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ゲバラとカストロ ~革命は二人で始まり、一人で終わる~  作者: 相馬ゆう
不死鳥の国日本へ~日本とゲバラ編~
26/40

25話 幕間~家族からみた革命家~

やっぱり日本人として、日本編は思い入れでます。


カリブ海の島国が、こんなに日本をという感じです。語る前に、少し家族のエピソードいれますね。

【2017年8月6日 広島 / 平和記念公園】


セミの鳴き声が、耳鳴りのように降り注いでいる。


午前8時15分。


黙祷のサイレンが鳴り響くと、数万人の人々が一斉にこうべを垂れた。

その静寂の中で、私は父の影を探していた。


私の名前は、カミーロ・ゲバラ。


革命家「チェ・ゲバラ」の長男だ。

今年で、父の死から50年になる。


※※※※※※※※※※


私がここに来たのは、ある映画の公開に合わせたという表向きの理由もあるが、本当の目的は別にある。


隣には、妹のアレイダがいない。

彼女は小児科医だ。

この国が気に入ったのか、平和活動のために何度もここを訪れている。


「お兄ちゃんも一度は行くべきよ」


そう言われて、重い腰を上げたのが正直なところだ。

私は弁護士。妹は医師。

私たちは、父のような革命家にはならなかった。


――いや、選ばなかった――


父が世界のために命を燃やしたのなら、私たちは「日常」を守るために、法と医療を選んだ。


それに、去年――2016年の出来事も大きかった。

アメリカのオバマ大統領が、この場所に立ったのだ。


日本の安倍首相と共に。


かつて原爆を落とした国のトップが、犠牲者に花を手向けた。

あのニュースが世界を駆け巡った時、私は思った。


「これで、行きやすくなった」と。


アメリカの大統領ですら頭を下げた場所だ。

我々キューバ人がここに来て平和を祈ったところで、もう誰も文句は言えないだろう。


時代は変わったのだ。


あの歴史的な訪問が作った「空気」が、私の背中を押してくれたのは間違いない。


※※※※※※※※※※


私は胸ポケットから、古びた絵はがきのコピーを取り出した。

1959年。父がこの場所――広島から家族に送ったものだ。


『平和のために闘うには、この地を訪れるべきだ』


シンプルな言葉だ。

だが、あの父が、焼け野原から復興したこの街を見て、そう書き記したことの意味は重い。


「……カミーロさん、大丈夫ですか?」


隣にいた日本の映画監督が、気遣わしげに声をかけてくれた。

私はあいまいに頷く。


私の名前「カミーロ」は、父の親友であり、革命の英雄だったカミーロ・シエンフエゴスから取られたものだ。


飛行機事故で海に消えた、父が最も愛した男。

父は私に、その亡き友の面影を重ねていたのだろうか。


私はもう一枚、父が死の直前に子供たちへ残した手紙を思い出す。


※※※※※※※※※※


『世界中のどこであろうと、誰かに対して行われている不正を、心の底から常に深く悲しむことのできる人間になりなさい。それが革命家の最も美しい資質なのだ』


美しい言葉だ。世界中の憧れだ。

だが、幼かった私にとって、それは父を奪った呪文でしかなかった。


「パパ……」


私は革命家になんてなりたくなかった。

ただ、あなたとキャッチボールがしたかった。


あなたが愛した「カミーロ」という名を持つ息子として、もっとあなたの側にいたかった。


※※※※※※※※※※


私は慰霊碑の前に進み出た。

花を手向ける。


――58年前――


父もここに立ち、何かを感じ、そして去っていった。


家族よりも、世界のどこかで泣いている「誰か」のために命を使う道を選んだ。


「……見つけたよ、パパ」


広島の空は、抜けるように青い。

父がここに来て、「平和のために闘う」と誓った理由が、少しだけ分かった気がした。

父は、この「青さ」を守りたかったのだ。

灰の中から蘇った、この人間の強さを愛したのだ。


※※※※※※※※※※


私は空を見上げた。

そこには、ニコンのカメラを首から下げ、少し照れくさそうに笑う父と、その隣で葉巻をふかすもう一人の「カミーロ」がいるような気がした。


――旅を始めよう――


父がこの国で何を見て、何に心を震わせたのか。

その記憶を辿ることは、置いていかれた私たちが、父と和解するための唯一の儀式なのだから。

革命はかっこいいけど、子供にとってはということ書きたくなりました。

家族か。。。


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