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13.謁見!王宮と舞踏会②

 まだ早朝ではあるが、王宮には無事、学生証を提示しながら中へ入れた。既に昨夜の内に内装は整えられているが、人がいない状態で一旦確認しておきたかった。

「貴方は、ハヤテさんですよね?」

「え?」

 突然、使用人より身なりの良い、長身の男が話し掛けてきた。190センチはありそうだが、シュッとしていて大柄とは思わなかった。顔も整っているが、ゲームでの見覚えはない。

「私は側近をしております、ミュジカ=スラーと申します。カイ様の側近見習いになられたというお話しで、聞いておりまして」

「ミュジカさん……よろしくお願いします」

「今日の舞踏会、学内平等の精神を体現した参加者割合となっているとかで、国王陛下も大変興味を示して居られます」

「陛下がっ?」

 側近と言うが、周りに王子の姿はない。

どの王子の側近なのか気になったが、それどころでは無い話が出て来た。

 ――――舞踏会に、国王が出てくる?

これもまた、ゲームにはなかった展開だ。

 後継者を決めていないこの国の現状では、国王が実権を強く持つ。それはつまり、国王が決めることが多いため、めちゃくちゃ忙しいということだ。

ゲームでも王宮でのイベントは幾つもあるが、実際に王が居ることを明示されたのなんて、エンディングの結婚式くらいだったと思う。

「――――なるほど。国王陛下の立場については、理解されているようですね」

「学園主催の舞踏会ですし、ご多忙な陛下には珍しいことかと思いまして」

「それだけ王宮側は、カイ様の様子を気に掛けているんですよ」

 それは、生徒会役員としてカイが積極的に動いたから、国王が出てくることになった、ということか?

ミュジカのにこやかな話し振りから、いい意味のように受け取れるが、何処か底の知れない感じが警戒心をくすぐって来る。

「そんなに緊張しないでください。――――準備の邪魔をしてしまいましたね。来賓も多くいらっしゃいます。どうか貴方も楽しんで」

 気になることは多いが、もう少しで他の生徒会役員や有志のスタッフが着いてしまう。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

深追いは諦めて、オレは精一杯の社交辞令スマイルだけで返した。

 一瞬『国王が来る』という情報で思考停止しそうになったが、手元のメモに目を落とし、深呼吸した。

国王のことは、余裕が出たら考えよう。優先順位を上げたところで、今からロクな対策は打てない。

 まずは、今日の舞踏会を無事に開催すること。カイが、生徒会役員として、王子として、しっかりと参加できるようにサポートするのが第一優先。

 オレは、スタッフが使う裏方用の控え室から、ダンスホールの中央まで、想定していた配置や予定と照らしながら誤差を確認しに歩き回った。


 カイが受付に現れたのは、予定よりかなり早い時刻だった。盛装もヘアセットもきちんとしており、普段の標準的な制服とか、屋敷でも割とシンプルな服ばかりなのを思うと、ギャップがすごい。

まるで、乙女ゲームの王子様のようだ。流石に未だマントは着けていないようだが。

「どうしたんですか?こんなに早く」

「お前が予定より早く屋敷を出たからだ。何かトラブルでも?」

 違和感は服装のせいかと思ったが、珍しく表情が硬いというか、どこか不機嫌に見える。

「ああ、すみません。ただの心配性で、色々確認したかっただけなんです」

ヘラッと笑うと、カイの眉間の皺が深くなった。

「ハヤテ……俺が頼りないのは分かるけど、せめて報告くらいしてくれ。昨日も、貸し出しの点検や天候の確認で遅かったんだろう?」

「いやあの、すみません。でもホント、オレのは勝手にやってることだし、カイ様や生徒会の皆さんの予定には影響しないことなので」

「ダメだ。ハヤテは俺に、自分の側近の仕事ぶりも分からないような王子で居ろと?」

 カイの厳しい表情に、思わず息を呑んだ。

 この真面目な王子には冗談なんてなく、表情も声色も正直な感情そのものだ。

「ハヤテは確かに、俺よりも経験があって、知っていることも多いんだろう。それを頼りに思ってもいるし、助けられてもいる。でも、俺や生徒会のために動いてくれているそれは本当に、ハヤテにしか出来ないことなのか?」

「カイ様……」

「――――受付開始の時間だな。女性用控え室側はネリィとサラサが対応している。ハヤテは此処で、座って受付を」

「え、でも――――」

「各担当者への伝達役は、俺の方で手配する。そんな顔色であちこち行かれる方が心配だ」

 ロッテにも、朝から顔色を指摘された。寝不足くらい、十代の体だしなんとかなると思ってみたが、確かにパフォーマンスは落ちているのかも知れない。

「その書き付け、預けてくれるな?」

「――――はい。すみません、よろしくお願いします」

オレがいちいちメモを用意していることも、カイは把握しているようだった。自分用の汚いメモだが、言われるままに差し出した。

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