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ゲバラとカストロ(仮)  作者: 相馬ゆう
キューバ革命M- 7-26 編
13/13

m7-26 第2話 南の村へ

8人の乗り野トレジャーボート一台でキューバ傀儡政権妥当に乗り出したカストロとゲバラ。82人いた戦士は12人の壊滅状態から事態は始まる。



朝になっても、ジャングルは明るくならない。

ただ色が増える。増えた分だけ、目が疲れる。


ラウルは歩く。膝をかばう歩き方で。見てるこっちの膝が痛くなる。

ゲバラは横につかない。少し前を歩く。振り返らない。振り返ったらラウルが患者になるからだ。たぶん。


「膝、固めるな。腫れる」


ゲバラが言う。

ラウルが頷く。痛みで顔が一瞬ゆがむ。俺はそれを見て、見ないふりをした。


ゲバラが俺を呼ぶ。

「水」


俺は水袋を投げるみたいに渡した。

受け取る指が一瞬触れた。偶然だ。気にしない。気にしたら負けだ。


ゲバラは飲まずにラウルへ回す。

ラウルが慎重に飲む。慎重なのに必死だ。必死なのが腹立たしい。腹立たしいのは、俺が同じだからだ。


「南へ行く。村がある」

「味方か?」

「……分からん。だが、行く」


ゲバラの言い方はいつもそうだ。確実じゃないのに、決める。

医者ってのは、そうじゃないと務まらないのかもしれない。


歩きながら俺は、ずっと腹の奥が熱い。

怒りだ。敗北の熱だ。

それでも、ここで黙ったら終わる。


ゲバラがが言った。

「お前は、バティスタを倒したいのか?」


問いじゃない。刺してくる確認だ。


「今回は倒す。」

俺は答えて、すぐ付け足した。軽くしたくなかった。


「でも、あいつは王様じゃない。」


ゲバラが目を細める。

ラウルが聞いてる。だから言葉を雑にできない。


「……奴隷の王様」

ゲバラが言う。


「そうだ。鎖の番人だ。椅子に座ってるだけだ」


「鎖はどこに繋がってる」


ゲバラが聞く。

こいつは原因を一段奥に置く。医者の癖だ。


俺は少しだけ間を置いた。ここで語りすぎると説教になる。説教は嫌いだ。俺は政治家じゃない。


「国じゃない」

「会社でもない」

「……仕事だ」


ラウルが眉を動かす。ゲバラは黙る。続きを待ってる黙り方。


「利益のための仕事。ちんけな利益のために、人を奴隷にする」


ゲバラが低く言う。

「CIAか」


「そうだ」


俺は頷く。


「銃より先に、紙が来る。名簿が来る。『危険だ』って紙が来る」

「それで村が死ぬ。撃たなくても死ぬ」


ラウルが聞く。

「……あの国の大統領じゃないのか?」


俺は一瞬、「あの国の大統領は興味がない」と言いそうになった。

でもそれも、気持ちいいだけの答えだ。


「大統領は忙しい」

俺はそう言った。


「忙しい奴には、見たい報告しか届かない。見たくない報告は、届かない形にされる」だから無関心になる。無関心は罪の顔をしない。だからチンケな利益が俺達を支配する。」


チェが小さく息を吐く。

ラウルが唾を飲み込む。


俺は名前を一つだけ落とした。長く説明しない。刃だけでいい。


「アレン・ダレス」


ラウルがその名を覚えようとする顔をした。


「覚えなくていい」

俺はすぐ言う。

「顔が変わっても鎖は残る。バティスタは、その椅子に座ってるだけだ」


ゲバラが、短く言った。

「鎖を切りたいんだな」


「そうだ」


その直後、ラウルが足を止めかけた。膝が限界だ。

チェが素早く腕を掴む。強い。乱暴。なのに痛くしない。


「来い」


ゲバラはラウルを木陰に座らせて、布をほどいた。

腫れてる。見ただけで分かる。ゲバラは容赦しない。


「歯を咬め」

「……うん」

「舌を切るな」


ゲバラは膝を押して、位置を戻す。戻すというより、押し込む。

ラウルが喉を鳴らして声を殺す。

ゲバラは顔を上げない。慰めもしない。ただ手を動かす。


……くそ。

こういう強さを、俺は好きになる。


処置が終わると、ゲバラは言った。

「歩ける。歩くしかない」


ラウルが立つ。ふらつく。

俺は今度は迷わず肩で押した。支えない。押す。押して前へ。


匂いが変わった。

焼けた油、古い汗、腹の空いた匂い。

村が近い匂いだ。


木が開けて、道が見えた。

裸足の小さな足跡がある。


ゲバラが一歩前へ出る。

医者として、先に見るために。


村が見えた。

家はあるのに、声が少ない。


俺は喉の奥で合言葉を転がした。


今度は叫ばない。

叫ばないまま、ここで続ける。


夜になる。今夜の夜は月見えない。南への目印がわからない。

俺は空を見上げ、月はどっちにでているかと目印だけを探していた。



次回、すこし時間を巻き戻し1986年愛煙家カストロの、場面から始まります

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