表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/104

19.足踏み?疑惑の来訪者①

「カイ様、どうでしたか?」

「やっぱり、駄目そうだな……」

「デスヨネー……」

 屋敷でオレは、カイと一緒に項垂れていた。

 『学内裁判も終わったというのに』と言うべきか、『終わってしまったから』と言うべきなのか、今となっては難しい。

「こうなったらもう、王宮側で進めてもらうしかないんじゃないですか?」

「……そうかもな」

「その反応ってことは、やはり難しいんですか?」

「ああ。相手があのガイエン伯爵家だからな。シシェロゼッタ家側からなら、あるいは……と思うが」

「ネリィ様は、嫌がるでしょうね」

 学内裁判の結果、告発されたネリィは不問となった。そんな事実などなったんだ!メデタシメデタシ!となれば良かったが、実際はそうも行かなかった。

 マノンとミアがあの告発文を用意したことは明白で、その目的と経緯を気にしない訳には行かない。特に王子であるシズルとカイには、自分の婚約者候補を貶められたのだから当然のことだった。

 それでは次に、今度はマノンとミアを訴えて学内裁判を起こせばいいかと思ったのだが、それは叶わないことだった。

「不問としたからって、あの告発文について丸ごと追及不可になるとは……」

 あくまでも学内の秩序維持が目的で学内裁判を行なった以上、同じ話を蒸し返すのは目的とズレてしまうのだと言う。

 しかも、それをやりたいのが生徒会長と生徒会役員となると、余計に意味が分からないことになる。生徒会側から訴えて、生徒会側で鎮めるのかと。

「マノン様は体調不良でお休み、ミア様も長期の休暇届を出している。……まあそもそも、告発文の内容を告発者が全て真実だと保証したり証明する義務も、ないですもんね」

「ああ。勘違いや誤解を許さないようなルールにはなっていない。あくまでも、生徒や学内の平穏を守るための仕組みだからな。――――でも俺は、あの時不問としたこと自体に後悔はない」

「……はい、そうですね」

 限られた時間の中で、やるべきことをやった。ネリィへの不当な疑惑を早々に払拭するべきだった。仮に時間が巻き戻せても、オレ達は同じ判断をするだろう。

 ヒアリングに携わった副生徒会長なんかは、あの裁判の中で告発文について徹底的にマノンやミアへ追求するべきと思っていたようだ。けれど論点が増えれば、裁判が長期化したり、ネリィへの疑惑も長引いてしまった可能性が高く、それは本意ではないことだった。

 だから、あの学内裁判で追求し切れなかったことへの後悔はない。ただ、後日の調査がこんなに難航するとは思わなかっただけで。

 学内裁判では“赤色”グループに分けられた、告発文に名前はあるが署名をしていない人物達。これは“ネリィから被害を受けていた”とされる人間が殆どで、有志生徒のオレを含めてほぼ生徒会関係者だった。

 学内裁判以降は、当日ほぼ欠席だった“青色”グループの人間も学内で普通に見掛ける状態となっている。しかし、裁判前のように気安くヒアリングする訳にも行かなかった。

「その件は、不問で終わったんじゃないんですか?」

 ――――と、言われて終わりだからだ。

 

「色々と“詰んでる”感じは、偶々ですかね?」

「どういう意味だ?」

「マノン様達は、万が一にも追及が及ばないだろうとまで想像していたんでしょうか?だから、あんな荒唐無稽な……いや、それも全部が全部デタラメでは無かった訳ですが……」

「シズルに言わせれば、この状況は偶々運が悪かったとしか言えないらしい。マノン嬢は、自分達には責が及ばない筈と達観している様子などではなかったと」

 それは、裁判後にうっかり立ち聞きした時のことを思うと理解出来た。彼女のアレまで演技や偽りだったのなら、大した大女優だ。

「結局、泣き寝入りみたいなことですか。それでもカイ様は、王宮に行かないと行けないんですよね?」

「ああ、シズルとな。二、三日留守にする」

 王立学園とは言え、王族が全てを仕切っている訳ではない。王立学園側のルールもあれば、王族側の都合もある。

 今回の件についてシズルが宣言通りに王宮側に説明した結果、国王陛下が他の公務を切り上げて戻って来る事態になっているらしい。

 『らしい』と言うのは、書面で届いた通達の詳細については、明日カイが直接王宮に出向かないと分からないからだ。

 オレが見習いだからまた置いて行かれるのかとも思ったが、今回はキリシュとフィデリオも同様で、王族同士での話し合いになるという。

「あ、あの!カイ様」

「なんだ?」

「えーっと……」

 オレはこの一週間、何度も口を開き掛けては、言葉を飲み込んでいた。

「ハヤテ?」

「…………どうか、お気を付けて」

「?……ああ、分かった」

 情けない。

 煮え切らないオレに、カイも不思議そうな顔をしているじゃないか。

 そう思うものの、根拠のない仮説として垂れ流すには、それこそ荒唐無稽というものだ。カイは信じてくれるだろうが、万が一明日、中途半端に王宮側に伝わってしまうとしたらそれは避けたい。

 ――――マノンとミアの行動の裏には、第三者がいたんじゃないか?

 漠然と、そんな想像が濃くなっていく。

 それと言うのも、先日サラサから気になる話を聞いてしまったのが大きい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