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拙者は霧雨。

 休みの日に早起きをしたはいいが、やることが無く、結局は春の日差しを浴びながら自分の部屋で横になるぐらい。

 桜花も桜花でやることが無く、ごそごそと荷物を漁っている。

 上半身を起し、荷物を漁っている後姿に問いかける。

「桜花…普通上の段で寝るんじゃないの? 下の段には入りにくいと思うけど」

 何故かネコ型ロボットのように押入れの上の段で寝らずに、下の段で寝るのだ。

 しかも、押入れの前には俺が寝ている折りたたみベットが置かれてあって、下の段に入る隙間は結構小さい。

 そんなことなら、素直に上の段で寝たほうがいいと思うのだが。

「いえ、大丈夫ですよ忍殿」

 荷物を漁りながら桜花は言う。どういう基準で大丈夫なのだろう?

「よし、ありました!!」

 桜花は自分の荷物の中からお札のようなものを取り出した。

「何それ? 日本語じゃないような文字書いてるけど…」

 俺は上体を起こして桜花の握り締めているお札を見る。

「これはですね、生き紙と言いまして……ある忍法で使う道具の一つです」

「へぇ、流石忍者。その忍法やってみてよ」

 俺は何気なくそう言った。

「で、では、いきますよ」

 桜花はそう言うと、深呼吸をし、札を右手の人差し指と中指で挟み、顔の前に持ってゆく。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!!」

 おお、九字を切り出したぞ!!

 流石は忍者!!

「忍法、生き紙の術!!」

 桜花はそう叫ぶと、札を投げた。

 ひらひらと部屋を舞う札。俺たちの視線はその札を追い、終いには畳にぽて。

「今のが『生き紙の術』なのか?なんかすげーなんともない術だったなぁ」

「あれ、おかしいですね……九字間違えたかなぁ…」

 二人してお札を見続けるが、変化無し。

 桜花はエプロンを着けて晩飯の準備に入ろうとするのだが、食材が無く、買い物に行く事になった。

 桜花は忍びスタイルで街へ出ようとするので、俺は必死にそれを阻止。

 俺のシャツなどを貸して、街へ出ることに。俺はお家でお留守番。


 桜花が家を出て数分後、まだ昼飯を食べたばっかりだという事を思い出した。

 桜花の晩御飯の時間って何時からなんだろうか?

 明らかに早すぎる桜花の行動に額を押さえつつ、俺は居間でテレビを見ることにした。

 テレビでは、サスペンスもののドラマがあっていた。

 何故か普通の人っぽいおばちゃんたちが犯人を見つけていくというなんともありきたりな話で、そのくせ『7』と結構なシリーズものになっているようだ。

 ちゃぶ台に頬杖を突き、テレビを見ている。

 俺は視線を感じて後ろを振り返る。

 振り返った先には……誰も居ない。

 昨日もこんな事があったなぁ。既視感デジャヴーって言うんだっけ?

「うわ、此処で殺しか!!」

「ああ、犯人最有力候補の男が!!」

 いや、部屋に居るのは俺だけのはずだが。買い物に行っている桜花の声とは少し違う。

 俺は声のしたほうを見ると……

 其処には女の子がちゃぶ台に座っていた。

「お前……誰?」

 頭を押さえて俺は女の子に聞く。

 前にも同じようなこと無かったか?

 とりあえず、おかしいのはその女の子のサイズだ。

 携帯ゲームやテレビのリモコンほどの大きさなのである。

 明らかにおかしい。

「人にものを尋ねる時はまずは自分から!!」

 女の子はぴょこんとちゃぶ台の上で立ち上がり、飛び跳ねる。

「うぐ、ちびっ子い癖に…正論を……」

 俺は目の前に居る女の子に敗北感を抱きながら答える。

 しかし、何者かを聞く時はいいが、道を聞く時はどう聞けばいいのだろう?

 まずは自分から

『へぇーい、私はA町から来た者ですが、C町に行くにはどうしたらいいデスか〜』

 少し外の人入ってしまったが、これでは変な人である。

 何故道を聞くのに、自分の住んでる町を言うのか。

 俺は女の子の質問そっちのけで考えていた。

「こら、自分で聞いておいてその態度は何かーッ!!」

 女の子は頬杖を突いている腕をげしげしと蹴る。

 おーけー。

 まずは目の前のことから考えようか。

 今、俺の目の前には携帯ゲームや、テレビのリモコンほどの大きさの女の子が居る。

 明らかにおかしい大きさである。

 俺は『忍者』の存在は先日認めたが『妖精』の存在は認めてない。

 俺はまだしつこく腕を蹴っている女の子の襟あたりを人差し指と親指で摘み、顔の前まで持ってくる。

「こら、何をする、無礼者!!」

 ちっさい女の子の姿は…刀持った巫女さん?

 またAV女優が着てそうな安っぽい衣装だなぁ。と思いつつも、顔の前で暴れる女の子を観察する。

「で、結局は何者よ?」

「だから、人にものをたずねる時は、自分から……」

 玩具のような刀を抜刀して暴れるちっこい巫女さん。

 こいつ、今自分がどんな現状にいるかわかってないのでは?

