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ゲバラとカストロ ~革命は二人で始まり、一人で終わる~  作者: 相馬ゆう
不死鳥の国日本へ~日本とゲバラ編~
35/43

34話【実録】世界遊説と東洋の“遺産”(日本編・完)

日本編後日談です。

1959年9月8日。

エジプト、インド、インドネシア、そして日本……。

3ヶ月に及ぶアジア・アフリカ諸国の歴訪(世界遊説)を終え、チェ・ゲバラはハバナへ帰還した。


このわずか7ヶ月後、キューバと日本は歴史的な「日玖通商協定(1960年)」を締結することになる。


ゲバラのこの長期視察は、単なる親善訪問ではなかった。

迫りくるCIAの影と経済封鎖を予見し、米国以外の「第三世界」や「中立国」との連携を模索し、生存のための「代替ルート」を確保する極秘のミッションだった側面だったとも語られる。


当時の日本政府は、同盟国アメリカからの強烈な圧力に晒されていた。

米国は、農地改革を断行したカストロ政権を「隠れ共産主義者」と見なし、「赤化が疑われる国と親しくするな」と釘を刺していたからだ。


だが、日本の官僚と財界はしたたかだった。


条約当時、カストロはまだ「社会主義革命」さえ公言していなかった。


後にこの米国との対立が、キューバを歴史的な「社会主義宣言」へと導くことになるのだが、

――それはまだ、その後の話である。


日本はこの「政治的な空白グレーゾーン」を利用した。


「あくまで民間貿易である」


戦後の復興期にあった日本にとって、キューバの良質な砂糖と、新たな輸出市場は魅力的だったからだ。


両者の利害は一致し、東洋からの「技術」がカリブの海を渡った。


▼トヨタ(ランドクルーザー)

ゲバラが愛知県・挙母工場で目にした四輪駆動車は、軍用車両として輸出された。

米国製のジープが故障に悩まされる中、日本製の頑丈な「鉄の馬」は、泥濘のジャングルや山岳地帯を走破。後のCIAとの戦いやボリビアでのゲリラ戦において、革命軍の足回りを支えることとなった。


▼クボタ(農業機械)

大阪・堺工場でゲバラが試乗した小型トラクターや耕運機。

これらは、大規模なプランテーションではなく、土地を分配された貧しい農民たちが自力で食料を生産するための「鍬」となった。食糧難に喘ぐキューバの台所を、日本の農機が一部支えた形となる。


▼日立造船(貨物船)

広島のドックで建造された巨大な貨物船は、CIA主導の海上封鎖網に対抗する手段の一つとなった。

輸出できなくなった砂糖を積み出し、代わりに機械や物資を日本から運び込む。この海路は、閉ざされつつある西側経済との貴重な接点であった。


▼森永乳業(プラント技術)

「子供たちにミルクを」というゲバラの悲願に対し、日本は粉ミルクの製造プラント技術を提供。

医師でもあった彼が最もこだわったこの技術は、革命後の乳幼児死亡率の低下に寄与したとされる。


▼東洋紡(繊維)

兵士の軍服、労働者の作業着。

それらを自国で生産するため、日本の紡績技術とプラントが導入された。


※※※※※※※※※※


1961年、CIAが支援する傭兵部隊がキューバに侵攻(ピッグス湾事件)。

世界の終末時計をギリギリまで進めた「キューバ危機」の引き金になる事件である。


その後、米国による経済封鎖は完全なものとなり、キューバはソ連への依存を強めていく。

だが、日本との貿易ルートもまた、細くとも途絶えることはなかった。


「政治と経済は別」


そのしたたかな日本の外交方針が、孤立したキューバにとって、西側の物資や技術が入る数少ない「窓」として機能し続けたのである。


また、文化・スポーツの交流も、日本プロ野球でのキューバ人選手の活躍などが示すように、民間レベルで、現在も受け継がれてゆく。


(日本編 完)

以上『ゲバラとカストロ』日本編グランドフィナーレです。(検証はしているつもりですが、ご指摘があれば承ります。)

次の話は2月前半連載開始。

一気に最終話まで連載予定です。


予定はあらすじ通り

・モラルというジャケット~ピッグス湾事件~(二月前半予定)

・祖国を選ぶ者 死を選ぶ者~手紙~(二月中旬予定)

・ゲバラの革命、カストロの戦い

・友の死、そして愛~ ある軍曹の目の手術~


【結末に関する史実】

ゲバラを処刑した軍曹は後年、キューバの無償医療支援で視力を回復します。

殺した男を殺された本人の遺した医療が救うその皮肉で温かな結末までを描きます。


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