海賊が攫った姫の宝 2
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(うーん。どこにもないわね)
倉庫の石壁を指でなぞりながら、アリエルは首をひねる。
材質は同じなので、この地下倉庫が『忘れられた魚が求める先』である気がするのだが、これと言って手掛かりになりそうなものはない。
一つの倉庫を調べ終わって、アリエルは次の倉庫に入った。するとジェラルドもちょうど調べていた部屋を確認し終わって同じ部屋に入って来る。
「何か見つけたか?」
「いえ、これと言ってとくには」
「ここではないのかもしれないな」
「そう、ですね」
だが、他に安山岩が使われている場所はあるのだろうか。
ジェラルドと二人がかりで最後の部屋を確認したがここにもこれと言って気になる点はなく、肩を落として部屋の外に出たアリエルは、ふと、突き当りに、壁と似た色の鉄製の扉があることに気がついた。一部が錆びて赤茶色になっている。
「ジェラルド、まだ部屋があるんですか?」
「あれは違う。この屋敷が建てられて時、隣国との関係が悪かったと言っただろう? それもあり、あの当時に建てられた屋敷には地下通路が作られているんだ。要するに避難経路だな。あの扉の奥の地下通路は、当時は王都の外にまでつながっていたと聞いたことがあるが、今は道の途中で埋め建てられている」
「せっかくですし、地下通路も調べてみませんか?」
「もうずっと使われていないし、何もないと思うが……他に手掛かりもなんだ、調べてみるか」
ジェラルドが鉄の扉へ歩いていく。鍵はかけられていないらしい。
「……簡単に動くな。もっと錆びついていると思ったんだが、誰か油をさしたのか?」
扉が錆びついて動かなくなっていることを想定し、力いっぱい扉を引いたジェラルドは、勢いよく扉が開いて目をぱちくりとさせた。
アリエルが蝶番の部分を確認すると、油をさしたような濡れた痕跡があった。とはいえ、最近ではないだろう。最近ならばもっとテカっているだろうから。
(もしかして……)
今は使われていない地下通路へ続く扉に油が挿されていたのならば、あの暗号文が示す先はこの奥にあるかもしれない。何故なら、途中で埋め立てられている避難通路に誰も用事なんてないだろうから。
「暗いな。ランタンを持ってこよう。少しここで待っていてくれ」
「はい」
地下倉庫の壁には燭台があるが、今は使われていない地下通路にそのようなものは置かれていない。
光の入らない地下の暗い通路を灯りなしで進むのは不可能だ。
ジェラルドが一階に上がってランタンを手に戻って来た。
蝋燭ではなく、オイル式のランタンで、芯部分にはすでにオレンジ色の炎が灯されている。
「では行こうか。俺もこの奥に入るのは十数年ぶりだ。子供の頃、まだ兄と仲違いしていなかったころだが、二人で入って出られなくなってな。あの時は父と母にしこたま怒られた」
「意外と、わんぱくな子供だったんですね」
「そうかもしれない。よく悪戯をした記憶がある。兄との関係がこじれてからはそう言ったこともなくなったが、昔は二人でいろいろやらかした」
ジェラルドの双眸が昔を懐かしむように細められる。
五歳違いの兄シルヴァンとの関係が悪化する前は、仲のいい兄弟だったのだろうことがその柔らかな表情から伺い知ることができた。
今彼は、どんな気持ちなのだろう。
関係がこじれたまま大人になって、修復する前にシルヴァンは逝ってしまった。
もう永遠に仲直りができない。できないまま、いなくなってしまったのだ。
暗号文について、ジェラルドは口ではシルヴァンの嫌がらせだと言った。
けれども、その答えを何より知りたがっているのはジェラルドだろう。金庫の鍵なんて関係ない。兄が最後に残した暗号が、今となっては自分と兄とを繋ぐ最後のものなのだ。
(人の気持ちを勝手に想像するのはよくないかもしれないけど、そんな気がするわ)
そしてできることならば、暗号の答えを見つけた時、彼の心が少しでいいから晴れるといい。
一歩先を行くジェラルドの後姿を見つめながら、アリエルはそう思った。
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