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09.学べ!課外授業で側近見習い④

 ララブでは、当然ながら側近について深掘りするようなシナリオはなかった。王子と主人公の行動に対し、邪魔したり、保護したりといった調整役なだけで、主人公の恋愛や将来の選択にとってクローズアップされるようなものではなかった。

 つまり、情報がない。

王宮で側近候補が学ぶことや試験については、王子にはあまり細かく教えられない。王子は王子で覚えないといけないことがあるため、当たり前のことだった。カイを頼れないとなると、王宮で働いていたメイド達の顔が浮かぶが、彼女達も自分の業務以上には分からないだろう。

「学ぶ方法は、いくつもある……」

 そう言っていたのは、シズルだった。

学ぶ、となれば、あとは学校か。

オレはふと、ヴォイドの顔が思い浮かんだ。

貴族でもあるヴォイドなら、何かちょうど良い資料を持っていたり、ヒントをくれるんじゃないか。

前世でも、分からないことを一人で考えているのは時間の無駄だと教えられた。詳しそうな人間に、失礼がないように相談する方が早い、と。


 オレは翌日の放課後、ヴォイドを呼び止めた。

「先生、ちょっと相談があるんですが」

「ハヤテ君。どうしました?」

 カイの側近見習いとなったこと、試験が控えていることを相談してみる。

「――――という訳なので、何か参考になる資料とか、側近に詳しい人とか知りませんか?」

「なるほど。ここ最近寮を出たと言うのも、カイ様の側近見習いになったからだったんですね」

普段は君呼びなのが、様呼びに変わっているのに気付く。

「側近試験を今年中に受験したいということなら、私が力になりましょう」

「先生が?」

「明日の放課後、指導室Aに来てください」

 少し悪戯な表情で笑うヴォイドに首を傾げるが、ゲームの設定上信用しても問題ない筈だと考え、オレは大人しく明日の放課後を待つことにした。


 指導室Aには、意外な先客がいた。

「あれ?ハヤテも?」

小規模授業でも使う、九席しかない特別教室には、サラサがいた。

一応教室の札を確認するが、間違いではなさそうだ。

「お二人とも揃ってます、ね、っと」

「おっと!」

 ヴォイドもやって来たが、重そうな箱を抱えてフラついているのを見て、思わず手が出た。

しっかりした作りの箱自体も重いが、中身は紙類っぽい印象だ。紙って重いんだよなぁ。

「ありがとうございます。そこの机に一旦置いて貰えますか」

「ハイ……ッ」

 置いた箱を眺めると、中身についての札が貼ってあり、どうやらヴォイドの私物らしいことが伝わってくる。

「すみません、ついまとめて持って来たら量が……」

「先生、そちらは?」

サラサが、興味津々という風に言う。

「順に説明しますね。まずは挨拶しましょうか。どこでも良いので、ハヤテ君も座ってください」

 オレが席に着くと、ヴォイドは礼をし、話し始めた。

「まず先に、この授業の目的を確認したいと思います。サラサ君は、生徒会での仕事を円滑に行うため、貴族社会について実践的な部分を学びたい。一方ハヤテ君は、側近試験を受けるため、必要な知識を習得したい。……という話で、合っていますか?」

「ハイ!よろしくお願いします」

 サラサが元気に相槌を打った。

なるほど、たまたま同じタイミングでヴォイドに頼ってしまったため、まとめて放課後に時間を取ってくれたという訳か。

「試験対策をお願い出来るなら有難いです。でも、側近試験については教本もあまりないと聞いたんですが」

「そもそも側近って、試験があるんですね。王室に関する本は結構読みましたけど、知りませんでした」

「ええ。側近候補は王宮内で育って、学園入学の頃には見習いではないことが多いですから、あまり外では知る機会もないですね。たまたまですが、僕はセラ様の側近候補だったんです」

「「え」」

 サラサと声が重なった。

第一王子のセラは、確かにヴォイドと同年代くらいかも知れない。

「色々あって結局側近にはなりませんでしたが、試験には受かっていたので、参考にはなると思います」

「ありがとうございます!」

「よかったね、ハヤテ」

「側近の知識は、貴族社会での振る舞いに必要な基本的なものなので、サラサ君にも参考になるはずです。今の生徒会には、王子がお二人も居ますしね」

「はい」

「では、こちらの資料を使って授業を進めていきます。ハヤテ君、手伝ってください」

 先ほどの箱を開けると、年季の入った紙類が幾つも入っていた。

広げるよう言われたのは、地図と年表。しかし内容をよく見ると、イラストが多く入っていて、これも子供用の印象がある教材だった。

「王宮で使っていたものを入れ替える時、我が家で預かっていたようです。折角だから使いましょう。内容が古い部分は訂正していくので、適宜メモをお願いします」

 こうして、ヴォイドによる側近試験対策が週に何度か、放課後に行われることになった。

キリシュの教え方も十分上手かったが、やはりプロは違う。

オレは側近試験に光明を見出していた。

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