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15.再会?謎のチャラ男登場④

 手紙のやり取りをした数日後に待ち合わせ場所に行くと、その人物は親しげな笑顔を見せて、迷わずオレに近づいて来た。

「久しぶり、ハヤテ!」

 八重歯を見せて爽やかに笑う、猫目の青年。長い銀髪をポニーテール状に結んでいて、使い込まれた革のブーツに、膝が擦り切れた革のパンツ姿。

「お前、すっかり垢抜けたな。おれももう三年ぶりくらいだし、背も伸びてさ」

 その気安い話し方や、スッと距離を詰めて肩に腕を回してくる仕草に、普通なら、都会に出て雰囲気が変わっただけの旧知の仲のように感じたかも知れない。

 しかしオレは、ツッコミを堪えるのに必死だった。


『あんた、王子じゃん!』


 記憶は引き続きぼんやりしているが、それでも想像できるビートより年齢が若いのもある。しかしそれよりもっと、オレには確信があった。

 だってオレはこの顔を、スチルでも、立ち絵でも、何度も見ている。服装が違っても見間違える筈もなく、大体パプリカ村にこんな美形がいるわけがない。

「ハヤテ?どうした?」

「あ、いやぁ……」

 オレの頭は、混乱の中で高速回転を始めていた。ツッコミを入れるべきか、どうするか。

 王子が出て来たということは、オレ個人の話では終わらない何かに繋がる可能性がある。いや、ほんの僅かな可能性として、王子が実はパプリカ村で暮らしていた裏設定があるとか、そういう話かも知れないが。でも少なくとも、この人はビートではない。ビートを騙り、オレを呼び出した。

 その意図が分からない以上、ここで詰め寄った所で誤魔化されてしまうだろう。下手に疑って尻尾を隠される方が面倒だ。

 オレは覚悟を決めて、この偽ビートの話にノることにした。

「最後に会ったのも随分前だから、緊張しちゃって」

「ハハ。まーわかるけど、そんな寂しいこと言うなよ」

「うん、ごめんごめん。どっかでメシでも食べながら話そうよ」

「ああ。おれが奢ってやるよ」

 偽ビートが選んだのは、庶民的な感じの店だった。慣れた素振りで注文を済ませて、特にマナーという印象もない手付きで豪快に皿の肉やら芋やらを口にする。

 オレが王子の顔を知らなければ、

 (ビートってこんな奴だっけ?んー、そうだったかも!)

と思っていたかもしれない。

「おれは最近まで隣の国に居てさ、商会の仕事で結構稼いでるんだよ」

「それは凄いな」

「だろー?お前はどうなんだよ、王立学園なんて入ってさ」

「オレは今、カイ王子と同級生でさ」

「へー?あの、最下位に落ちた王子だろ?」

 公示のことは市民も知っていることで、ビートが口にしても不思議はない。しかしその言葉の隅に、オレは嘲りを嗅ぎ取ってしまった。

 顔に出る、と教えてもらったばかりだ。オレは役者には向いてない。しかしオレオレ詐欺に引っかかっているフリをする老人のように、一般人ながら演じ切る必要がある。

 こういう時は、下手に感情を偽らない方がいい。

「世の中でどう言われてるかは知らないけど、悪い人じゃないって、カイ様は!」

「ああ、ごめんな。知り合いのこと、悪く言われたら怒るよな」

「それだけじゃなくて。オレは今、カイ様の側近っぽいこともしててさ」

 言うべきか迷ったものの、オレ宛にわざわざ手紙が来た以上、知らない訳がないと思った。嘘ではないのだから、素直な気持ちで口にする。

「側近!ハヤテが?なんだっけ、王子様の側で雑用とかやる仕事か?」

「うーん……雑用とも言えるし、それだけでも無いって言うか……ほら、王子様が教室に居るってなると、学内平等との塩梅が難しい時があるんだよ。オレが間に入る、って言うか」

「へーえ。学内平等ねぇ……ごっこ遊びみたいだな」

「オイ」

「悪い悪い。おれにはよく分かんないからさ。でもまあ、村出身のお前が王子様付きって、エライじゃん。将来安泰だな」

 そこから暫く会話を続けるが、偽ビートからは情報を探るような素振りもない。ただただ商会の仕事の愚痴やら、クラスに可愛い子はいるのか、最近自分は女にフラれて、みたいな話が続くだけ。

「ハヤテは元々、王族や貴族に興味があるなんてタイプだったか?」

「いや、そういう訳じゃ無いけど。なんか、成り行きもあって。……必要とされるなら、応えることで見えて来ることもあるんじゃないかと思ったんだよ」

「なるほどな。でも結構、辛いこともあるんじゃないか?」

「まあな。失敗は多いし、知らないことばっかりで勉強中だ」

「そうだよなあ。おれも貴族相手に売り方間違えて、こないだ大損しちまったし」

 偽ビートは、オレを労るような言葉や、ともすると直ぐに自分語りを始めてしまう。

 なんらかの要求が出て来るんじゃないかと内心では身構えていたが、お腹も膨れて話にひと段落が着くまで、何もなかった。

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