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21.足掻け!落とせない第三試験③

「ハヤテ様、失礼します」

 鬱々と考え始めた所で、ノックがあった。ハイ、という返事に合わせて、エンゲンが再び顔を出す。

「すみません、何か忘れ物でもしましたかね?」

「いいえ。今夜のお食事について、申し送りがございます」

「はぁ……」

 もう夕飯の話かよ、と思いつつも促す。

「夕食の際、王子様方が同席することになりました」

「王子様……方?」

 それは、オレには複数形に聞こえたので聞き返してしまう。

「左様でございます。セラ様、シズル様、ノリス様、カイ様が同席されます」

 なんと。

 第五王子のマリオール以外が揃い踏みということだ。

「そう、ですか……。あの、どのような意図によるものか、エンゲンさんはご存知ですか?」

「恐れ入りますが、私には分かりかねます。ただ……四王子揃われるのは、大変珍しいことでございます」

「ですよね。なんで、側近試験の最中に……」

 エンゲンが首を振るので、オレはその場では

「いえ、すみません。驚きましたが光栄です」

とだけ返すと、その背を見送って扉を閉めた。

 夕食時か、と無意識に腹をさする。

 今日は朝も昼も豪勢で、試験で気疲れはあるにせよ活動量自体が大したこともないとなると、まあ、まだ全然お腹が減らない。

 食事量がどの程度見られるかは分からないが、出された物に口を付けない訳には行かない。

 外は夕暮れ時だが、伝えられた時刻まではまだ少しだけ余裕がある。

 部屋の外に待機しているメイドに声を掛けてから、オレは外に出ることにした。窓から見えた庭のような場所まで往復して、少しでもお腹を空かせたい。


 四王子との夕食は、昼食と違って試験ではない。しかし、側近試験が続く中で無礼講とはならないだろう。

 元々王子同士の付き合いは薄いと聞いていたし、カイからもこの話は出ていなかった。つまり本当に、急に決まったことではありそうだ。

「偶然はあり得ないだろうし、誰の計画だ?」

 誰かが集合を掛けなければ、わざわざ今日この日に揃いはしない。国王からなのか、いずれかの王子の意図によるものか。

 うーん、と一人唸りながら歩いていた所で、中庭に人影が見えた。

 ――――セラと、ノリスだ。

 オレはどちらの王子にも、面識はない。ノリスはまあ、やっぱり見た目も服装以外は大して変わらず偽ビートだが、一応は“会ったことがない”相手だ。

 セラは、記憶が戻ってからこの目で見るのは初めてだった。ゲームでの記憶通りだが、その表情は主人公相手とは違う厳しいものに見えた。

 そっと立ち去ろうかとも思うが、気になる。試験にどう影響するかも読めないが、他の王子とエンカウントしたのであれば、側近なら挨拶くらいするべきだろう。

 オレは意を決して、堂々と二人に近付くことにした。

「こんにちは。お話し中失礼します。カイ様、ノリス様」

「君は……?」

「カイ様の側近候補、ハヤテと申します。お初にお目に掛かります。試験中なので迷いましたが、ご挨拶くらいはと思って」

「ああ、君がハヤテか。サラサから、話は聞いているよ」

「……サラサから、ですか……」

 思わず、顔が引き攣る。確かに以前、セラとの文通の中でオレのことも書いたと言っていた気がするが、何を言われているのだろうか。サラサに限って、悪口ではないだろうけど。

 視線を動かすと、ノリスと目が合う。偽ビートとしては数日前に会ったばかりだが、どう切り出すべきか。

「試験どうだった?ハヤテ」

 ノリスは、しれっと話し掛けて来る。オレが偽ビートに気付いていたことも、織り込み済みなのだろう。

「……頑張ってます」

「意外とちゃんとお勉強してたようだけど、セラん所の元側近仕込みなんだろう?」

「ノリス!王宮内でくらい、その態度をなんとかしろ」

「良いだろ、堅いこと言うなって。第一王子である“お兄様”の呼び掛けだから、顔を立てて此処まで来てやったんだぜ?」

 オレは思わず、セラを見た。

「……ああ。夕食のことは、エンゲンから連絡が来ているだろう?驚かせたと思うけど、なかなかない機会だから」

「はい、伺ってます。ただ正直、試験結果が出る前に王子殿下方とお食事出来ると思っていなかったので、驚きました」

 偽ビート改め、ノリスは流石に擦り切れたような服ではない。しかし、シャツの裾は外に出ていて胸元のボタンも開いている。気怠そうに崩した姿勢も相俟って、態度が悪い。

 だからなのか、セラの表情もピリピリしていた。

「今更、食卓囲んでどうするんだかな。たかが側近一人決めるのに、大仰なことだ」

「ノリス。何故お前はそうやって、自分の立場に背を向けるんだ?カイはお前の弟王子だろ」

「さあな?おれ達が兄弟らしい兄弟だったことなんて、ないだろ」

 思わず挨拶に出て来てみたが、完全に失敗だ。

 ロッテ達から聞いていた通り、母親の因縁が理由なのかまでは不明にしても、この二人の雰囲気はサイアクだ。

 オレは悪くない筈なのに、この空気の中で刻まれる二人からオレへの印象値は、連動してダダ下がりだろう。

「あ、あの!最後の試験は、国王陛下以外にお二人や他の王子様方も参加されるんですか?」

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