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02.面倒!スクールライフ①

 少しでも効率を上げるため、頭の中に散らばっているララブの情報を書き出すことにした。一応思い出しながら絵も描いてみるが、とても人探しには使えないような画力だ。というかこの画風は、前世のオレの画力のままだと気付き、ガッカリするしかない。


 まずは主人公、サラサ=アクライネ。

 平民出身だが、王立学園の入試で王族や貴族以上の成績を出し、特待生として入学する。

 読書が趣味で、好成績もその影響。王立図書館の司書になる夢を持っている。

 最初のビジュアルは垢抜けないが、イベントをこなすと見た目が変わっていく。

 身分制度がある世界観で、女性の教育があまり進んでいない中で奮闘して来たからか、王子相手にも遠慮の無い態度を取る勝気さがある。また、困っている人を見捨てない優しさと、なんとか知恵で解決しようとする気丈な性格。

 今日の、カイを差し置いてヴォイドと去っていった状況を思い出しても、性格はゲーム通りと思っていいかもしれない。


 セラ=ヒーリス。

 国の第一王子で、王位継承順第一位。既に学園は卒業しており、普段は公務を行なっているらしい。

 今日の入学セレモニーには不在で、祝辞は代理で学園長が読み上げていた。

 王立学園の特待生制度について現在の形に改革したのもこの王子で、主人公にとっては『あしながおじさん』的な関わり方をする。

 普段学園内にはいないため、定期的に文通で交流するのだが、穏やかな文面にたまに独占欲が見えるなどで、ファンの間では腹黒キャラ扱いされていた。

 紺青の髪を襟足くらいで整えていて、クラシカルなスーツ姿で現れることが多い。


 シズル=ヒーリス。

 国の第二王子で、生徒会長。入学セレモニーでも壇上で異彩を放っていた。

 金髪の長い髪を下ろしていて、制服姿以外にも、演習授業での騎士姿や、王子の正装姿など、特に衣装パターンが多い。ゲームの広告でも一番目立つ位置に居て、雑誌で表紙イラストが描き下ろされたりしていた。

 王位継承順が上位である兄王子をライバル視しており、自分にも他人にも厳しい言動が多いが、主人公に徐々にデレていくクール系キャラだったはず。

 婚約者候補が学園内に複数いて、主人公に色々してくるライバルにはシズル関係が多かった。


 ヴォイド=グランド。

 主人公のクラス担任で、教師にしては異様に若い。有力な貴族の跡取りで、社会勉強も兼ねて教師として教壇に立っているらしい。

 出自の良さと優秀さ、人当たりの良さで、研究職や後進の教育など、いろいろ期待されるが断りきれず、地味にストレスを溜めている。

 婚約者がいないことと、立場によりモテるのだが、本人はあまり恋愛に興味がない。

 穏やかで優しいが、頼りないところもあり、しっかり者の主人公が支える感じのエピソードがあったはず。

 烏の濡れ羽色といった風情の黒髪は少しウェーブがかっていて、瞳は真紅の色をしている。定番の眼鏡キャラだ。


 ディノ=ハウザー。

 主人公と同郷の幼馴染で、平民出身。最初から好感度MAXな感じで、初恋の相手である主人公を追いかけて学園に入学して来たが、クラスが別。

 兄貴肌で情に厚く、体格もガッシリしていて力がある。

 何かあった時に主人公の相談相手となることが多く、ルートによっては恋愛相談までされる、哀れな感じもある愛されキャラ。

 妹が悪徳貴族に嫁入りさせられそうになり、主人公と立ち向かうエピソードがある。


 カイ=ヒーリス。

 主人公と同級生の、この国の第四王子。

 暗めの無口キャラで、考えていることが分かりにくい。真面目で大人しく、平民である主人公にも最初から親切に接し、図書館で過ごすエピソードなどがあった筈。

 ただ大人し過ぎて、「もっと早く言えばよかった」と前置きするセリフが多く、主人公からもツッコミを受ける始末。

 たしか入学前に王位継承順位を弟に抜かれたとかで、手の焼ける放って置けない系キャラだったような。その割に王子として育ちが良いせいで、ダメさにもあまりパンチがなく、相対的に人気最下位という印象が強い。

 背中までの紺青の髪を緩く一つに括っており、服装は標準的な制服姿が殆ど。王宮のパーティにも参加しないため、王子なのに正装姿が最後の最後まで出てこなかった。


 ――――メインの攻略対象は、これくらいか。

 隠しキャラや他の王子も出て来た気がするが、学園ではあまり見掛けない人物だったはず。

 唯一絡みがあったカイには少し思い入れが出来たからか、書き出した情報に同情心が募る。いい奴ではあるんだが、他の攻略対象に比べて、引き立て役という印象が否めない。

 書き出した情報は、当たり前だが主人公との恋愛目線の内容が多く、平民であるオレの人生を考えるために何が役立つかは判然としない。情報収集とアクションを考えると、三年間は長くはない。

 主人公の卒業式や、結婚式も見た記憶があるが、あくまでも攻略後のエピローグでしかないし、ゲームでの最終イベントは、三年生であるシズルを送り出す卒業式だったような気がする。

 それであればゲームだと気付いているオレの運命も、一年が終わる頃にはどこかに向かっている可能性があるかもしれない。

 王子が攻略対象なこともあり、サラサの選択により国政が影響を受けることがある。国政によっては、ぼやっとした故郷があるだけのオレの人生にも影響が出るはず。

 少しでもマシな将来を目指すなら、この一年に重きを置くべきだろう。

 ララブではルートによって、起きるシナリオと起きないシナリオ、内容が変わるものがある。

 全ての選択肢を覚えているわけではない以上、サラサの動向について邪魔しない程度に探っていかなくてはいけない。

 これは正直、ハードルが高い。

 なにせ主人公は、モテる。

 別に設定として『モテモテ』というわけじゃないが、良くも悪くも人が寄ってくるため、無理に近付くと、攻略対象から排除される危険がある。オレが平民の男子生徒というだけで、恐らくシズルやディノに目を付けられてしまう。

 慎重さは忘れずに、まずは無理せず出来る範囲の行動で、どの程度情報収集できるかを探っていくしかない。


 教会からの鐘の音が、朝焼けが消えた青空に響く。寮ではこれから、朝食の準備や清掃など、何かと忙しい時間になる。

 考えたい事は多いが、手を動かしながら進めるしかないかと、ノートを閉じる。

 軋むドアを後ろ手で閉め、雑巾が入ったバケツを持ち上げた。

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