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09.学べ!課外授業で側近見習い②

私物を片付けながら、モヤモヤしたことについて考えた。

こう言うことは、放っておくと後々大きく面倒になって返ってくるのを、前世でも経験済みだ。

 屋敷の中で、カイの隣の部屋に側近を置こうと思うこと自体は悪くない。問題は、施錠なしの内扉があることを知っていて、敢えての選択というのが気になる。

 オレの身元はシズルも調べていたようだし、実際に危害を加える気はないが、部屋を管理するのがオレだ、という点ではどうだ。本当にリスクはないのだろうか。

 これは、価値観の問題という気もする。

屋敷の中だから安全である、とシンプルに考えて本当に問題はないのか。

 また、カイが慌てて王宮に向かった理由も気になる。

オレが今日戻ることは伝えてあった筈だが、忘れていたのか、敢えてなのかが気になる。

 恐らく、敢えてだろうな、と思った。

カイは、誰かと決めた予定について、お座なりにするタイプではない。メイドや料理長がスケジュール周りの話をしたことは大体覚えているし、出来る限り考慮して動くようなタイプだった。

 つまり、オレが帰ってくるこの日に、王宮で何か必要な事がある、ということだ。

 これ以上は聞かないと分からない。

カイが戻ってくるまで、オレは少ない荷物を部屋へ片付け、キリシュにもらった側近についての教本を読み返していた。


 夕方を過ぎて、馬の嗎が聞こえた。カイが戻って来たのだろう。

 カリナは約束通り急いで教えに来てくれて、オレは玄関でカイを迎えた。

「カイ様、お帰りなさいませ」

「ハヤテ。悪かったな、迎えてやれなくて」

 表情を窺うと、あまり明るいようには見えず、王宮でのことが気になって来る。

ただのクラスメイトだった今までとは違い、聞いても良い筈だと思いつつ、自室に戻るカイに付いていく。

「オレの部屋、本当に此処で良いんですか?」

「ああ。何か気に入らない所があるか?」

「いえ。ただ、内扉で繋がっていると聞いたので」

「その方が便利だろう?ハヤテが側近見習いになった訳だし」

「防犯の意味で、問題はないですか?」

「防犯?今まで特に気になるようなことはなかったが」

 オレが気にし過ぎなのかもしれない、とは思う。廊下に続く扉は、施錠も可能だった。

オレが出入りする時にきちんと施錠を忘れなければ、恐らく問題は起きないんだろう。

広い家に住む感覚がいまいち分からず、暫くは様子を見ようと思えた。

「カイ様も、お夕食を召し上がりますか?」

「ああ。ハヤテが来る日だし、王宮では食べずに戻ってきた」

「かしこまりました」

 なんとなくついて来たまま、メイドと一緒にカイの私室に入っていたが、実はこの部屋まで入るのは初めてだった。

 前世なら友達の家に遊びに行くと、個室があるなら真っ直ぐそこに通されるのが常だった。

 しかしこの屋敷では、ゲストルームや食堂、サンルームなど、幾つもの部屋があり、カイと話すのにわざわざ私室まで来る必要がなかった。

 オレがつい好奇心で部屋を窺っているのが分かったらしく、カイはソファへ座るよう促してきた。

「この部屋は執務室なんだが、何かあればいつでも入って来てくれ。奥が俺の寝室だ。寝過ごしてることはあまりないと思うが、急ぎならノックしてくれて構わない」

「ありがとうございます。因みにカイ様は、その……真隣にオレが居るのは気になりませんか?」

「どういう意味だ?」

「こう、いきなり誰か入ってくるかもしれない感じとか」

「皆ノックはするし、用事があるなら急ぎで入ってくることもあるだろう?」

 ――――なるほど。

カイは立場上、王宮での生活時点から、常にメイドや側近が近くに侍っていたのだろう。

自分の部屋に母親が勝手に入ってくるのが嫌だったオレの前世の感覚は、通用しないらしい。

「すみません、変なことを言いました。ノックして伺うようにします」


 食堂には、カイとオレ用の料理が、普段より豪勢に並んでいた。

「改めて、ハヤテさんの側近見習い就任を心よりお祝いいたします。どうぞ宜しくお願いいたします」

メイド長であるマーベルに深々と頭を下げられ、オレはしどろもどろだった。

「それで、王宮にはなんのご用事だったんですか」

 メイン料理を食べ終えたところで、やっと切り出した。会話の途中でカイが何度か躊躇っている様子が気になって、埒が開かないと思い、こちらから話題を振ったかたちだ。

 カイは一瞬手を止めて、気まずそうな顔をしたが、オレは促すように頷いて見せるだけにした。

「側近のことなんだが」

「はい」

「やはり、試験は必要ということだった」

「――――はい?」

 試験、と言ったか。

オレがあまりに呆けた顔をしたからか、カイも怪訝な顔をする。

「試験のこと、シズルの屋敷で聞かなかったのか?」

「ええと、側近の、という意味ですか?」

「ああ。王族の側近になる場合、王宮の試験で認められる必要がある。それまでは側近見習いとなる」

 ――――聞いてない。

オレがキリシュの講義で居眠りしていたかと言うと、それはない。

もしかしたら、カリキュラム上まだ話すタイミングじゃなかったというのも考えられる。試験のための教育だったと思うと、冒頭から試験について全く触れずに居たことの方が違和感があるが。

「――――本当に、聞いていないのか」

「はい、すみません」

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