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19.足踏み?疑惑の来訪者②

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 学内裁判の結果も広まり、ネリィへの注目も少し落ち着いた頃、サラサからそっと耳打ちされた。

「放課後、二人だけでこっそり会えないかな?」

 正直、ドキッとした。このシチュエーションにトキメくなという方が無理がある。オレが内実共に十五歳だったら、このドキドキはきっと長持ちしたことだろう。

 しかし残念。実際のオレはほぼひと回りも年上で、しかも自分がサラサの攻略対象ではないことをよく理解している。

 何より、そう言う声色ではなかったのだ。

「ハヤテ!調整してくれてありがと。ウソ吐かせちゃった……?」

「いや、カイ様も事後処理で別行動が多いから。特に何も」

「そう」

 いつかの昼休みに、生徒会に入るという話を聞いた中庭だった。オレが売店で買って来た二種類の飲み物をサラサに見せて、好きな方を選んでもらう。

「わ!ありがと、イチゴ貰うね。……んーっと、もう何か想像付いてたりする?」

「いや、想像なんてしてなかったけど。でもまあ、サラサが悩んでるなら、ネリィ様のことか?」

「あはは、凄い。なんで分かるの?」

「カイ様には知られずに相談したい、ってなると余計にな」

「うん。言いたくないというより、どう考えるべきなのか分かんなくて……一旦、まずはハヤテに聞いて欲しかったの」

 促すとサラサは、先日の学内裁判前に故郷に戻った時の話を始めた。

「夏休みに帰った時、家族の様子が変だったのは確かでね。私に心配掛けない様に、気を遣ってくれてたんだと思う。でも、そこにあの告発文でしょ?メイリー様が私に、この内容に心当たりはあるのか、って聞いて来て」

「メイリーか……」

「……私、混乱しちゃって。確かに母さんも父さんも、思い返すとおかしかったし。でも、まさかネリィ様が、って。そうしたらたまたま、ヴォイド先生が通り掛かったの」

「相手がメイリーだったからだろうなぁ……」

 『不幸の手紙』で前科のある彼女がサラサと話し込んでいて、しかもサラサの表情がいつもと違えば、気になったんだろう。

「メイリー様は、先生に話すのはちょっと、って言ってすぐいなくなっちゃって。でも私はヴォイド先生なら分かってくれる気がして、相談したの」

「それで、馬車を出してくれた?」

「……と、言うか。思い付いちゃったの。直接話を聞けば早い、って。ヴォイド先生は困った顔してたけど、一緒に行くって言ってくれて」

 つまりヴォイドは、押しに負けたということだろう。あの人も結構お人好しな所がある。外出届けなどを抜け目なく準備していたのは、流石だとも思ったが。

「家族に改めて聞いてみたら、私が王立学園に特待生として通う事で王族から報奨金が出ているはずだ、って取り立てが始まっていたらしいの。しかも、家庭に問題があれば特待生から取り下げられてしまうだろう、なんて。……セラ様がそんなこと、するわけないのにね」

「ひどいな……それで、領主の所に乗り込んだのか?」

「そんな、物騒な感じじゃないよ?せっかくヴォイド先生が付いて来てくれたから、正面から堂々と、誤解があるようなのでお話ししましょうネ、って」

 うーん、領主もさぞかし怖かったことだろう。グランド家の子息を後ろに従えて立ち向かってくるサラサの迫力は。

「領主様はすぐ謝ってくれて、元々そんなつもり無かったのに、ハーパールド商会から指示があったって言い張るの。でもこの商会、調べたらゼントラントのものだったらしくて。ヴォイド先生が調べてくれたけど、シシェロゼッタ家とは関係ないって」

 ゼントラント王国は、隣国だ。そしてオレは、『ハーパールド商会』という名にも聞き覚えがあった。

(偽ビートから、最近儲けているとかの話題で出て来た名前だ……)

「……ハヤテ?」

「あ、ああ……ごめん。妙な話だなと思って」

「でしょ?本当はヴォイド先生にも相談したんだけど、立場上直接的な調査は難しい、って困った顔させちゃった」

「まあ、それはそうだろう。サラサの実家の問題は、サラサがさっさと解決しちまったってことだろ?」

「え?――――あ、そっか!領主様とはもう話が済んでるし、ネリィ様の疑いも晴れたから……」

「そう言うこと。マノン様とミア様の告発内容の是非や、何故“勘違いして”ネリィ様を訴えたのかは、深追いが難しい。署名にあった他の告発者が新事実でも持ち出せば別だけどな」

「そう言えば私も、オリガさんに話を聞こうと思ったけど、生徒会役員が今更なんで?って言われちゃったな……」

 オリガは、生徒会関係者ではない数少ない“赤色” グループの女子生徒だ。彼女の婚約者をネリィが誘った、という告発内容だった。

「告発文の内容について、サラサの件はネリィが仕掛けたっていう話以外は真実だった。他の案件は……まあ、平民のオレを利用してるとかはこの際外からそう見えたのかもだし置いとくとして、それ以外はどうなんだろうな」

「……うん。私も少し考えたの。もしマノン様やミア様が、ネリィ様に対して思うことがあって嘘を吐いた、と仮定してね?ご令嬢であるお二人が、その……誘う、なんて品のないこと、思い浮かぶかな?」

 確かに告発内容を並べた時に、男女間の話は下世話な内容とも言える。貴族のご令嬢にその話を相談する被害者にも勇気が要るだろうし、その話をのんびり告発文に書き溜めているご令嬢側にもしっくり来ない。

 嘘だったとしても、実在の名前として出されたオリガとその婚約者の名誉がひどく傷付く訳で、事前の打ち合わせが必須だろう。どちらにしても下品な話をしないといけない。

「確かに、あのお二人だけで考えたわけじゃ……ない……のかも、な……」

 オレは、頭の中での引っ掛かりを無視出来ないまま、口を動かしていた。

「――――でしょ?せっかく、ネリィ様の疑いも晴れてザワザワもしなくなって来たけど、何だか嫌な予感がするの。終わりにしたいのに、終わりにしちゃいけないような気がして、怖い……」

「ああ、分かる。オレも気になっているし、カイ様だって今回のことの背景を気にしてる。……でもサラサ、一旦これはオレに預けてくれないか?」

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