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16.発露!王位への想い③

 すぐに、席が整えられた。

「天気も良いんで、庭に用意してくれたようですよ」

「ああ」

 メイド達渾身のお茶とお茶菓子は、庭師のジャンとアイシーが気合を入れて整えた中庭に用意されていた。

 お茶を互いに一口飲んだところで、オレはカイの言葉を待つ。

「ハヤテの、側近試験の日程が決まった」

「――――それは、いつですか?」

 咄嗟の疑問。何故よりもまず、何時なのかが先に来る。カイの曇った表情から、嫌な予感がした。

「秋に行う、軍事演習の前だ。国王である父上が王宮に居る時期の方が都合が良いし、冬には他国を迎える行事もある。その前に側近を定めるように、とのことだ」

 軍事演習も他国を迎える冬の行事も、正直ララブのゲーム内では詳しく触れられた事がない。王立学園の生徒というだけの主人公からすれば、王宮側の予定など関係ない話なんだろう。

 オレが今思い浮かべているのは、ヴォイドに習った年中行事のカレンダーだ。軍事演習の前となるともう、ひと月もない。

「たしかに王宮でお目に掛かった時、“年内にでも”とは仰っていましたが、戯れかと……それとも陛下は、さっさとオレに見切りを付けたいんでしょうか?」

 受験する側が時期を選べるような話だった気がするが、確かに試験管側の都合があるのは理解できる。しかしそれにしても、急過ぎるんじゃないか。あるいは、『カイ王子の貴重な学園生活の時間を、側近になれないかもしれない奴とは過ごさせられない』なんて話だろうか。

「見切り?」

「ほら、今ならまだ、前に仰っていた王宮側で用意した側近候補に切り替えることも出来るかもしれませんし」

「……」

 カイが、黙ってしまった。

「…………」

「あの、」

「……いや……もしかしてハヤテは、自分が試験に落ちるかも知れないと?」

「そりゃあまあ、ハイ。受かりたいですが、一発合格出来る気がしないんで」

 ヴォイドの試験対策は有難いし、自分なりにやってやろうという気持ちもあるが、なんせ前世を含めても今までの人生で受けて来た試験とは勝手が違う。就活が一番近い気もするが、それだって参考書や模擬試験がいくつもあったものだ。

 常識問題が多いとしても、異世界転生者のオレにはそれこそが難題なのだから。

「…………」

「カイ様。そう黙られてしまうと、オレも困るんですが」

 カイが何かを考えている。パソコンで言うところ、“グルグルしてる”のような感じで、フリーズ一歩手前というところだ。何かを察してオレが導けるならいいが、生憎思い浮かぶことがない。

「そうだな……正しい言い方なのか分からずに言うが」

「大丈夫です」

「俺は王宮に公務の勉強で行くと言ったが、あれは半分嘘だった」

「……ん?ハイ……んん?」

 試験の話は何処に行ったのか。分からないが、一旦口を挟まずに待つ。

「父上から直接、叱責というか……注意を受けた。舞踏会のことや、これまでのことについて」

 言葉に迷いつつ、そのままを伝えようとしているのが分かる。カイが国王に怒られた?オレのせいなんじゃないか、と緊張せずにはいられない。

「ハヤテがまだ側近見習いなのは何故か、と」

「…………それはほんと、スミマセン」

 ほら来た。そう思ったが、カイは首を振る。

「違う。そうじゃなくて……俺が王子として、側近としての能力を見極め、必要な補助や支援をして、さっさと正式な側近にするべきだろう、というような話で」

「……えーっと?」

「父上はハヤテのことを、評価している。それなのにのんびりとしている俺に、呆れているようだった」

 国王陛下がオレを評価している?パプリカ村出身で平民の、オレを?なんでだ?

「ハヤテはもしかして、父上からの評価が分かってなかったのか?」

「いや……だって、先日直接のお話しした時も、明後日な回答しかできずで……」

「舞踏会の時のことなら、父上はハヤテの考え方に驚いただけで、否定的な気持ちはないと言っていた。従者が期待するのは自律して国を率いる孤高の王だと思っていたから、側近がいなくても他の者が補うだろう、という考え方が新鮮で驚いたらしい」

 確かに意外そうな反応ではあったが、そういうことか。国政や王業への理解が浅い奴だと呆れられてなかったのなら、ひとまず安心する。

「国王陛下がご寛大で、有り難いです。……たまたま少しカイ様のお役に立ててはいますが、学園の試験だって必死にやっても十番だし、体力無くて舞踏会本番ではほぼ役立たずでしたし……」

「ハヤテはいつも、出来たことより、出来なかったことの話をするな」

 困惑するように、カイが言う。

 言われてみて、あ、と思った。反省ばかりしか思い浮かばないのは、そう言うことなのか。

「……俺もどこかで、ハヤテのやっていることを、ハヤテ自身が謙遜しながら表現するままの価値で捉えていたのかもしれない。それではダメだと、父上に叱られた」

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