「ほぅ…自分の立場がよくわかってないようだなぁ……」

「な、何を申す!!」

 俺はにやりと笑う。

 ちっこい巫女さんは刀の切っ先をこちらへと向ける。

「せい、喰らえ、大回転!!」

 俺はそう叫ぶとコーヒーに入れたミルクをかき混ぜる時のような手つきでちっこい巫女さんを振り回す。

「や、やめろ!!無礼者!!」

 そう叫びながらちっこい巫女さんは刀を落としてしまった。

「ん、もっとスピード上げて欲しい?」

 俺は回転をストップさせて聞く。

「ひへ…もうかんへんです……」

 多分、ちっこい巫女さんの頭の上ではお星さまとひよこちゃんが飛んでいるであろう。

「で、何者なのさ……」

 俺は三度目の質問をする。

「拙者は生き紙の術で命を吹き込まれた霧雨きりさめと申す者で……」

 くらくらと頭を回しながら霧雨というちっこい巫女さんは言う。

 生き紙って…さっき失敗した術じゃんかよ…。

「つうことは、お前元は紙?」

 俺はあのお札を思い浮かべながら聞いた。

「拙者はあの札を媒介に……」

 訳のわからん単語が出てくる。

 此処の間の台詞は中略させていただく。

「というわけで、わかったか?」

 えっへんと腕を組みながら霧雨は言う。

「ぜーんっぜんわからん!!」

 俺も負けじと腕を組みながら言う。

「…馬鹿?」

 霧雨は物凄いむかつく顔でそう言い放った。

「あーこんなのところに埃がー」

 俺は白々しく言うと、霧雨を摘み上げ、小物入れに指してあった耳掻きを手に取り、裏についてるもふもふしたもので霧雨をくすぐる。

「やめっ…ひはぁッ! 脇ッ!!」

 霧雨は悶えながら必死に抵抗している。

「もう一度、説明たのむー」

 俺は棒読みでそう言いながらも、くすぐりの手は休めない。


「へー、つまりはあのお札から出てきた式神みたいなもんねぇ」

 俺は頬杖を付いてちゃぶ台の上で息を整えてる霧雨に言う。

「ひ、卑怯者!」

 はぁはぁと肩で息をしながら霧雨はまだ言う。

「まーだわかってねぇようだなぁ」

 俺はがたんと席を立つ。

「ひぃッ!!」

 霧雨は大分びびってるようだ。

 まぁ、あれだけやりゃ当然かな。暇だからってちょいといじめすぎたかな。

 俺は酒用のちっこいコップに茶を入れて差し出す。

「ほら、これ飲めよ」

「とか言って油断させて! 毒でも、盛っているんだろう!!」

 其処まで嫌われたかー、俺。

「いや、毒なんて盛るかよ」

「さては睡眠薬か!薬で眠らせてあんな事やこんな事…拙者にする気だろう!?」

 霧雨はまた抜刀し、刀の切っ先を俺のほうに向けて言う。

「だーれがお前みたいなぺったんこ相手に変な事するか」

 俺は『ふ』と鼻で笑う。

 目の前に居る霧雨は確かにぺたんこ。

「ぶ、無礼者! 私の身体は主である桜花様をベースにしているのであって、拙者の胸が小さいとかぺったんことか、えぐれてるなんて言ったら、其れ即ち、桜花様に言っているのと同じ事だぞ!!」

 霧雨は必死に無い胸を強調しながら言う。

「お前が一番言ってはならない事を言ってると思うぞ」

 俺は確かに桜花も胸無かったなぁ…と思い出しつつ、墓穴を掘った霧雨に言った。

 霧雨と遊んでるうちに日はすっかり暗くなってきた。

 居間で大人しくテレビを見ていたが、其れも飽きて、友人にメールを打つために、六畳半の部屋に戻った。

 何故か霧雨も俺の後ろを付いてきていたが、まぁ気にする事もないか。

 俺はなれた手つきでパソコンを起動させ、これまた慣れたタイピングで文字を打つ。

「お主、唯の性格の悪い男と思っていたが、思わぬ特技があるんだな」

 パソコンの変換キー付近に座っている霧雨はそう言う。

 性格の悪いっておい。

 しかもすげージャマなとこに座ってんのな、お前。

「もしかして、やって見たいとか?」

 俺はメールを打ち終わり、クリックを押して、送信後、霧雨に聞いてみる。

「いや、そういうわけではなくてだ……」

 霧雨がそう言いかけたとき、部屋の照明が一気に落ちる。

「またかよ……」

 ブレーカーが落ちたようだ。

 此処最近、隣の家の電圧アップ工事のせいか、やたらとブレーカーが落ちる。

 俺はやれやれと腰を上げる。

「ちょ、ちょっとまて! 何処へ行くつもりだ、馬鹿者!!」

 暗闇の中で霧雨が叫んでいる。

「いや、ただブレーカーを元に戻しにさ……」

「それならば拙者も連れて行け! お主じゃ届かぬところも拙者なら!」

 霧雨は俺の答えも聞かずに手から肘、肘から肩へとよじ登ってくる。

 いや、お前なぁ。

「俺より何倍も小さいお前が……」

 俺は突っ込みたかったのだが、其れを喉元でこらえた。

 そういや桜花をベースにしているみたいだから、これぐらいはしょうがないのか。だが、ちょっと数段階パワーアップしているように思えるのだが。

 霧雨は俺の襟足のとこの髪を掴んで、鎖骨に足を乗せている。

 はぁ…最近の俺ったら何してんだろう。

 ばちっとブレーカーを上げると、明るさが戻ってきた。

 そして、電子音が色んなところで鳴っている。

「おい、明るくなったから降りろよ」

 俺は肩に座ってる霧雨に言う。

「案外此処の座り心地がいいのだ」

 そう言って動こうとしない。

 そしてそのまま桜花の帰りを待つことに。

 俺は高坂忍。忍者の主であり、肩には式神が座ってる。

 もうなにがなんだか。訳のわからない自己紹介が出来る自分が悲しい。

 にしても時間が掛かりすぎのような気もする。今度からは俺が買い物に行こうと決意し、空腹になった腹の虫とバトルを開始。

というわけでいい玩具なキャラが登場したわけで…

このシリーズもがんばって書いてゆきます!!

では、今回もお読みいただき、有難うございます!!

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