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04.招待!第四王子とその事情④

 幸いすぐ見つかったトイレは、相変わらず俺の寮の部屋より広くて綺麗で、驚いた。

発明されていたなら、ウォシュレットや自動水洗装置も付いていただろう。

 ゲストルームへ戻る途中で、メイド達の声がした。

どうやら近くに彼女達の詰める部屋があるらしい。

「だからカイ様は、“ひと言遅い”なんて言われちゃうんですよ!」

「マシュウ達にも分かって貰えたなら、いいじゃない。カイ様がちゃんと、二人の仕事のことを理解されてるって」

「エリクさんなんて、こないだ愚痴言ってましたからね。いい加減分かってくれたかしら」

 先程の、馬車での話のようだ。

「カイ様は私達の仕事について褒めてくださるけど、その分なんか、こう、うーん。なんて言えばいいのか」

「ズレてる、で良いんじゃないですか。他の言い方分かりませんし」

「ロッテ、あなたまでそんな言い方!」

「だあって、カイ様が気にしてるの、公示のことより私たちのことばかりなんですもの。私たちは王室から決められてこちらに来たし、王宮に残った人もただの決まりなのに、あんなに気にされて」

「それは、側近の方々の謎があるから仕方ないですよ。潔く去ってしまった以上、ある意味カイ様の王位継承を心から信じていた反動、って感じがしますし」

「シズル様にはしっかり側近が付いてますし、お屋敷に移動してきた使用人の人数も倍ですもんね。気になっちゃいますよねえ」

「カイ様、私たちの仕事に口を出されることもないですけど、本当にこれでいいのか不安になる時ありません?前に勤めてたお屋敷では、奥様も旦那様も色々仰る方だったから……王宮からいらしたのに不自由がないか気になってしまって」

「マナはいつもそればっか。大らかで気にされないだけだと思うわ。御学友もざっくばらんな方みたいだし」

「ハヤテ様って、例の初日の方ですよね?突然カイ様に握手を求めて、保健室まで運ばせたっていう。側近さんがいたら、お連れしたと思います?」

「どうでしょうね。悪い方には見えませんでしたよ。男性同士のご友人なら、あのようになるんじゃないですか」

 そこまで話が聞こえた時、後ろから咳払いが聞こえた。すぐ近くの気配に気付かないほど立ち聞きに夢中になっていたことに、ヒヤリとする。

「皆さん、ご来客中ですよ」

 振り返ると、オレの体を追い越す形で開いたままのドアを強くノックしながら、メイド長のマーベルが立っていた。

オレが部屋の前で立ち尽くしているのを見て、慌ててやって来たようだ。

 オレの存在に気付いて、メイド達は蒼い顔になり、姿勢を正した。

「ハハハ、ハヤテ様……!とんでもない所をお見せしました。申し訳ございません。何かご用でしょうか」

オレは、何気なく盗み聞きしてしまったことで居た堪れない気持ちになる。

「トイレに寄っただけで……すみません。えーっと、その、話してたことは他言しないので、安心してください」

 これが前世だったら、上司の噂話を上司の来客に直接聞かれた、みたいな感じだろうか。上司というか、社長くらいのものかも知れない。

 カタカタ震えてる彼女達が可哀想に思えてしまい、オレは言葉を続けてしまった。

「これは余計なお世話とは思いますが……カイ様に直接言ったら、喜ぶと思います」

「まあ」

「喜ぶって?」

弾かれたように、先ほど喜んで部屋を準備したと言っていたメイドが反応する。「こら、カリナ!」と、先輩っぽいメイドが言うが、彼女はそのまま言い募った。

「だって、心配なんですもの。カイ様は、ハヤテ様との授業が楽しいと仰ってましたけど、エリクさんもマシュウさんもいつも不機嫌で、学校のことを話されないし」

彼女の表情からも、カイの本心が分からず、無理をしていないかと純粋に心配しているのが伝わってくる。

「私たち、主人であるカイ様が健やかに過ごせるようにというのが役目なのに。カイ様は不満も見せないし、私たちに指示されることもなくて」

「学校生活でも無理をされていないか、気になるんです」

 メイド達がカイに気を遣っているのはカイにも伝わっているようなのに、カイ自身は恐らくその緊張感を、誤って捉えているのかもしれない。

王位継承順が下がった自分に仕えることへの不安、みたいに。

 かと言ってオレが偉そうに代弁することでもないので、言葉を選ぶ。

「素直に、学校での様子が気になるとか、ここで働くのは仕事として理由があって納得してるとか、そういうのは伝えたらいいと思いますよ。カイ様は多分、あなた達がメイドだからそんな話をするべきじゃない、なんて言わないでしょう?」

 オレが何気なく会話するのを、カイはいつも好意的に受け止めてくれていた。

恐らくそれがメイド相手であっても、率直な態度を受け入れるだけの懐の広さはあるだろう。

「恐れながら、メイドにはメイドの領分がございます」

「ですよねー。まあ、オレは何も言わないので、お任せします」

マーベルが釘を刺すのを、受け流した。オレには、王子とその使用人のパワーバランスがわからない。

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