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07.突然!側近見習い①

 ある日の昼休み。普段ならカイと食堂に向かうオレだが、今日はサラサと中庭にいた。

学園内には所謂購買部みたいなものもあり、そこで買ったサンドイッチとミルクが昼食である。

「すっかり良くなったみたいで、安心した」

 サラサは、自分で手作りしたような弁当を食べている。流石、乙女ゲームの主人公。

正直、彼女とのツーショットはあまり良くないとも思ったが、こちらから声を掛けないと機会もなかったのだから仕方ない。

「それで、前に言ってた話って?」

 昼休みは時間も限られる。早々に本題を切り出すと、サラサも分かっていたようで、うん、と頷いた。

「私ね、生徒会役員に内定したの」

「え!それは、おめでとう」

驚いた声を出してはみたが、内心、なんだその話か、と思っていた。

サラサは特待生だし、ルートの殆どで生徒会役員になる。

「おめでたいことだと思う?一年生からは、私のほかにカイ様と、ネリィ様が選出されるようなの」

 その二人も、生徒会役員としては違和感がない。

カイからは聞いていない話だったが、公表されるまで人に言わないのはカイらしいとも言えた。

「知った顔で良かったじゃないか」

「そんな。なんで私なんだろう……ハヤテの方が、カイ様ともネリィ様とも親しいのに」

「へ?」

「平民出身者を入れて、バランスを取りたいのかなって、思うの。それは分かるんだけど、それならハヤテの方が合うんじゃない?」

 ララブでは、生徒会役員に選出された主人公は、割とサクッと受け入れて「頑張ります!」とか言ってた気がする。

しかしサラサが戸惑っているこれは、オレが以前、シズルからの話を断った影響なんだろうか。

「オレは利己的な人間だから、生徒会なんてとても。それに自分で言うのはアレだけど、カイ様やネリィ様と親しいなら尚のこと、せっかく平民出身者なのに、コネっぽくなるだろ?」

「……そう、だね。仲が良いことだけが良いことじゃない、か」

「そうそう」

「ーーーーハヤテにも、やっぱり生徒会の誘いがあったんだね」

「……!」

「生徒会役員は、上級生からの指名制だもの。ハヤテの方が合ってる、なんて私が言っても、指名制だって言えば良いだけなのに、そんな言い訳みたいなこと言って」

 特待生を、ナメていた。

サラサは、攻略キャラでもないオレのことだって、ちゃんとよく見て考えている。

「いや……」

「あ、いいの!言えないよね、あったとしても。気にしないで。違和感があったことを確かめたかっただけだから。でも、ハヤテが断った理由を知りたい、とも思っちゃった。さっきのが本音?」

 言えたらでいいんだけど、と見据えられる。

誤魔化すのは出来そうだが、サラサからの信頼みたいなものが落ちるのは明白だった。

彼女も、生徒会役員の内定について誰にでも話してるわけじゃないんだろう。それを先に、敢えてオレに話してくれている。

「サラサは、何故生徒会役員に?」

 先ほどから聞いていると、オレの方がという迷いが滲んでいるようだけど、既に内定が出ているということは承諾したということだ。

「さっきハヤテは、自分を利己的って言ったけど、私もそうだよ。たまたま同級生より本が好きで、好きな本で詳しくなったことが試験で評価されて、それで特待生になっただけだもん。でも、それでも私に声が掛かった以上、平民出身者の声が必要なのかなって、思ったの。学内では平等を謳っているけど、私には気になることがいっぱいある。何が出来るか分からないけど、気になったことにアクションを起こして良いよってことなら、やってみたいなって」

恥じるように言うが、サラサに是非と言ったであろう生徒会役員の気持ちがわかる。

 普段の生活で、物事に気付けるかどうか、動けるかどうかは、人によって違う。

彼女は学内でこの数週間過ごしながら、同級生とは違う視点で周りを見ていたんだろうと思う。

不満ではなく、動いて良いならやってみたいことがある、と言うのだから。

 それを受けて、オレは以前、シズルから生徒会役員を勧められた時のことを奇妙に思った。

「これはオフレコ……内密にって所だけど、候補になってるって話はあった。でも今から思うと、オレが本当に向いてると思われて話が出たのか、疑問の方が大きい。平民出身者として初の役員だとか、成績や寮生活の当番が優遇されるとか、なんかこう、欲を試されてるような気がした」

 あの時は、まさかサラサを差し置いて、という気持ちと、何故オレに、という気持ちで焦り過ぎて、断ることに精一杯だった。しかし思い返すと、生徒会役員なら学内でこんなことが出来る、といったモチベーション部分への声掛けは無かった。

 オレから質問しなかったからとも言えるが、何か成したいこともなく、あの勧誘でイエスと言う人間が、果たして生徒会役員として必要なのかは疑問が残る。

「少し目立ってたから、試しに声を掛けてみた、ってだけな気がする。ほら、オレに野心があったら、サラサのことを変に妬んだかもしれないだろ。でもいざやってみろって言われると、学内のことなんて全然考えられてないし、自分の生活のことばっかりだったから」

 採用面接では、面接官側もモチベーション喚起をするものだ。

 前世でオレは、少しだけ転職活動をしたことがあった。

結局その時は決められなかったが、求人票や求人ページに出ていない部分を確認するのが、面接だったと思う。

 シズルは学生なわけで、企業の採用活動と重ねるのはどうかと思うが、何にせよ最終的にはカイ、ネリィ、サラサが選ばれたことを思うと、同じ選考基準でオレに声が掛かったのは違和感しかない。

 あの時、謂わば福利厚生の話に偏っていて、オレも断固拒否して終わったが、その先の話があったのかは気になる。

あるいはサラサが言うように、カイやネリィとの関係性を考慮された可能性もあるが、それだとネリィとはほぼ会話したこともない時期だったし、と疑問は晴れない。

 しかしそれはともかく、サラサが内定承諾したことは、王立学園にとって僥倖だろう。

「オレには、生徒会役員になって果たしたいことも、やってみたいこともなかった。断った理由はそれだけだから、サラサのことを応援させてほしい」

「そっか。うん、ありがとう。本当に私で良いのか分からないけど、出来ることはやってみる」

 気付くと予鈴まであと少しで、慌てて残りの昼食を済ませた。

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