海賊が攫った姫の宝 3
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「子供の頃は広く感じたものだが、大人になって入ってみると結構狭いな」
「非常通路ですからね」
地下通路の天井は、ジェラルドの身長ギリギリくらいの高さだった。
頭をこすらないよう、ジェラルドは若干中腰になっている。その体勢で歩くのは大変だろう。
天井はアーチ状になっていて、壁は地下倉庫と同じで安山岩で作られていた。
床も岩なので、靴の音が狭い地下通路の中にカツンカツンと響き渡る。
ジェラルドと一緒だからいいが、一人でここに来たら怖くて怯えてしまったかもしれない。
ランタンのオレンジ色の光と、ジェラルドとアリエルが作り出す影が揺れる。
「魚を連想させる何かがあるといいんですが」
「そうだな。……っと」
ランタンがあっても薄暗いので、壁に手を突きながら進んでいたジェラルドがびくりと肩を揺らした。
「どうしたんですか?」
「いや、手が岩のくぼみに入っただけだ。手を突いた先が急になくなったから驚いた」
「あ、本当ですね。ここだけくぼみが……あれ?」
アリエルは足を止めた。
「このくぼみ、人為的に作られていませんか?」
「うん?」
ジェラルドがランタンでくぼみを照らす。
そのくぼみはまるで、魚の頭が上を向いているような形で――
「あ!」
アリエルは手に持っていた魚の形の石とくぼみを見比べて、「これですよ」と目を輝かせた。
「形も大きさも同じです! この魚の求める先は、ここだったんですよ」
試しにくぼみに当てはめると、ぴったりと合う。
魚が立ち泳ぎをしているようなその形には違和感はあるが、こんな偶然そうそうあるはずがないので、二文目の「忘れられた魚が求める先」はきっとここをさしているはずだ。
「……驚いたな。自分で考えていたときはまったくわからなかったのに、いざ発見してみると……こういう言い方をするのは君に失礼かもしれないが、ひどく簡単に思えると言うか、すぐ目の前に答えが用意されていたんだな」
実際に、暗号はそれほど難しくないのだろうとアリエルも思う。
そして、もしかしてだが――
「魚の石があった井戸があるあたりですけど、子供の頃の遊び場だったりしますか?」
「うん? そうだな。言われてみたら兄とよく遊んだ場所だ。表の庭は客が来るから遊び場にするなと父たちに言われていて、だから裏庭で遊んでいた。兄はかくれんぼが得意で、俺は兄を見つけられたためしがなかったな」
「もしかしたら、古井戸の中に隠れていたのかもしれませんね。縄梯子がありましたから。そして、この地下道もお兄さんと遊んだ場所。暗号は、子供の頃の思い出に関係のある場所なのかもしれません」
アリエルが言えば、ジェラルドは目を大きく見開いた。
「子供の頃の……思い出の場所」
つぶやき、ジェラルドはそれからぎゅっと痛みを我慢するように眉を寄せた。彼も、この暗号に秘められたシルヴァンの思いを感じ取ったのかもしれない。
「だが、次の『海賊が攫った姫の宝』とはなんだ。海賊ごっこか何かか? そんな遊びはしたことがない」
「うーん、それはまだわかりませんが、そうですね、ひとまず海賊について調べてみましょう。わざわざ海賊と言ったくらいなんですから、まったく無関係な単語ではないはずです」
「そうだな」
少しだけ沈んだような声でジェラルドが言う。
彼は今、混乱しているのかもしれない。
子供の頃の思い出と、それからシルヴァンとこじれてしまったあとの関係と、複雑な感情がジェラルドに襲い掛かっていることだろう。
(そっとしておいてあげた方がいいわよね)
このまま海賊について調べに行ってもいいが、ひとまずジェラルドに感情の整理をさせてあげたいとアリエルは思った。
「上に上がったら休憩にしましょう。ちょうど、おやつの時間ですし」
ジェラルドは小さく笑って頷いた。
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