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没落伯爵令嬢の玉の輿試練  作者: 狭山ひびき


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海賊が攫った姫の宝 5

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「ねえメアリ、ル・フォール伯爵家って祖先が海軍に所属してたりするのかしら?」


 夜。

 入浴を手伝ってくれているメアリに訊ねると、彼女はアリエルの髪を丁寧に洗いながら「よくご存じですね」と目を丸くした。


「ル・フォール伯爵家の起こりは二百二十年前。当時海軍少将だった方が、近海に平和をもたらした功績をたたえられて叙爵されたのがはじまりです。その当時についての資料は、旦那様の書庫にあるのではないかと」

「へえ、やっぱりね」

「何がやっぱりなのでしょうか」


 アリエルは顎を上に上げるようにして、頭を洗ってくれているメアリの顔を見る。


「暗号よ。『海賊が攫った姫の宝』ってあったでしょ? 貴族が海賊と関係があるって言ったら、海軍に所属しているか過去に所属していたかだと思ったのよ。昔は近海に海賊がいたって聞いたことがあるし」

「なるほど」


 メアリが感心したように頷く。


「アリエル様は聡明でいらっしゃいますね」

「そんなことはないわ。こういうのは得意なのよね。弟がまだ小さいから、連想ゲームで遊んだりしてるし」

「連想ゲームですか。言い得て妙ですね」


 くすくすとメアリが笑う。

 そうでしょ、と笑い返して、アリエルは前を向いた。いつまでも上を見ていたらメアリが髪を洗えない。


(でも、昔海軍所属だったのなら、当時の情報が知りたいわよね)


 明日にでもジェラルドに教えてもらおう。

 同時に、これまでの流れならば、この三文目が示す場所も、ジェラルドとシルヴァンの思い出の場所だろうと考えられる。


(子供が遊びそうなところってどこかしらね)


 弟のルシュールの行動を思い返してみるが、ロカンクール伯爵家は貧乏なこともあり、弟の遊び場はたいてい庭か鶏小屋、あとはアリエルのあとをついてくるくらいだ。

 父は必死に借金問題をどうにかしようと、用事がなければ一日中書斎で唸っているし、おっとりしている母は遊び相手には向かない。

 そのため、ルシュールは昔からアリエルのあとをくっついて回る子供だった。


(あの子、悪戯っ子なんだけど危ないことはしないのよね。だからどこかに入り込むようなことはしないし……)


 姉のあとをついて回る弟と、兄と一緒に遊びまわる弟では行動パターンも変わるだろうから、ルシュールの行動は参考になりそうにない。


(そう言えばあの子、いい子にしてるのかしら? ジェラルドが支援してくれたから、おやつとか買ってもらったかしらね?)


 ルシュールは甘いものが大好きだ。

 けれども蜂蜜も砂糖も高いので、甘いおやつはなかなか作ってあげられなくて、可哀想な思いをさせてしまっていた。だが、暗号文を解読すれば、晴れてジェラルドの花嫁になれるはずで、そうなれば借金返済のために彼も知恵を貸してくれるだろう。


(って、そうよね、結婚……する、のよね)


 ジェラルドの様子から、アリエルが彼の中で合格点なのは間違いなさそうだ。

 ゆえに、暗号問題が片付けば、きっと正式に婚約を結ぶことになるはずである。

 彼は誠実そうだし、暗号が片付いたからお払い箱だと言って追い出されるとは思えなかった。

 ならば順当に行けば、アリエルはジェラルドと夫婦になるわけで――


「まあ、アリエル様、顔が赤いですよ? のぼせましたか?」

「だ、大丈夫よ!」


 ジェラルドとの未来を想像したアリエルは、急に気恥ずかしくなってきた。

 ロカンクール伯爵家のために玉の輿に! と意気込んでいたというのに、いざ彼と結婚するかもしれないと思うと、そわそわと落ち着かない気持ちになって来る。


 ジェラルドは紳士だ。気難しそうな顔をしていると思っていたが、よく観察していたら表情を緩めることも多いし、ふとした瞬間に笑顔を見せる。

 言動を見ている限り優しい男性で、何より誠実だと思った。


 兄であるシルヴァンとの過去だって、暗号のことだって、誤魔化すことはいくらでもできるのに正直に教えてくれたし、結婚するなら手を取り合って一緒に生きていける女性を探そうという意思もある。

 中には適当に結婚し、跡取りだけもうけて、よそに愛人を作って遊びまわる貴族も多い中、配偶者との将来を考えている彼は素敵だと思った。


 アリエルだって、結婚するなら真面目で誠実な人がいい。

 そして欲を言えば、どんな些細な事でも話してくれる人が良かった。

 その点、玉の輿狙いで参加したお見合いだが、ジェラルドはアリエルにとってとても理想的な男性だと言える。


(まずい、どきどきしてきた……)


 これまではただ暗号解読に夢中になっていたが、ふとジェラルドとの結婚生活を想像したからだろう、彼の存在をどうしようもなく意識してしまう。


 未来の結婚相手にときめいても何の問題もないだろうが――挙動不審になったらどうしようと、アリエルは余計な想像をしてしまった自分の思考を呪った。




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