き飛ばして、僕の身体は教室に突っ込んだ。
今度は意識を失わなかったものの、逆に今回はそれが辛かった。